こんにちは。
CASANOVA&COの野口です。
先週末、LEVERをご覧いただいた皆様、誠にありがとうございました。
1日だけ期間を延長して、明日30日(金)まで店頭にてご覧いただけるようにしております。
ご都合合う方は、駆け込みでご覧いただけましたら嬉しいです。
本日は、タイトルの通り、daisuke tanabeをご紹介させてください。
先日のブログでご紹介した通り、2026SSのdaisuke tanabeはJames Blakeの「Like the End」という楽曲からインスピレーションを受け、現代社会の歪みに目線を向けた”x”というコレクションを発表。
現在進行形の社会情勢を切り取るスピード感と、その濃度に驚かされる内容だったのですが、今日ご紹介する洋服もdaisuke tanabeの独特なアプローチを感じることができるシリーズ。
発想とそれを成立させるためのプロセスに、田邉さんらしさが詰まっている。
クールな見た目とは裏腹に、かなり振り切ったクレイジーなパワーピース。


daisuke tanabe
x-ray jacuard denim jacket
color _ x-ray jacuard
size _ 38,40


daisuke tanabe
x-ray jacuard denim trousers
color _ x-ray jacuard
size _ 30,32,34
一見すると何がどうなっているんだか分からないかと思います。
ギリ伝わるのは、デニムだということくらい。
商品名もdenimって言ってるし。
ただ、このx-rayシリーズはただのデニムではなく、田邉さんオリジナルの技法で生み出したジャガードデニム。

こちら生地のアップの写真。
インディゴカラーの経糸に対して、ライトブラウンの緯糸が自由自在に飛び交う。
これは、”とある柄”に基づいて田邉さん自身で設計したもの。

この写真だと分かりやすいかな。
右胸には両玉縁のポケットがありますが、左胸にもポケットのような痕跡。
フロントの第三ボタンと第四ボタンの間に、謎のボタンのような痕跡。
その脇にはアクションプリーツのような筋も。
...もうお分かりかとおもますが、このデニムジャケットは、”デニムジャケットの柄”になっているのです。
各所のディテール、色落ち、ステッチなどを全てジャガードで表現している。
それもdaisuke tanabeのパターンに”無理やり合わせた”状態で。
この時点で発想がかなり狂ってて最高なのですが、それを成立させるプロセスもそれ以上に狂ってる。

スタート地点になったのは、WEB上で見つけたヴィンテージのGジャンとジーパン。の画像。
田邊さんによると、かなりのヴィンテージで、かなりのお値段だったようです。
もちろんそんな超高額ヴィンテージアイテムを資料として購入することは難しいので、行き着いたのが”画像からトレースする”という発想。
まずはヴィンテージデニムの画像をトリミングして自身のデニムアイテムのパターンに当て込む。
そしてその画像から、ヴィンテージ特有の色落ちやディテールを全て”ビットマップデータ”にする。
iPadを駆使して、ひたすらに”点”でヴィンテージデニムをトレースする。
何時間かけたのかとかは聞いてないけど、想像するだけでかなりイカれた作業だということは分かる。笑
そしてコンピュータージャガードで、そのデータに基づいた”ヴィンテージデニム柄”のリジッドデニムを織り上げた、というワケ。
ヴィンテージ特有の仕様や色落ちを研究して、加工などでそれを表現しようとするブランドは数多ありますが、デザイナー自身がそれをビットマップデータにしてジャガードにしてしまうなんて前代未聞。
ましてや、今回このデニムを除いたとしてもかなりの濃度のコレクションを制作している中で、誰もチャレンジしたことがないであろう手法をフィジカルでやり切っちゃうんだからもうお手上げ。
異次元でしょこんなの。
僕は展示会で初めてこの生地を見たときに、正直「よくこんなことやり切ったな」と思った。
だって誰もやったことがないから、上手くいくかどうかも分からないはずなのに。
でもそこには田邉さんの思考の柔軟さが寄与している。
「織機に整経されている経糸が約8000本なので、8000px × 8000pxくらいの解像度のビットマップなら表現できるかなって」
みたいなことを展示会でサラッと言っていた。笑
理論上は、わかる。
理論上は、ね。笑
でも、そういう発想に繋がること自体が、デザイナーとして新たなものを生み出す田邉さんのバケモノ級の思考力を体現している。
そういう裏話を踏まえて、もう一度見てみてください。


片胸のポケットはフラップなし、シンチバック、背中心の接ぎ。
ベースとなったのは大戦モデルのTバックで間違いなさそう。


パンツの方も大戦期のものと言っていた気がするけど、流石に手がかりが少なくて分かんないです。
ただ、ゴリゴリのヒゲにゴリゴリのハチノス。
かなりクールな個体であっただろうとは推察できます。

ジャケットもパンツもベースにしている大戦期のものとはそもそものパターンが全く違うので、不自然な位置に不自然な柄の配置となるのですが、これこそが田邉さんの狙いであり、コレクションテーマ"x"に通づる部分。

ポケット口もズレちゃってる。

左足のアウトシームは斜行しているように見えるけど、実際のシームはもちろん真っ直ぐ。
これ、生地を織るまでの田邉さんの大変さもすごいけど、裁断するのもかなりめんどくさそう。。。

実際のヨークからステッチがズレていたり、
実際は背中心に接ぎは無いのにTバックに見えたり、
シンチバックの上にdaisuke tanabeのパッチが被さっていたり、
まるでトリックアートのように平面の上に奥行きが生まれる。
さらには着込んでいけばここからさらに経糸が色落ちする楽しみもある。
これが色落ちした姿は全人類誰も知らないと思うので、購入してくれた方だけが見ることのできる世界初の光景が広がるはず。
着て洗ってその人の立体感が出てきた方が絶対にイケてると思う。

膝裏の”ジャガードハチノス”に”リアルハチノス”がオーバーレイしたりしたら超面白そうじゃん!って思ったけど、まぁワイドなのでハチノスはできないでしょうね。笑
でも間違いなく履き込んだ時に出来上がったものは、オリジナルのヴィンテージにも、それを目指したものにも無いものになると思う。
それは間違いなく田邉さんの”狂気と根気”のクリエイションが上乗せされたからこそ。
人間も洋服も、クールな見た目の裏にそういうクレイジーな表情が潜んでいるのは魅力的。
前代未聞のジャガードデニム、見てみてください。