こんにちは。
CASANOVA&COの野口です。
気がつけばもう年末。
ブログを書くのも久しぶりになってしまいましたが、今日は待ちに待ったMOTHER HAND artisanからの納品があったのでご紹介させてください。
今回到着したのはシルクモヘアのシリーズ。
ブランドでは3年ほど前に登場して、当店では毎年ご紹介している”アレです。
その中で、今日はカーディガンタイプのBASTOGNE(バストーニュ)。

MOTHER HAND artisan
BASTOGNE
color _ SILVER FROST
size _ 2,4
今回も永井さんのご好意でオリジナルのカラーでご用意させていただきました。
直近2年ほどは暗めの色でオリジナルカラーとしてご用意していたので、今年は明るめなトーンの色にしようということだけは事前に心に決めていた。
ただ、自分の好きな色を作ってもらうのもなんだか面白くないし、ピンとくる具体的なイメージはすぐには浮かんでこなかったので、正直オリジナルじゃなくても良いんじゃないかとも思っていました。
でもせっかく永井さんからそう言っていただけたし、どうせやるならシルクの光沢とモヘアのふんわりとした毛羽立ちを活かせるカラーリングで、新鮮さと使いやすさを兼ね備えた色を。
と思って徹底的に考えた結果、
シルバーだ!!!!!!
と思いました。
そこに至るまでの細かな経緯や思考を文字に起こそうとすると、自分でも無意識のうちに後付けの要素として付け加えてしまっている部分が大きく、なんだか「ここまで考えて色を選びました」。みたいな感じになってしまうので嫌なのですが、想像して仮説を立ててを繰り返せば繰り返すほど、シルバーを目指す理由が固まったのは確かです。
なので、後述の「シルバーを目指した理由」は、あくまで過程の中で生まれた後付けの理由として聞いていただければいいです。
ということで、なぜシルバーを目指したのか。
一言で表現すれば、
「なんか、カッコ良さそうだから」という直感がスタート地点。
これは言うまでもなく、後付けではなく、その場の直感。
その時点でそれが直感であるということに自分自身も気が付いていましたが、その直感の落とし所さえ間違えなければなんだか面白いことになりそうな予感だけは察知していた。

出来上がったカラーが、これ。
この半年以上、お客様にも「今年のMOTHER HAND artisanはシルバーです!」と言い切っていたので、僕自身の目にはシルバーにしか見えなくなってしまっていますが、皆さんの目にもシルバーに見えていたら本望です。
グレーカラーのモヘアに対して、白に近い薄いグレーのシルク。
モヘアに若干の青みがあるので、メタリックなブルーグレーという表現が近いようにも感じます。
近くで見るとメランジ感が強くなりますが、引きで見ると白く光るシルクがグレーのモヘアの毛羽立ちいのカラーを拾いながら反射して、メタリックなシルバーっぽい表現になることを狙ったカラーです。
MOTHER HAND artisanのシルクモヘアシリーズは、モヘア特有の毛羽立ち感も一つの特徴なのですが、僕はこの毛羽立ちによる”ふんわり感”を殺したかった。
”ふわふわ”で”もけもけ”なニットの柔らかい雰囲気を、メタリックでソリッドな印象に置き換える。
となると、モヘアとシルクはなるべく同色に近づけてソリッドカラーにし、少し冷たく硬いい印象にしたかった。
というのがシルバーを目指した理由の後付けの言語化。


仕様面は昨年から変更はありません。
家庭用手横編み機でニッティングし、それぞれのパーツを手縫いで縫い合わせる。
MOTHER HAND artisanの独自理論で編み出したシルクモヘアセーターの形は、この手法でないと生み出せません。
そしてそれに呼応するように、ネック周り、裾、袖口はニットのカーリングを利用した始末。

ボタンももっとクリーンなものにしようかとも迷ったのですが、ニットの色がライトなので、逆に印象強めな焼き加工の水牛ボタンにしていただきました。
ニットという柔らかな印象のものをメタリックな硬さのあるイメージに着地させたからこそ、ボタンにも力強さのあるものを選んで正解だったように感じます。

着用するとより分かるのですが、光の当たり方でかなり印象が変わる色だと思います。
アームのシワや胸周りのドレープに生まれる陰影からは、ニットの柔らかさとメタリックな硬い光沢を同時に感じられる。
むちゃくちゃバランスの良いカラーになったと思っています。

このシリーズの特徴である、肩の部分の傾斜と胸のドレープ。
カーディガンでこんなシャープなラインのもの見たことないです。
立ち姿の美しさを念頭に置いた永井さんだからこその設計だし、これをセーターという”制約のある枠組み”の中で形にできるのはMOTHER HAND artisanの”手”があるからこそ。
気を衒ったものではないけど、他にはない存在感を持っていると思います。


後ろから見た立ち姿も完璧ですが、腕を広げると胸周りの身幅の分量が顔を出す。
身幅が大きくテーパードしているのが見えると思います。
直線的な形をリブでキュッと締めるのではなく、一目一目をコントロールしながら曲線的に編み上げ、そうなるとリンキングミシンを使うことができないので手縫いで縫製する。
求める美しさに対して、とても必然性のあるつくり方だと感じます。

メンズ市場においてはシルバーのニットはあまり存在しないんじゃないかと思うのですが、実はめちゃくちゃ使いやすい立ち位置だと思うんですよね。
ただ、それが化学繊維やラメ糸みたいになっちゃうと言語道断NG案件。
でも生糸のシルクとモヘアならシルバーに辿り着けるんじゃないかと思っての、今回
結果的にスタイリングにはかなり使いやすい。
デニムはブラックでもインディゴでもいけるし、スラックスだろうがワーク系だろうがなんでもOK。
インナーもパステルカラーから無彩色まで、極論目を瞑って選んでも無問題。


MOTHER HAND artisanというブランドと永井さんご夫妻が持つニュートラルでありながら強い芯のあるキャラクターにとてもマッチしていて、尚且つ僕たちらしい色になったと思います。
今はまだBASTOGNEのみの入荷ですが、おそらく週明けの火曜日前後にクルーネックタイプのMONSが同じカラーで入荷する予定となっております。
クルーネックはボタンが付かないので、カーディガンとはまた異なる印象になってくれると思います。
シルバーのMONSもご期待ください。

今年も残すところあと僅か。
MOTHER HAND artisanが僕たちの年内最後のデリバリーとなりそうです。
MONSが到着したらまたインスタグラムなどで掲載しようと思います。
最後までお楽しみいただけましたら幸いです。