こんにちは。
CASANOVA&COの野口です。
連日の更新となりますが、本日もSARTOについて。
開催が明後日からと迫った本日、やっと店頭に届くべきものが全て到着しました。
もうこれ以上は届かないはず。笑
僕のカウントが正しければ、総数149点。
惜しかったです。笑
ただ、後にも先にもこれほどまでに1つのブランドのラインナップを堪能できる機会はもうないと思います。
ご期待いただけましたら幸いです。
そして本日は、昨日のブログにも記載した通りの3点。
スエードレザーのパンツと、手機ツイードのブルゾンと、リバー縫製のジャケット。
全てこの25AWシーズンにSARTOで展開されているアイテムですが、1つのブランドの1回のコレクションでこれほどまでの超パワーピースが何個も展開されているというのは、もはや異常。
それも、それぞれ全く違うカテゴリー。
さらに今回当店ではご紹介できないハンドニットなども実はまだまだ存在する。
店頭ではスタッフ達にもお客様にも何度もお話ししたことはありますが、僕が知りうる限りで圧倒的にNo.1のコレクションでした。
その展示会の後、SARTOチームと三軒茶屋のご飯屋さんでお食事をご一緒したのですが、もうその時には頭がポーッとしてた。笑
それくらいの衝撃を喰らったコレクション。
そして今日の3型は、そのコレクションの中でのTOP3。
順位をつけるつもりはないけれど、ちょっと別格のものづくりと佇まい。
今日はひとつずつ少し丁寧にご紹介させてください。
SARTO - andante - No.13
SARTO
SUEDE SEMI-FLARE PANTS
material _ LAMB LEATHER
size _ M
color _ BLACK
まずはこちらのレザーパンツ。
先述の通り、スエード面を表に使っております。
腰回りから太ももにかけては裏地が付き、膝からはレザーの銀面が肌に触れます。
これはどれだけ言葉にしても伝わらないので実物をご覧いただくしかないのですが、このラムレザーの銀面が肌に触れる感覚が、今までのレザーパンツとは別世界。
まずレザーについて。
スペイン原産のエントレフィーノ種のラムを使用しています。
きめ細やかでしなやかなラムの最高格といったイメージのエントレフィーノ。
そのエントレフィーノを”ほぼ”漉きを入れずに使用しています。
”ほぼ”というのはどういうことかというと、半年前の展示会のタイミングで僕が見たサンプルでは漉きを入れていないって聞いていた。
ただ、今回SARTOが生産にあたり確保したラムレザーの厚みが展示会の時の原皮よりも厚く、そのまま使用してしまうことで縫い代の硬さや着心地の悪さにつながってしまうと判断。
なので、今回の生産時には0.2〜0.3ミリ程だけ漉きを入れて厚みを最適なところに調節しているそうです。
僕はこういうところもすごく感動したのですが、”漉きを入れていないレザーパンツ”というパッケージングに囚われてしまっていたとしたら、このような厚みの調整は行えない。
豊島さんや池田さんの圧倒的な経験値からくる”製品になった時にどうなるのか”という先読みの元で、SARTOとして譲れないポイントにとても正直なものづくりをしていると感じました。
こういうことって当たり前のようで難しいことだと思うんですよね。
キャッチーなものが持て囃される時代において、ちゃんと本質からピントをぶらさない。
とても勉強になります。
ウエスト帯のレザーが2枚重なった部分からも、このパンツの厚みは想像していただけるかと思います。
ハンギングの状態では分かりにくいですが、No.3でご紹介したPANTS TYPE 001のブラックデニムに近いセミフレアシルエット。
デニムと異なり、こちらのレザーパンツの場合は膝部分に接ぎが入ります。
直線ではない形を出すためと、レザーの取り都合の側面もあるのだと思います。
とてもきめの整ったスエードです。
着用です。
僕がこのレザーパンツに一番感動したのは、履いた時。
レザーパンツを履く時って、どうしても見た目も履き心地も”レザーを履いてる”感が強くなる。
当たり前の事なんだけれど、スタイリングにも力みが出るし、着心地の面でもデメリットがどうしても拭えない。
ただ、SARTOのこのレザーパンツは、クローゼットの中で他のカジュアルなパンツやスラックスと並列にスタイリングを考えてあげることができるし、日常的にクローゼットの中で手の伸びる位置にいてくれると思う。
先述の通り、レザー自体はしっかりと厚みがあるのにもかかわらず、分厚いレザーパンツのしんどさがない。
世の中にはドレープが出るほどに薄く漉いたレザーパンツもありますが、そのようなアプローチとは全く異なる極上のエントレフィーノを最も”レザーらしい状態”で使うことによって、レザーパンツのデメリットを克服したのがSARTO。
WONDER ROOMのWHALEの時も同じ感覚だったのですが、僕はこういう真っ向から勝負してねじ伏せるようなクオリティを見せられると、もう無視することはできないのです。
この膝裏あたりの皺の入り方、すごくないですか。
革の厚みとしなやかさが一発で理解できる。
薄く漉いたレザーでも、一般的な分厚いレザーでも、このモチモチ感は出せない。
着用した時のシルエットも、レザーパンツとは思えないほどのエレガントさ。
でもこのムードを成立させるためには、革が荒いものではダメですからね。
レザーの化粧の仕方まで含めて、総合的にものづくりをコントロールしていないとこのような完成度にはならないと思います。
ワンサイズのみの展開となりますが、レザーパンツとしてではなく、1着のずば抜けたパンツとして、皆様の日常着の枠組みの中でご覧いただけましたら嬉しいです。
お次は、ツイード。
SARTO - andante - No.14
SARTO
TWEED ZIP JACKET
material _ silk 37%,cotton 32%,wool 20%,acrylic 8%,nylon 3%
size _ M
color _ MULTI
見るからにパワーピース。
もはや言葉はいらないほどにパワーピース。
25AWシーズンのSARTOは黒を基調としていて、当初は黒以外は作らないくらいのつもりでコレクションの制作を始めたそうですが、そのようなコレクションの中で一際異彩を放つツイード。
5種類の糸を使用したホームスパン。
一般的なツイードのイメージにありがちな、ハリスツイードのようなゴワゴワとした硬い織物ではなく、むしろニットに近いような目も粗く不均一なSARTOのホームスパン。
生地をアップで撮っている写真でもわかりにくいのですが、粗いホームスパンツイードの裏から芯材を貼って、洋服として仕立てることができるようにしているのだそう。
ただ、硬い芯材をベタッと貼っているというよりは、感覚的には機能芯の中綿が入っているかのようなふんわりとした状態なので、ニットのような目の粗さのツイードの表情を殺してしまうことなく余白を残しています。
先ほどの写真にも写っていましたが、ポケットとカフスのボタンはコンチョボタンで、中央にはオニキスが鎮座。
ファスナーは、TALONのゴールドカラーのもの。
見返しにあたる箇所は、コレクションでも使用しているデニム生地に加工をかけて。
ものすごく綺麗な処理。
裏地はくすんだパープル。
襟裏、シンチバック、ポケット口、あと写真撮ってないけどポケットのフラップ裏もレザーです。
そして、この生地。
ざっと各所のディテールをご紹介させていただきましたが、情報量多すぎでしょ。笑
全面マルチカラーの手機のツイードに、裏はくすんだおばちゃんパープルで、その周囲にはブリーチされたデニムがあって、随所にレザー、こんちょぼたん、ジップはゴールドカラー。
ここまでやっているのに、はちゃめちゃなように見えてなぜかめちゃくちゃ纏まっている。
SARTOマジック。
もうこれはセンスとしか言いようがない。
ファッションやデザインにおいて”足し引き”という言葉はよく用いられますが、言うなればこれは足して足して足して足して...を繰り返した先にあるシンギュラリティ。
「足しすぎてて情報量多すぎて、なにがなんだか分かんないよ」の特異点を超えて、足し切った先に、振り切れて纏まっている稀有な例。
ただ、普通の感覚では、これは狙ってやることはできないと思う。
なぜそれができるのか。
それは、
それができるのがSARTOだから。
としか言いようがない。
だからこそ”気取らないパワーピース”なる矛盾を起こせる。
着ていると、もちろん異様なほどのパワーはある。
だけれども、チグハグなパワーではなく、そこに秩序があるように思う。
首元から覗くデニムの見返しも、シルバーとオニキスのコンチョも、金色のジップも、「そこにそれ使う!?」となったはずなのに、なんだか心地よいバランス。
裏はキュプラ100%。
そろそろ皆さんも「これ裏地が無難に黒だった方がどぎついかもな...」と思い始めている頃でしょ?笑
このバランス感覚は本当にすごいし、この感覚こそがSARTOらしさ。
形ももちろん秀逸。
リバーのコートとかほどではないですが、アームの振り方も大胆。
クラフトマンシップ溢れる生地、抜かりのない付属や仕様。
それを支える、クラシカルさを孕んだエレガントで美しいパターン。
そしてそれらをまとめ上げる、ズバ抜けたセンス。
SARTOの洋服づくりのキャラクターが凝縮された今シーズンを象徴する洋服です。
そして、最後に、リバーのジャケット。
SARTO - andante - No.15
SARTO
JACKET
material _ wool 99%,polyurethane 1%
size _ S,M,L
color _ CHARCOAL
最後はこちら。
リバー縫製のテーラードジャケット。
これは、半年前の展示会の時に一番感動して、その場にいる時から自分の分を含めてオーダーすることを決めていたアイテム。
これは驚いてもらえるジャケットだと思ったから、自分で着用することも、お客様にご紹介することもめちゃくちゃ楽しみだった。
...のですが、夏頃にトラブルが発覚。
本来予定していた生地での生産が出来なくなってしまった。
先ほどのスエードレザーパンツ、手機のツイードブルゾンと並んでとても楽しみにしていたし、このリバーのジャケットがあるからこそ先述の2点も輝くと思ってのオーダーだったから、ドロップするという最悪のパターンは正直やばいと思った。
ただ、他のお店さんではほとんどオーダーが付いていなかったにも関わらず、そこからSARTOチームが急ピッチで別の生地を探してくれて今回の製品にあたっての生地が決まった。
それが、8月末のこと。
そこからのリバー縫製。
ただでさえ時間がない中で、生地を割いて手まつりで縫うという超時間がかかる仕様。
SARTOチームは「イベントまでには間に合わせます!」と言ってくれていましたが、内心ちょっと不安だった。
有言実行で間に合わせていただき本当にありがとうございます。
おかげで、イベントのメインアクトとも言えるアイテムを皆様にご紹介できます。
先述の通り、リバー縫製のテーラード。
テーラードジャケットにはラペルが付くので、ラペルの返りの部分に合わせてダブルフェイスの生地の表面を貼り合わせて、ラペルにも生地の表が出てくるようにしている。
こんな感じで。
細かいけれど、テーラードとしてのムードを大切にした仕様。
そして、胸ポケットの袋部分にはマチを持たせています。
物を入れてもポケット部分が不格好に膨らまないので、とてもスマート。
着用時に外側からアクセスできるポケットは、全てこの仕様です。
バスト部分のダーツの両端にはレザーパーツで補強が入る。
そして、注目して欲しいのは、ダーツでつまんでいる分量。
かなり大胆にダーツを入れている。
このポイントは着用時のシルエットを見ていただく上でとても重要なので、覚えておいてください。
先ほどのレザーパッチの部分。
表から見るとこんな感じ。
バックショット。
徐々にこのテーラードの異様なフォルムが見えてきましたね。
カフスは拝み合せの状態。
これもこのジャケット特有のフォルムにも作用する。
着用すると、フォルムの異様さが姿を表します。
しっかりシェイプが効いたバストに対して反比例するかのように大きく外側に湾曲するアーム。
僕は展示会の一瞬の試着の時間で、心を打ち抜かれてしまった。
日常着を提案するブランドとしてのテーラードジャケットに対するリスペクトと反骨。
100年近く前のクチュールの世界のエッセンスも感じさせるようなエレガントな造形。
あえて言葉にするならば、僕自身の感覚の中では”モード”という概念が近いけれど、もっと新しくて見たことがない、だけどとてもSARTOの匂いがするジャケット。
SARTOの得意とするアームの振り方。
バストが絞られていることでより強調されているし、リバー縫製のしなやかさを尊重しながらもカフスの構造がフォルムの輪郭をガイドする。
美しすぎる。
僕のペチャンコな上半身が彫刻かのように立体的に見える。笑
今まで見てきた洋服の中で、最も後ろ姿がイケてると思う。
ほんのりフォーマルにも近い硬さがあって、でもエレガントでモード。
これはほんとに凄いんだけど、試着してみてもらいながらじゃないと伝わらないかも。
フォルムが綺麗に出過ぎててバキバキに硬い生地かと思いきや、無茶苦茶しなやかで光沢のあるウールのダブルフェイス。
カシミヤばりのしなやかさと光沢。
先述の通り生地を変更しなければならないトラブルが発生してしまったのですが、SARTOが提案してくれたこの葛利毛織さんの生地がホントに抜群。
本来の生地よりも綾目が強く出るからちょっとクラシカルな印象になりすぎちゃうかなって心配してたけど、むしろいい感じに全体のムードを引き締めてくれている。
クラシックとフォーマルとモードの間にある、カジュアル。
この3日間何度も書いていますが、あくまでSARTOが提案するのは”気取らない”日常着。
ただ、それをとてつもなく高い技術とセンスで生み出しているからこそ、SARTOは心が躍る。
僕は、このジャケットに震えました。
(とはいえ今シーズン、パンツもシャツも買ってる。)
皆さんの心を躍らせるSARTOを、149着の中から一緒に探す機会を頂けましたら幸いです。
そして、デザイナーの豊島さんとパタンナーの池田さん、セールスの岡本さんとお話いただくと、SARTOの解像度がぐんと上がると思います。
ブランドとしては豊島さんと池田さんの在店が初めてで、当店としてもここまでの催し事は初めて。
僕たちも楽しみですが、皆さんも楽しみにしていてください。
土曜日から、皆様のご来店を心よりお待ちしております。