こんにちは。
CASANOVA&COの野口です。
1月にイベントを開催したTHE NULABEL。
その時には”NU-ORDER”と題して、サラシ、つまり無染色状態の製品をご覧いただき、染め加工を選んだいただけるというイベントを開催いたしました。
その中でもTHE NULABELの本藍染めを担う”藍屋テロワール”さんにお邪魔させていただき、表立って語られることの少ない染めのプロセスについて僕自身もたくさんの気づきがありました。
ただ、その反面、皆様には基本的にサラシ状態の製品しかご覧いただいておらず、その意味においては”真のTHE NULABEL”はまだご紹介できていないわけです。
ということで、イベントのタイミングにオーダーいただいた皆様の生産に合わせて、少しだけ当店の販売分をご用意いたしました。
改めて、実際の製品をご紹介させてください。


THE NULABEL
GARMENT DYED CARGO TROUSERS [CASANOVA&CO Ex.]
color _ NATURAL INDIGO
size _ S,M,L
ブランドが定番で使用する生分解性の”バイオナイロン”に、藍屋テロワールさんにて本藍染めを施したカーゴパンツ。
今回ご紹介する洋服は全てこの”バイオナイロン”を使用しているのですが、個人的に今、ナイロンがすごく面白いなと思っていて。
洋服を好きになればなるほど化学繊維として分類される素材への忌避は強くなる方が多いと思います。
正直、僕自身もそう。
「1%でも化学繊維が入ってるものはNG」みたいな過激な思想ではないけど、「天然繊維と化学繊維であれば、なんとなく天然繊維の方が上」みたいな感覚は、正直ある。
それはきっと流通する際の価格や、素材の成り立ち、出来上がる生地の風合いなどからイメージづけられた感覚だと思うのですが、一回それを疑ってみるべきだと思ったんですよね。
”天然繊維は高品質”≒”化学繊維は低品質”、みたいな二項対立の思考、僕は大っ嫌いなので。
それで、昨年個人的に購入した洋服やカバン、スニーカーに至るまで、積極的にナイロン素材のものを生活に取り入れてみた。
その結果、ナイロンという素材は付き合い方によってとても合理的な選択肢になりうることが分かった。
いや、合理的というよりは、魅力的な選択肢。
もちろん全ての天然繊維が上質であるとは限らないように全てのナイロンがそうだとは思わないし、そもそも見た目にかっこいいor美しいものでないと心惹かれることすらないけど、ナイロンを選ぶという選択肢に感じていた”見えないハードル”を取り除くことができた。
そして、この1月からTHE NULABELの本藍染めバイオナイロンのカーゴパンツを履いている。
やっぱり、とても魅力的。
小雨で濡れたり洗濯した後もすぐに乾くし、見た目に季節感が無く今のような季節の変わり目にとても使いやすい。
上質な天然繊維に備わるようなナチュラルな機能性は無いかもしれないけれどそれは服装でカバーできるし、ポリエステルなどには無い変化の愉しみもある。
加えてTHE NULABELの場合は、研ぎ澄まされた染色背景がナイロンに乗っかる。
化学繊維の扁平な印象に天然の染料が入り込むことで、逆に天然繊維では見ることのできない美しい表情が生まれる。
この工業的な均一さと、天然染色や手仕事による不均一な揺らぎ。
さらにはTHE NULABELならではの、手仕事の跡を強調させないミニマルな仕上がり。
他では感じたことのないバランスと、高揚感。
ナイロンを積極的に生活に取り入れた体験の中で感じた”合理性”という言葉だけでは表現できない、そのうえ天然繊維のものからも感じたことのない、不思議な高揚感をTHE NULABELの天然染色のバイオナイロンからは感じました。
まぁ、これは実際に所有しなければ分かりにくい感覚だと思いますが、その”高揚感”の部分だけでも感じていただければと思い着用した写真をメインでご紹介させていただきます。

なんとなくお気づきの方も多いと思いますが、僕が無類のカーゴパンツ好きなので店頭に常に複数ブランドのカーゴパンツがあるような状態が続いておりますが、THE NULABELもカーゴスタイルは定番のひとつ。
ただ市場にある様々なカーゴパンツの中でも、かなりソリッドで男前なフォルムだと思います。


決して細身なシルエットという訳ではないですが、腰回りは一般的なカーゴに比べてコンパクトな設計。


ヒップ周りも無駄のないフォルム。
このストイックな設計はTHE NULABELらしさ、濵田さんらしさをめちゃくちゃ感じるポイント。


腰から下はストンとまっすぐ落ちるシルエットです。
やっぱり細身ではないはずなのに、スリムに見えるというか、スタイリッシュに見えるというか。
履くだけで全身の印象が出来上がる秀逸な形だと思います。

その洗練されたシルエットバランスの凛々しさに対して、タクティカルな印象の6ポケスタイルカーゴ。
ベースとなるのはフランス軍の”あのカーゴパンツ”だと思いますが、COBRAXのスナップ、ririファスナーのスラッシュポケットなど、土臭さというよりはモダンな印象。
その反面、カーゴポケット底にヘリンボーンテープを当てて、補強と同時にパッカリングを強調するのが濵田さん流。
このモダンなタクティカルさの中にある、動きを伴う表情のバランス。
デザインというよりも、フォルムと生地の動かし方だけでTHE NULABELだと感じることができるほどキャラクターがあると思います。
やっぱそういう服がかっこいいっす。

そして何よりこの色合い。
僕が1回目の染色を行った時は、目の覚めるようなライトブルーだったのですが、藍屋テロワールさんが10回前後染色を重ねて辿り着いた深いオーロラのように輝く藍色。
一年かけて育てた藍の状態に向き合いながら、染色に使う藍甕や回数を調整し、製品の仕上がりを合わせていくプロセスこそが本当の意味での染めの技術なのだと痛感しました。
なので、僕が一回目を綺麗に染めてある程度綺麗に染まるのは当たり前。
そこからの藍と生地との対話にこそ奥行きがあるのです。



THE NULABELのバイオナイロン×藍屋テロワールの本藍染めの掛け合わせはそれだけでめちゃくちゃパワーがあるので、極力シンプルに合わせてあげるほうが良いのかもしれません。
これから真夏前までは、このカーゴにTシャツ1枚で大丈夫。
あ、白Tは移染しちゃうかもだから気をつけてください。
でもそれくらい綺麗な見え方のパンツだと思います。


THE NULABEL
GARMENT DYED BDU JACKET [CASANOVA&CO Ex.]
color _ NATURAL INDIGO
size _ S,M,L
こちらは同じく本藍染めバイオナイロンのBDU。
これもかなりの迫力だと思います。


カーゴパンツ同様、フラップポケットは全て底面にヘリンボーンテープをつけた仕様。
このパッカリングギュンギュンのポッケが4つ付くので、それだけで大迫力。
僕は基本的にはどんなパッカリングでも良しとするパッカリング全肯定のパッカリング信者ではありませんが、今回はイベントの流れからの別注仕様であるバイオナイロン×綿糸縫製であるということ、そして濵田さん自身もパッカリングを促進する意味合いも含めてヘリンボーンテープを当てているということから、今回はパッカリング全肯定スタイルです。
このヘリンボーンテープとパッカリングによって自然とポケットに膨らみが出るので、洋服としての立体感にも一役買っています。

フロントの大迫力パッカリング祭りに反して、この背の美しさ。
これが僕のTHE NULABEL及び濵田さんの洋服の好きなところ。
ほんとにとにかく背中が美しい。
写真でも分かるくらいにネックから肩甲骨にかけて余分な分量が全く無い。
それでいて必要最低限の運動量と窮屈に見せない為の余白はある。
市場ではガバッとしたサイズ感のBDUが多い中で、野暮ったさのない切れ味鋭いフォルム。
ゆったりしたものに慣れている方にこそ試してみて欲しいですね。



肩周りもコンパクトというよりは無駄がないという印象。
そういう意味では形も”合理的”なのかもしれません。



個人的には天然繊維の服装の中にTHE NULABELのバイオナイロンがポイントで差し込まれるバランスが好きなんですよね。
温もりを抑えるというか、空気感が一段冷たくなるというか。
でもきっとそれは工業的なプロダクトの冷たさだけではチグハグなバランスになってしまうと思うのです。
バイオナイロン特有の質感や人の手で染色されている点も含め、天然繊維の表現の中に必然的に存在する”不均一さ”や”リズム”といったものに近い表情がTHE NULABELの天然染色ナイロンには感じられる。
THE NULABELの掲げる”HERITAGE&NEWAGE”はこのような点で表現されているのだと感じます。



こちらのBDUもパンツ同様シンプルに合わせるのが良いです。
ただでさえ洋服がカッコいいので、それでいいんです。
ただ、先述の通り、綿のチノパンやリネンのざっくりした素材感など、なるべく天然繊維らしさのある風合いの洋服と合わせる方が個人的にはベターなんじゃないかなと思います。


THE NULABEL
GARMENT DYED WORK SHIRT [CASANOVA&CO Ex.]
color _ KURE
size _ S,M,L
こちらはバイオナイロンに暮染めを行ったもの。
THE NUALBELの暮染めと、そのベースになる柿渋染めは全て滋賀県の”おおまえ”さんが担当しています。
THE NULABELにとっておおまえさんでの染色は、かつてコレクションの全てを柿渋染めで展開するというクレイジーシーズンをやったことがあるくらい象徴的なもの。
僕自身も別のルートからおおまえさんの柿渋&暮れのことは数年前から知っていて、2年ほど前に購入したLUGGAGE LABELのOLDNEWのナイロン暮染めバッグを使ったことから暮染めにハマった経緯がある。
ので、ワークシャツは暮染めにしてもらいました。



暮染めはやはり匂いも特徴的。
僕はよく「燻製のような匂い」と喩えるのですが、現代の技術ではまだ画面の奥の皆様に匂いを感じていただくことはできないので、店頭で鼻を近づけて嗅いでみてください。
僕はこの匂いだけでウイスキー飲めます。

僕の飲酒の癖はどうでも良いので洋服の話をしましょう。
THE NULABELは製品染めを前提とするのですが、そのようなブランドの中ではかなり縫製を丁寧に仕上げていると感じます。
先述の通り製品染めはパッカリングのような縫製の動きや、縮みや油分の抜けなどの生地の動きを伴うので、細かな縫製のニュアンスが伝わりづらくなってしまう。
それでもTHE NULABELは、かなりやり込んでる。

先ほどよりもアップしたこの写真だと、かなり細かな運針であるということが分かります。
ナイロン生地に、この運針で、この糸番手。さらには綿糸という僕からの指定。
美しい見た目とは裏腹に、かなりハードな縫製仕様だと思います。
ただし、もちろんTHE NULABELはそれを製品染め。
魅せる美しさというよりは、”そうであるべきだから、そうなっている”ような必然的な美しさ。
そこに一切の妥協がないのがTHE NULABELの縫製品質です。



ナイロンの柿渋染め及び暮染めは、本藍染めのナイロンよりもパリッとした紙のような硬さが生まれます。
これは使い込んでいくことによって砕かれていくのですが、この硬さならではの着用した際の独特なハリ感とボリュームが魅力。
程よく身体から離れたり、折れるようにして動く生地の風合いは、高密度な天然繊維のそれとは異なる表情だと思います。

動きの中で生地に角が立つこの感じ。
これは柿渋や暮れのナイロン特有の表情。
着込んでいけば馴染むものですが、少しずつ自分の体に合わせていく感覚を得ることができるのもナイロンの製品染めならでは。
天然繊維の製品染めはそれだけでこなれた感じか出てしまうので。
そもそもナイロンはまだ100年も歴史がない繊維。
シルクや麻のように、古くから人間が親しんできた素材とは異なり、工業的に開発された素材。
そのナイロンに対して歴史ある天然染色を行い、今までにないナイロンの表情を引き出すというある種の矛盾はTHE NULABELの哲学を強く感じることができる部分であり、それに掛け合わせられる型紙の設計や縫製仕様のバランスは、類似のないTHE NULABELが切り開いたジャンルだと思います。
天然染色のナイロン、新たなスタイルの扉を開いてくれるんじゃないかと思います。
気にしていただける方は見てみていただけると嬉しいです。