こんにちは。
CASANOVA&COの野口です。
本日も今週末からのWONDER ROOMに関して。
昨日のブログの通り、WONDER ROOMは”天竺・裏毛”のブランド。
全ての生地が圍さんのコントロールによってつくられるオリジナル。
この生地たちというのが、もうほんとにめちゃくちゃ精鋭揃い。
もちろんそのようなクオリティに至るまでには、並のつくり込みではないわけです。
本日と明日の2日間で、それぞれに名前をつけられたWONDER ROOMが誇る生地たちをご紹介させてください。
本日は3生地。
・WHALE
・FRIEND
・WAFFLE
この3つです。
25SSもご覧いただいていた方はお分かりかもしれませんが、これらの3生地は25SSからの継続。
他にSHADOWという生地が25SSでは存在しており、こちらも25AWで継続されるのですが、今回のイベントではご紹介できないので、本日は上記の3生地についてとさせていただきます。(SHADOWファンの皆様は26SSを期待してて。)
まずは、WHALEから。
【WHALE】
100 年以上歴史を持つ工場で、一子相伝で受け継がれた機械と技術でのみ表現できる生地。
機械は、約 80 年前に導入した 45 号機は、他の工場が使う量産機とは全く異なる。
この工場と職人と機械でのみ表現できる、通常ではやらない、オーバーゲージ×密度により完成した重量裏毛。
少しでも機械の機嫌を損ねると編めない、職人技が試される生地。
しっかりした雰囲気ともっちりした感触が特徴。
それは裏側に宿る端正な美しさにも表れており、1 時間に 30cm しか編むことができない不器用な生地は、皮膚を通して伝わる温もりをぜひ体感していただきたい。
※ブランド公式ステイトメントから引用
25SSでも皆さんにご注目いただいていたWHALE。
僕も去年の12月から今年の4月くらいまで週5くらいのペースで着まくっていましたが、とにかく最高。
見え方も、着心地も、洗濯に対しての堅牢性も完璧。
裏毛と呼ばれるスウェット生地でここまで心動かされたのは初めてです。
では、一般的な裏毛との違いは何がもたらしているのか?
それは、”45号機”と呼ばれる吊り編み機と、それを操る職人さんの技術や根気。
この45号機は、”世界に一台しかない貴重な機械”というわけではなく、確証はないけど世界のどこかにはまだ存在しているのではないかと圍さんは言う。
ただし、紛れもなく、”この45号機”にしかWHALEはつくれない。
なぜならこの45号機は、限界を超えて超高密度に編むことができるように調整に調整を重ね、度目の詰め具合や針を落とすスピードなどを変更することができなくなってしまっているある種の極限状態だから。
逆に言えば、「もっとこういう風合いにしたい!」と言ったところで、この45号機は融通が効かない。
もう誰も元に戻すことはできないわけです。
そのように究極的に追求されたゲージやインチ、針を落とすスピードだからこそ、WHALEのあのタッチが生み出される。
WHALEの生地表面。
糸がギチギチに詰まっているのが肉眼でも見てとれる。
これは、この45号機でなければできないし、その45号機はこの職人さんでないと操ることができない。
それだけでなく、このようなものを生み出すためには、それ相応の代償もある。
この職人さんはとてもとても几帳面な方で、我々素人の目では見えないような針を落とす位置のズレや、生地の緩みなどを見逃さないのだそう。
もちろんそのために45号機に付きっきりで、編み上がる過程をじっと見つめながら針を落としていくそうですが、もし仮にそのような”エラー”が発生した場合には、途中まで編み上がったものをワタの状態に戻し、糸づくりからやり直す。
自らの目で見抜き、振り出しに戻すのです。
だからこそ代償として”納期”という概念が通用しない。
これはブランドを運営する立場としては半端なく大変なことで、「いつまでにはつくらなきゃダメ」みたいな締切ありきで仕事を進めることができない。
だから共にものづくりをすることを望むのならば、この職人さんが、自分の納得するクオリティで生地が出来上がるのを待つしかない。
さらにこの45号機、いつ動かなくなるかわからない状態なのだそう。
というのも、45号機は古い機械であり、今もなお当時の古い針のストックを大切に使い続けているのですが、その古い針のストックがもう残りわずかだそう。
針を現代のものに変えてしまえば、今の45号機が生み出せる生地ではなくなってしまう。
ただ、新たな吊り編み機を導入するつもりもないそうで、この45号機が動かなくなった時には、それつまり生地をつくる職人としての最期であるという一蓮托生スタイル。
そんなスタイル聞いたことないし、普通なら成立しないはずだけど、WONDER ROOMはその不確実要素すらも楽しんでいる。
だからこのWHALEは、いつまでつくれるのかは誰にも分からない。
その希少価値を高らかに謳うつもりは毛頭無いが、それだけのものを日頃から身につけることできるというのは、代え難い喜びと面白みがある。
そのような尖り切った先にある面白さや、裏毛だからこその肌に触れた時の優しさ。
これが圍さんの生地であり、WONDER ROOMの真骨頂だと思います。
WHALEのウラ。
裏毛がこんなに行儀良く綺麗に整列しているのは未だかつて見たことがない。
職人さんの几帳面さをよく物語っている部分だと思う。
とにかくやり切っている生地だということが見るからにわかる箇所です。
さらにこのWHALE、生地になってしまえば目で違いを感じることができない部分に関しても、信じられないような工程を踏んでいる。
それは、ワタの状態で行われる。
コットンのワタはアメリカやインドなどそれぞれの産地からフィート単位のコンテナで輸送されてきます。
もちろんたくさんのコットンボールを送るために、ぎゅうぎゅうに鮨詰め状態で。
そうするとワタが潰れてしまうので、一般的な紡績屋さんでは糸に仕上げていく前に、大きな箱のようなものにコットンボールを入れて、専用の送風機で風を送り下から上に吹き上げ、ふんわりとさせながら不純物と分別する工程を挟むそう。
僕もこのような工程があることを始めて知りました。
が、WHALEはその遥か上をいっていました。笑
職人さん曰く、コットンボールの自分達の力でワタがふんわりと戻るのを待つのが一番なのだと。
そのために、体育館のような広い場所にコットンボールを敷き詰め、放置プレイ。
その期間、なんと約2週間から、1ヶ月を超えることもあるそう。
信じられないほどプリミティブな工程ですが、理論上はなんとなく理解できる。
ただ、それを実行できるのは、”納期”という概念が存在しないからだとは思います。笑
放置する期間が2週間から1ヶ月を超えるほどにばらつきがあるのも、天候によって湿度が高ければ綿の開きが遅くなるからだそうで、どのタイミングでOKが出るかはその職人さんの手の感覚のみぞ知る世界。
とんでもなく技術と精神力を持った職人さんが、ここまで時間を惜しみなく使ってつくっている生地が他にあるのであれば、ぜひ教えて欲しいレベル。
生産効率や商業的な側面から考えれば、そのような時間のかけ方を受け入れる難しさがあるのはもちろんですが、WONDER ROOMがそれを世の中にきちんとリリースしているのだから、僕はこのスタイルを尊敬するし、誰よりも愛を持って伝えたいと思っている。
WHALEは、”吊り編み”というフレーズが先行しすぎたあまりに形骸化しかけていた価値を、”吊り編み”という機械やプロセスに真っ向勝負で向き合い形にした、吊り裏毛のトップエンドだと感じています。
<WHALE使用の店頭展開アイテム>
・flight jacket
・crewneck sweat shirt
【FRIEND】
世界的なメゾンを納得させた着心地を実現する生地を創業 70 年の工場で開発。
機械は海外から輸入した機械をベースに、吊り編みとジャガード編みの良さを組み合わせ、高密度で編むことができる機械を独自開発。
本来裏毛ではできないジャガード編みに由来する技術を着心地へアプローチ。唯一無二の表現である。
365 日、72 時間、身につけられる様な極上の着心地と、精神的な豊かさ、そして、洗濯耐性を持ち合わせる生地は、表、中、裏の糸質と撚糸をそれぞれ変えることから拘ることにより、友達との日常を尊む感覚を想像させる温かさを感じさせる。
※ブランド公式ステイトメントから引用
お次はFRIEND。
こちらも裏毛。つまりスウェット生地。
ただしWHALEとは根本的に違い、吊り編みではない。
FRIENDは、”ジャガード裏毛”。
これは圍さんの発明だと思います。
FRIENDのオモテと、
ウラ。
裏毛という言葉の通り、生地の裏側には毛足があります。
この毛足を、”ジャガード編み機”で”逆説的に”設計したのが、このFRIEND。
何言ってんだかサッパリでしょ?笑
僕も最初聞いた時は?でした。
ただ、このアプローチは革命的。
そもそもジャガード編み機というのは、柄出しを行うために糸の動かし方を事前に設計し、狙った通りの柄を出すことに特化した編み機
ブランドロゴや、ブランドのシグネチャー柄の入ったニットは、このジャガードで編まれていることがほとんど。
この”柄を出すための糸の飛ばし方”に着目した圍さん。
というのも、表面に狙った柄を出すためには、裏面でそれに呼応するように糸が大きく飛んだり小さく飛んだり不規則に動く必要がある。
であれば、表の柄を設計することで必然的に決まってしまっていた裏の糸の飛び方を、”裏の糸をどう飛ばすか”にフォーカスして逆算して設計すればいいじゃーん!
となったのだそう。
理論はわかる。
けど、そうはならんやろ。と、正直僕は思った。笑
でもそれを形にしてしまうのが、職人さんやデザイナーさんの凄いところ。
裏側が肌に触れた時に最も気持ちいいように、タオルのようなパイルをイメージして裏の糸飛びを設計。
糸が飛ぶ長さや糸の強度などもエゲツないほどのテストを行い、FRIENDに着地したのだそうです。
このFRIEND、とにかくホントに着ていて楽ちん。
WHALEのAtozukeが着れなくなった4月くらいからは、このFRIENDのショートパンツをめちゃくちゃ履いてる。
ジャガード裏毛特有の肌へのタッチも抜群だし、生地に伸縮性もあるから、家でリラックスして猫と遊ぶ時も、お店に立つ時も、出張などの移動が長い時も、とにかくこればっかり。
デビューシーズンの時も、「これは裏名作だ!」と思ってデビューシーズンにも関わらずそれなりの数量をオーダーしたのですが、販売開始が1月だったいうのに皆様にショーツを絶賛していただけました。
これによって僕の中で「いいショーツは1月から売らなきゃダメ」という世間的には明らかに間違えているセオリーが出来上がってしまったので、2026年の1月には店頭に何かしらのショーツが並んでいることでしょう。笑
まぁそんなことはどうでもよくて、このFRIENDは1年365日を通して生活の中で役割を見出してあげれる生地だと思います。
WHALEに比べるとタッチは柔らかいですが、耐久性は折り紙付き。
100回洗って乾燥機にぶち込んだ程度ではなんともなりません。
WHALEが製品染めなのに対して、FRIENDは生地で染色しているので色の安定感も抜群です。
着て洗うことが前提になるからこそ、FRIENDショーツが良すぎておかわりオーダーしているので、真夏に対峙して「やっぱ耐えれん」となった方、今からでも遅くはありません。
CASANOVA&COが1月から8月までショーツを売り続ける店になるのかどうか、皆様に委ねられました。笑
<FRIEND使用の店頭展開アイテム>
・sweat slacks
・sweat shorts
【WAFFLE】
世界的なメゾンを納得させた着心地を実現する生地を創業 70 年の工場で開発。
理想のワッフルとは、表面にしっかりとした凹凸感を出しつつ、縮みが出ない、最高の肌馴染みを実現させつつ、キックバックがしっかり効く、そして、洗濯耐久性が高いことをコットン 100%で表現すること。
機械は、海外から輸入した吊りでもなく、シンカーでもない全く別の機械をベースに、針を吊り編み用へ、生地幅を極限まで狭くし密度を上げ、ハイゲージの設定で、オリジナルの引き揃えの太い糸を掛け、ゆっくりゆっくり編み上げていく。
糸の種類、太さ、度目の設定のバランスが理想のワッフルとなるまで、30 回以上のサンプルを製作し、300 回以上の洗いのテストを経て完成に至った。
それは、利便性の追求と共に失われてきた、大切な感覚を再認識させる、アナログな
表現にある最先端なプロダクトとなった。
※ブランド公式ステイトメントから引用
本日の最後、WAFFLE。
まだまだブランドとして2シーズン目ですが、早くもブランドの顔的存在になっているように感じます。
このワッフルも、一筋縄ではいかない。
そもそも生地開発の圍さん、ワッフルが大好きだったそうです。
そこで、職業柄もあって、世の中に存在する品種のコットン、ほぼ全てでワッフルを編んでみたことがあるそう。笑
すでにこの時点で凄すぎて僕は笑ってしまっていましたが、圍さんの追求は止まりません。
コットンの品種に限らず、糸の本数も単糸なのか、双糸なのか、引き揃えなのか、などなど、とにかくやり尽くした。
いわゆる、”ローラー作戦”に近い感覚。
しらみつぶしに、最高のワッフルを求めて、可能性を潰していく。
もちろん高価な超長綿でも試したそうですが、肌あたりが良い反面”戻ってこない”。
”戻ってこない”というのは、”キックバック”ということ。
着て伸びた生地が、跳ね返って戻ってくるかどうか。
これはワッフルに限らず、天竺や裏毛ではとても重要なポイント。
キックバックがなければ、着るたびにどんどんダレてしまうものになってしまいますからね。
そこで圍さん、次は戻って来やすいしっかりとした繊維の太さのあるコットンでも試してみたそう。
ただ、今度は油分が足りずカサカサになってしまい、着込んでいった先の未来が理想とは違った。
...このようなトライ&エラーを繰り返しまくってたどり着いたのが、WONDER ROOMのワッフル。
糸の量に伴う重み、密度、そして立体感。
ここまでストレートで表情のあるワッフルになると、ワッフルに対するベースレイヤー的な概念が変わる。
これだけワッフル生地に異常なほどのこだわりを持って向き合ったからこそ必然かもしれませんが、洗濯テストが300回を超えたくらいの時にリブが先に崩壊してしまったそう。
となれば、やるべきことは一つしかない。
リブの追求。
またとんでもなく長い旅が始まる。
その旅の軌跡はイベント中店頭でご紹介させていただこうと思いますが、もはや狂気じみている。笑
圍さんによる足掛け約10年のリブ開発の歴史も楽しんでいただけましたら幸いです。
<WAFFLE使用の店頭展開アイテム>
・waffle
・waffle slacks
本日は、以上となります。
明日ご紹介するのは、全て新たな生地のラインナップ。
圍さんのジャガード裏毛の処女作や、25SSで伝説となった(個人的に)”アルティメイトピマ鬼度詰吊り天竺”をご紹介する予定です。
WONDER ROOMの真髄に触れていただくべく、今回は生地にフォーカスしていますが、金曜日にはインスタグラムに各商品の物撮り写真を掲載できる予定です。
その際に参考にしていただけるように、各生地に対して使用アイテムを記載しておりますので、ご参考にしていただけましたら幸いです。
続く。