こんにちは。
CASANOVA&COの中山です。
今回は、ブログでもお伝えさせて頂いたIRENISA 2025SSシーズンの洋服について話をさせて下さい。
毎シーズンとてもとても楽しみにしていますが、毎回とも唸ってしまいますねぇ。
2025SSシーズンのテーマは"Variable Void" 可変する空間。
このふたつのIRENISAのメッセージ。
ぜひ、何度も読み直して噛み砕いて頂けましたら嬉しいです。
僕も、何度も何度も読みました。
そして、今シーズンのIRENISAの洋服が届いて実物を見た後に、また読み直しました。
デザイナーの安倍さんと小林さんのいう服飾造形作家。
パタンナーとしてのキャリアがあり、高い技術を持っているおふたりだからこその言葉だと思います。
でも、それだけじゃないから服飾造形作家なんだと思います。
パターンとは洋服の造形に直結する超大事な洋服をつくるプロセスのひとつ。
メッセージに登場するルーチョ・フォンタナ(Lucio Fontana)さんの作品から黙示を得られたおふたりが、洋服においての肌と衣服の間の”空間”に何を込めれるか・何を写し出せるかというところに向き合った今シーズン。
そこには、人の内面的な心情の変化。
そして、心情の変化から可変していくその人が纏う空気感にフォーカスもしていることでしょう。
その人が実は潜ませていたセンスや激情、感性・独自性を洋服を纏うことで引き出す。
洋服の造形をすることで、着用者の内面を空気感として造形したいと考えられているから服飾造形作家。
今シーズンの生地には繊細な手法を使い、緊張感と個性が宿しているように感じました。
ほぼ毎日どこかしらにIRENISAの洋服を身につけている僕は、IRENISAの洋服からその人に内在する個性やセンスを飾らない佇まいで表現している状態こそがファッションなんだと教えてもらいました。
だから、僕はIRENISAの洋服を身につけることは落ち着くことでもあるし、自分らしくいることに必要なものなんですよ。
洋服は自己表現。
この考えには僕も同感です。
そして、時に洋服からも気づきを得ることもある。
と僕は思います。
IRENISAは着る人の秘めたる思いや潜めたセンスを引き出せる洋服であり、秘めたり潜めていた感覚を纏える心地よさを感じる洋服だと僕は思っています。
もちろん季節に適した肌あたりや機能性を持った洋服の物理的心地よさも高いクオリティで適えていますよ。
ただ、IRENISAの洋服がつくる洋服として抜きん出て秀でていると思うのが、感覚を纏える心地よさ。
IRENISAの言葉にもあるように、デザイナーである安倍さんと小林さんがそのような洋服をつくりたいと思って、洋服として形にしているのだからほんとすごい。
”感覚を纏える心地よさ”と言いましたが、自身の味方にも背中を押してくれる相方にもなってくれるような洋服といった感じに僕は思います。
なんたって、自分自身を肯定してくれる洋服ということですからね。
仕事をするためのスーツに着替える時と、とっておきの洋服に着替える時だと心の動き方って圧倒的に後者の方が自分らしく・前向きに・心地よく・自信を持つことができると思う。
それは僕もそうだったから。
でも、自分自身を表現したとしても評価を下してくれるのは自分以外の誰か。
だから、感覚を秘めたり潜めたりする調整は必要不可欠。
その調整具合を秀逸に狭間で捉えたことを洋服で形づくりできているのがIRENISA。
超曖昧で、超シビアなカテゴライズできないところの洋服を作っている。
その超曖昧で、超シビアな洋服づくりとしてIRENISAが今までのシーズンで一貫してきていること。
”人工”と”自然”の境界となるファブリックの作成。
”自然の作り出す造形”と”人の手による修練”が込められたオリジナル生地たちなんです。
そこで、今シーズンの生地を一部ご紹介させてください。
今シーズンのテーマでもある「Variable Void」(可変する空間)を表した緊張感と個性を感じるラインナップになっているなと思います。
それではまずは・・・・
モヘア混のウールを使用したIRENISAを象徴とするセットアップで使われるタキシードクロスの生地。
今までのシーズンのIRENISAをご覧いただいている方は「あれか」となるんじゃないかと思います。
今年はバーガンディとブランドでは珍しいブラックの展開。
この生地の特徴は
・超強撚糸ならではのドライな質感と微細な奥行きのある凹凸感。
・ウールのしなやかさと糸の撚糸の強さのバランスによる特有のハリ感と落ち感。
・生地の表面に現れる繊細な縦スジ。
・ウール特有の艶やかさではなく陰影の振る舞いによる気品。
超綺麗な生地表面に微かに現れる縦スジが密かに個性を引き出しているんですよ。
離れてみると単色に見えるようになっているのもまた、IRENISAらしいさじ加減だと思います。
ウール特有の光沢感ではなく、IRENISAがつくるドレープや生地の揺らぎに応じて陰影が引き立つ飾らない気品がありますよ。
肉眼で見るとより奥行きを感じていただけるので、初めてご覧になる方は魅了されると思いますよ。
続いては、ランウェイフォトでも目を引いたストライプ。
こちら。
和紙が織り込まれたサマーウールの風通しの良い夏向きな生地。
光に当てるとこんな具合。
風が抜けていきそうじゃないですか?
抜けていくんですよ。爽快に。
ストライプの部分も気になりますよね。
だからもう一度。
ブラックの中に細くスーーっと入る白い色糸。
に、和紙が絡まったように吹き出してますよね。
まさしく”人工”と”自然”の融合。
とても綺麗で整った生地の表面を織り込まれた和紙があらゆる方向に無秩序に吹き出してる。
とてもシンプルな感想になてしまい申し訳ないですが、この生地かなりかっこいい仕上がりですよ。
肌あたりも夏に適したドライな質感で、ナイロンをうまく活かし方も上手いなぁと思います。
ふんわりとしたハリ感になるのでIRENISAの高い造形テクニックも活きるし肌離れも良いですよ。
続きましては当店のラインナップの中では凛々しさのある生地です。
複雑に色合いの濃淡が変化しているウールナイロンの二重織です。
最初にご紹介したモヘア混のウール生地よりも激しく縦スジが現れ、複雑に濃淡が変化していますね。
めちゃくちゃ近くで見ると経糸も緯糸もグレーの糸の太さを変化させて、暗めの糸との表に現れる比率を複雑に変化させていますね。
二重織って簡単にいうと生地が2枚重なったような構造で作られる1枚の生地なんですよ。
だから、1層目と2層目があるようなイメージです。
その奥行きさえも活用しているのか、2層目は暗めの糸のみで構成されているのでより表情に深みが生まれていると感じています。
有機的な表情を生地の組織でさらに強調。
また、二重織だと生地のハリ感も出てくれるのでこの生地を使っている洋服のシルエットはとてもシャープになりますね。
だから、緊張感の中に有機的な見た目が加わり、シャープなシルエットで凛々しい印象がありますよ。
そしてお次で今回は最後となります。
ジメジメと蒸し暑い夏を爽快に過ごすことができ、気品も兼ね備えている抜群ファブリック。
色味はベージュとダークグレイ。
こちらの生地。
ご来店頂ける皆様には一度は袖を通してみて欲しいですね。
強烈に涼しいので。
三月だと多分寒いです。
でも、そのくらいが夏にはちょうど良い。最近の夏は残暑も長いじゃないですか。
この画期的な生地にもIRENISAの”人工”と”自然”の融合からなる特有のムードを持たせてくれています。
見るからに複雑な表情をしていますよね。
これ、糸の段階でウールにナイロン(配色)を巻きつけた糸を使用しています。
それぞれ色味の違う糸が巻きつけられることで、糸の表面に出てくる色合いがランダムに。
それが織り上げられて生地になるとよりランダムになってる。
細かくポツポツと奥から配色のナイロン糸が見え隠れしています。
職人によって糸になり、また職人にわたって生地になったときに現れる有機的で深みのある表情。
綺麗に作られた生地ではあるのだけど、真面目すぎない。
洗練された人の手と自然が生み出す美しさがそれぞれ大いに発揮されこのムードを生み出していますね。
この感じが僕は好きだ。
それぞれの生地があまり見たことのない生地であるのは確かですよ。
しかも、とても繊細な具合で人口の部分と自然な部分を活かし合っているから、まさに狭間を形にしたかのよう。
特徴的でもあり落ち着きもあり、言葉にしづらい領域を狙って作られているのを感じていただけるはず。
明日は、これらの生地や紹介しきれなかった生地を使った洋服のラインナップをご紹介しますね。
洋服になると、デザイナーである安倍さんと小林さんの手の仕事が入りますからね。
楽しみにしていてください。
続く・・・・