今日は、このブログで2回目の紹介となるブランドを。
seventyfive (セブンティーファイブ)。
1年前の秋冬から取り扱いをしているので、その時に初めてこのブログで紹介を致しました。
今年の春夏シーズンも取り扱いをしていたのですが、僕のいろんな事情があり、このブログで紹介することができなかったんです。
でも、今回は紹介させて。
このブランドとの出会いは、パリで。
まだまだ日本では取り扱いが全然ないみたいだけど、僕はとても良いものをつくってるブランドだと思ってる。
だから、日本のいろんなバイヤーさんにも見てもらえたら良いのになって思ってるくらい。
今の日本の主流のファッション感覚とは違うニュアンスの洋服だけど、seventyfiveにしかないものっていうのが洋服の随所に潜んでる。
僕自身も知り合うまでは全く知らないブランドだったけど、実物見た時にその洋服づくりに身震いしたことは、とてもよく覚えてる。
ちなみに、seventyfiveという名前は、ブランド名はなんでも良かったらしいから、ロンドンのアトリエがあるところが"75番地"だと言ってた。
だから、seventyfiveという名前だそうだ。
このブランドの特徴は、中国にルーツがあるデザイナーのJannyさん(女性)が、自分でデザインして、自分で縫ってるということ。
そういうの好きそうでしょ。ワタシ。
まあ、でも、なんでもかんでも自分で縫ってるとか、手縫いだとか、それだったら何でも良いということでは決してなくて、それがどれほどのレベルなのかということが絶対的に重要なの。
そういう自ら縫う"アトリエ縫製"が、seventyfiveは、超絶丁寧で綺麗なの。
エゲツないレベルで。
僕の自論としては、デザインした人(企画した人)が、自分で最後までつくりあげて、それが結果的にとても整った見た目をしていたら、その完成形に至るまでの過程に、すごく時間や手、精神を注いでる。絶対に。
逆説的に言うと、すごく時間や手、精神を注いでいるから、整った見た目をしているとも言える。
このようなことは、長らく取り扱いをしてきたAraki YuuやMOTHER HAND artisanにとてもよく教えられた。
そして、今日紹介するseventyfive。
このブランドのデザイナーは、洋服をつくるときにとても神経を使ってる。
非常に細かいのだ。
洋服を構成する小さな一つ一つのことにまで神経を張り巡らせ、自分で形にするからこそ、その集合体がオーラを放つ程にまでなってる洋服だと思う。
そういうseventyfiveの洋服を紹介しますね。
seventyfive
Student's Jacket
fabric _ Leichtfried Loden 540g
material _ Merino Wool 80%,Alpaca 20%
color _ Marsh
size _ 2,3
まず、これ。
形は、見ての通り、丈が短いブルゾンタイプのアウターです。
生地は、オーストリアのライヒトフリードという"ローデンクロス"の名門のところの生地。
ローデンクロスというのは、昔ながらの由緒正しき生地で、"40歳、50歳になったらローデンクロスでコートを仕立てる"みたいに言われるイメージがある程、格式高い生地だと僕は認識してる。
同じように秋冬向けの生地で、広く認知されてる"ツイード"があるけど、僕はツイードよりもローデンクロスの方が断然格が高いものだと思ってる。
その中でも、オーストリアのLeichtfried(ライヒトフリード)は、ローデンクロス専業の老舗。
更に、そのライヒトフリードでつくられるローデンクロスの中でも、ウール100%ではなく、アルパカ繊維が配合されたローデンクロスは、現在でも昔ながらの製法を継承し、ライヒトフリードの中でも、別格のものと言われるそうだ。
重厚な生地でありながら、そのキメの細かい毛並みの良さ、光沢、しなやかさ。
着始める時には、当面の間は"調教"が必要だけど、その高級感、生地の上質さは誰もが感じてもらえると思いますよ。
そして、目付けという生地の重さを示す数値が"540g"となるので、日本の真冬のアウターとして存分に活躍することが確約されてる。
大体、目付けが500gを超えると冬のコートとして使われるものと思ってイメージして。
少しだけ開く衿、非常に珍しく、細い幅の胸の箱ポケット。
フロントボタンは7つと多め。
このボタンは水牛かな??それを自らペイントしてる。
seventyfiveと言えば、、、これですよ。
衿先を見てください。
圧倒的に細かい縫製ピッチ。
まあ、"seventyfiveと言えば"と言っても、全然まだ認知されてないと思うけど。笑
ヘビーな生地を使ったアウターで、この運針の細かさ。
点のように見える縫い糸。
衿裏の月腰を跨いだ2本のステッチもすごい。
ちなみに、ブランドタグは、4行ある中で左半分と右半分で、真ん中で分けて、赤い点と線を数えると、左半分が7、右半分が5。
seventyfiveになるマークだそうです。
先述の通り、胸の箱ポケットの幅、サイドポケットのフラップの形状を見ると、凝ってるのがすぐ分かる。
バックはクラシックな大きなセンタープリーツ。
プリーツ終わりには、腰ベルトパーツが縫い付けられる。
サイドベンツ。
本切羽。
額縁仕立ても綺麗。
裏。
seventyfiveは、裏側もすごいの。
クオリティの高さは裏の仕様、出来を見れば一瞬だ。
お台場仕立てに、ラウンド箇所の多い生地の切り替え。
裏地は、イタリアのCarlo Bassettiというところの綿100のBrushed Cotton。
この裏地は、コレクションでは他の洋服の表地に使われてたもの。
写真を見ただけでもすごそうでしょ。
seventyfiveは、まだまだ生産数が少ないから、ブランドとやり取りをしながら、コレクションで存在する洋服の形に対して、話し合って、「この生地でつくってください」って依頼してる。
洋服の形を自ら設計したJannyさんが、僕の要望を聞きながら、どういうふうにつくろうかって考えながら話をして、オーダーを進めていってるのですが、そうであるからこそ、洋服の形と生地、デザインとがちゃんとマッチングした形で出来上がる。
着た時に目に入る表だけではなく、裏側の仕様、処理、着心地にもとにかく細かく考えてつくってくれてる。
だから、派手さはないけど、とても良いものができてるし、そうやって一着ずつつくってくれた洋服は、最終結果として、すごくカッコいい洋服ができてるって僕は思っています。
身長167cm、体重52kg、33歳10ヶ月、禁煙1ヶ月の僕で、小さい方のサイズ2を着てる。
僕の中では、サイズ2がとても良いサイズバランスなんですが、どちらかというとシャープな設計のジャケットですね。
まあ、例えるならBIEK VERSTAPPENや、John Alexander Skelton、Araki Yuuなどのブランドとサイズの印象は近いと思います。
サイズ2は、身長170cmくらいまでの方でしょうか。
サイズ3は、180cmいかないくらいの方でしょうかね。
サイズ2がS、サイズ3がMとLの中間くらいみたいな感覚ですかね。
まあ、実際に着てみてもらえたら分かると思います。
昨年の秋冬には、同じライヒトフリードのローデンクロスで、コートをつくってもらったんですが、それが真冬にもかなり心強かった。
このブルゾンも同じ生地なので、冬にはかなり適してる生地厚なのですが、それに加えて、良質原料の自然で艶やかな質感も感じられる。
近年では、あまりないジャンルのショートアウターですが、僕はかなりかっこいいものをつくってもらえたと思ってます。
非常に堅牢で、長年連れ添えそうなのが、ムンムンに感じられるStudent's Jacketです。
seventyfive
Tapered Trousers with Beltloop
fabric _ Leichtfried Loden 540g
material _ Merino Wool 80%,Alpaca 20%
color _ Marsh
size _ 1,2,3
次は、これ。
先ほどのジャケットと同じ生地を使用した特徴ディテール満載のパンツ。
このパンツも、バチバチのカッコよさを誇ってると思う。
昨年のシーズン、初めてseventyfiveを取り扱いした際に、このパンツと同じ形、同じ生地の色違いで、サイズ1〜3まで展開をしたのですが、名のないブランドのパンツなのにも関わらず、すぐに完売。
非常に特徴的ですが、相応の魅力を持ったパンツです。
ウエストにはディテールが盛りだくさん。笑
大きなウエストを左右どちらも、内側に折りたたんで、リネンテープで結んで穿くパンツ。
フロントポケットは、左右にそれぞれ2つずつ付くので、前側だけで4つのポケット。
昨年、当店で取り扱いをしたモデルから、ブランドと話をして、いくつか改良を加えてもらったのが今回のもの。
昨年のものは、フロント開きがなかったのですが、ボタン開閉に。
これにより、すぐにポコチンを出すことが可能に。
また、ボタンを縫い付けた持ち出し布は、ライヒトフリードのローデンクロスが厚みがあるため、厚みを軽減するために高密度コットンに切り替え。
ウエスト見返しパーツも、同様にフルでコットンに切り替えてる。
また、ライヒトフリードは先述の通り、540gの目付けがあるので、重みがある生地ということもあり、着用時にフロントがズリ下がってしまうという問題点も発生しちゃったの。
それを改善するため、seventyfiveが導き出したのが裏から別生地とボタンで留めつけるという方法。
このパンツは、フロントを折りたたむ設計じゃないと、この着用時のフォルムが出ないため、両立を考えた仕様に。
あとは、オーダーの時に、最後の最後で、「あっ、ベルトループも付けてください。」ってお願いしたの。
だから、with Beltloopという商品名で、ベルトループ付き。
これ。
特有の切り替えで、ハンガー状態で、そのフォルムの魅力を想像させる。
生地の良さを感じるし、厚みのある生地なのに、見事な縫製テクニックでの生地の切り替えをしてるのを見てとれる。
バック。
ハイバック仕様のウエストで、切り替え利用のミニマルポケット。
裏。
先ほどのジャケット同様に、イタリアCarlo Bassettiのコットンフランネルの裏地付き。
このパンツの表地は、もともとコート生地ですからね。
しかも、柔らかく膨らみのあるコットンの総裏地。
これにより、度重なる着用による膝抜けも起こらないし、肌あたりも優しいし、めちゃくちゃあったか〜〜〜い。
真冬に"ノーパッチ(ノータイツ)"を目指したパンツです。笑
着用。
特徴ある丸みのあるフォルムに、グググッと裾が細くなる形状のもの。
そして、レングスは気持ち短め設定。
重厚なローデンクロスがこのパンツのフォルムを際立たせてくれてる。
サイズ1を着用してる。
身長167cm、体重52kgで、ウエストが細くて60cm代という、おっさんらしからぬ体型なのですが、seventyfiveのパンツのサイズ1は、そういうウエスト難民の方にもめちゃくちゃ対応してくれる。
僕のような体型でも、ノーベルトで穿けるフィッティング。
まあ、一応付けてもらったベルトループを使えば、どれだけ細い方でも無敵ですね。サイズ1は。
大きくとられたウエストを折りたたんで固定し、それを見越した足回りの分量設計。
このアウトラインは、とても良くできてると思いますよ。
seventyfive
Tapered Trousers with Beltloop
fabric _ Silk Wool Loden
material _ Silk 65%,Wool 35%
color _ Raven
size _ 1,2,3
次は、これ。
先ほどと同じ形のパンツです。
だが、こちらは、生地が、、、、
"シルクとウールのローデンクロス"。
そんな生地と出会ったことない。
シルクは"生糸"でたくさんの生糸を束にした単糸を双糸として使い、ウールも双糸でかなりの高密度設計の生地なのですが、seventyfiveが「こんな生地もあるよ」って見せてくれたもの。
ブランドのコレクションでは、この生地を使って、ウィメンズのロングドレスをつくっていたように記憶してる。
イギリスで織り上げられた"シルクとウールのローデンクロス"。
僕は、この生地を心から使ってみたいと思った。
ブランドのコレクションでは、ロングドレスで非常に華やかだった。
では、それをパンツにすればかなりのパワーを持つものに仕上がるのではないかと思った。
だから、この生地を使い、僕がseventyfiveの魅力をとても感じられると考えるパンツの形に採用してもらったの。
見てこれ。
光が当たる場所で見ると、ビッカビカに光るパンツ。
特にウエスト周辺には、ディテールが満載だから、そのコントラストが際立つの。
こちらもコットンの総裏地の仕様です。
先ほどのローデンクロスのパンツは、真冬対応の温かみがあるコットンフランネルの裏地でしたが、こちらは柔らかい平織りのシャツ地が裏地に備わります。
生地の密度はあるのにも関わらず、途轍もなく軽量なパンツなのですが、総裏地にすることで、今の季節から4月まで穿けて、その上、膝抜けや形崩れが起こらないようにしたいと思ってそういう仕様にしてもらっています。
こちらのパンツにも、着用時のフィッティングを高めるためのパーツを縫い付けてくれてる。
ちなみに、ウエスト見返しやタブに使われている生地も、コレクションで使われていた日本製のシャツ生地。
こちらもサイズ1。
シルクウールローデンは、反発性が強い生地ということもあり、パンツのアウトラインが非常に鮮明に出てくれる。
フィットしたウエストから、ワタリで丸く広がり、そこからキュッと締まるフォルムが一層際立つと思いますね。この生地。
フロントに大きなインタックができる分、お尻はコンパクトな設計に感じますね。
フロントに余白が出る分、運動量には問題ないと思うし、コンパクトなお尻から後ろのラインもシャープに出てくれる。
360度どこを見ても結構優秀な輪郭を描くパンツだと思いますよ。
その上、Jannyさんの縫製は、めちゃくちゃ手を入れてすんごい丈夫ですからね。
安心して使えると思う。
seventyfive
Student's Jacket
fabric _ 1960s Eastern China Vintage Handwoven Cloth
material _ Cotton 100%
color _ Vintage
size _ 2,3
最後は、これ。
一番最初に紹介をしたジャケットの別生地Ver.
この生地もすごい。
僕は植物の繊維を編んだバッグのような、あたかもカゴ編みを再現したプリントかのように見えた生地。
縦方向の柄と、横方向の柄が交互に浮き沈みしているように見え、まるでプリント。
これは、1960年代に中国の東部で手紡ぎ、手織りをされたものだそうだ。
糸を手で紡ぎ、天然染色で染められ、その後に当時の女性たちが家庭用織機を使って生地を織ったもの。
seventyfiveのJannyさんは、中国にルーツがあるデザイナーみたいだから、このように、今から60年ほど前の中国の生地を色々持ってるみたいです。
家庭用の手織り機で当時つくられた、それぞれの生地は、生地幅が不均一で、狭いもので45cmで、広いものでも60cm程度だそうです。
現代の生地は、一般的には140cmの生地の横幅がありますね。
そのような中国の古い生地は、今では見られない特徴を持ってるとJannyさんは言ってました。
僕も色々Jannyさんが持ってるストックを見せてもらったんですけどね、その中でも、今まで自分自身が全く見たことのない、この生地に目を奪われたの。
こんなのが昔、存在したなんて。。。って。
同じ生地が全然残っていないし、生地幅もかなり狭い。
だから、このように一着の中で、生地の横幅が足りず、ブランドで細かく縫って繋ぎ合わせてる。
生地が生地だからサイズ2と3のそれぞれ一点ずつの生産しかないのですが、非常に珍しい生地だと思いますね。
それに加えて、seventyfive縫製だから、なかなかのシロモノが出来上がってる。
裏。
こちらも総裏地の仕様で、裏地は、ローデンクロスのシリーズと同じイタリアのフランネル。
手織りコットンなので、ヘビーアウターという感じではないのですが、もう今後見ることできないだろうなと思って、こちらも今の季節から3月くらいまで着ることができるのをイメージしてオーダー。
袖も同様です。
手紡ぎ・手織り生地と言っても、最初はそうだと信じられなかったくらい、ハリが強い生地。
生地サンプルの小さな欠片をもらったので、糸を抜き取って、解いてみたら一気に糸が膨らんだんですよ。
だから、手紡ぎの中でも結構、紡績の撚糸が強いのかも。
つまり、生地そのものもかなりの強靭さを持つものだと思う。
こちらもサイズ2。
少し離れて見ると実際には、古い生地ということもあり、一着の中で僅かに色ムラがあるように感じますね。
非常に希少性の高い生地ではありますが、こういうのをグッチャグチャにテキトーに着るのがベストですね。コットンだから、何も気にしなくて良いし。
生地も継ぎ足してるシームがあるから、着古した時の方が全体のムードが調和するんじゃないかな。
なかなか他の生地では体感したことのない変化を見られそう。
あと、そうそう。
seventyfiveでは、こういうバッグも取り扱ってるんですが、これがヤバいの。
中国南東部の少数民族が伝統的につくる生地を採用した2層式のバッグ。
強く光り、触った感じは硬く、何とも表現しがたいテクスチャー。
この生地は、手織りのコットンをまず藍染め。
次に、"牛血"・"茜"・"樹皮"を混ぜた染色液に浸す。
その次に、"卵白"でコーティングする。
最後に、布を何度も何度も叩いて、光沢のある丈夫な紙のような生地が出来上がるそうだ。
こういうぶっ飛んだこともやってるブランド。
結構かわいいですよ。このバッグも。
seventyfiveは、久しぶりに紹介しましたが、洋服をご覧頂けると、このブランドの洋服づくりをふんだんに感じてもらえると思います。
凄みがありますからね。
お好きな方は見てみてください。