株式会社𠮷田。
代表的なブランド”PORTER”や”𠮷田カバン”の愛称で知られる株式会社𠮷田は、今年創業90周年を迎えました。
先日、創業90周年を記念した特別展が東京は九段下にて開催され、ご縁がありご招待いただいたので、お伺いしてきました。
僕は約一年前に痛感させられたのですが、その時にも改めて思った。
この人たち(𠮷田カバンというチーム)、ちょっと次元が違う、と。
僕たちは、”𠮷田カバン”のことを知っているようで、知らなかったのだ、と。
僕がそれを感じた約1年2ヶ月前、「𠮷田カバンがやばいことをやってて、いつかこれをCASANOVAでやりたいんだ」と当時スタッフたちに話をしていたのですが、いろいろな偶然が重なって、1年経ってこのような特別な機会をいただきました。
LUGGAGE LABEL limited store -温故知新-
2025.12.06(SAT) ~ 2025.12.14(SUN)
2025SS展示会が最終盤に差し掛かった2024年秋。
おそらくシーズン最後の東京出張になるだろうということで、数年前に僕が当店オンラインストアのシステム構築を行った時にお世話になった方と会食の予定を入れていた。
展示会のアポを終え、会食の時間まで少しの余裕があったため、道中で何軒かのお店に立ち寄った。
そこで出会ったのが、LUGGAGE LABELでした。
LUGGAGE LABELが𠮷田カバンのブランドであるということすら知らず、接客して頂きそれを知った程には前情報ゼロ。
ただ、そのカバンを見た瞬間にムードに終始しない堅実なつくり込みとカバンから感じる”匂い”を強烈に感じた。
僕のイメージしていた𠮷田カバンらしさと、らしくなさを同時に感じて、とてつもなく心から引き込まれてしまった。
それが、今回のサムネイルにもなっているこちらのカバン。

会食の時間が迫っていたので入店から10分ほどで会計までを済ませた。
本来ならもっとゆっくりと買いたいと思う程に”素晴らしいものに出会えた”と感じたが、反面10分で決断することへの迷いもなかった。
時は流れて、2025年1月。
確かド平日の昼間。
普段なら来店も少ないタイミングに、明らかに一般のお客様とは異なる雰囲気の男性2人組が来店した。
タイミング的にパリファッションウィーク前だし、その後に始まる国内展示会に向けてのブランドさんのお店回りかなと思っていたら、𠮷田カバンのセールスチームの方だった。
数ヶ月前に購入した先ほどのカバンを休みの日の度に使って魅了されていた僕にとっては、まさかのタイミングでの、まさかのエンカウント。
勝手に運命感じて、かなり一方的に10分で会計を済ませた時に感じた感動を捲し立てた。
それが今回のイベントに至る全ての始まり。
その日の僕たちと𠮷田カバンチームの様々な偶然と繋がりについてはぜひイベントの会場で直接お話しできればと思いますが、それ以降半年間ほど、タイミングを見てしつこく電話をしては「一緒になんかやりましょうって話、どうなりそうですか?」とメンヘラみたいな確認を繰り返しまくってしまった。
ただ、心優しい𠮷田カバンチームの皆さんが尽力してくれて、今回のこのようなイベントに繋がりました。
創業90周年というタイミングに、このような形で皆様にご紹介できることをとても嬉しく思います。
その母体となる株式会社𠮷田について、少しだけご紹介させてください。
遡ること90年前の1935年、創業者である吉田吉蔵氏は吉田鞄製作所を立ち上げます。
当時の吉蔵氏は29歳。今の僕と同い年。
10代後半で関東大震災、そして創業してすぐに太平洋戦争を経験した吉蔵氏は、荒れ果てた東京の街をリアカーを引いて資材を運び、カバン作りを続けたそうです。
その後、戦後の復興に伴う集合住宅の増加、そしてそれに伴う日本の住環境やライフスタイルの変化に適応したカバンを作り続けていた吉蔵氏は、1962年にPORTERを発表します。
日本人ならば誰もが知っているポーターは、こうして産声を上げました。
そしてそれが今に続き、ブランド自体にも60年以上の歴史があるわけです。
ひとつのブランドが60年続いているということ、そしてそれが日本の鞄産業のトップランナーであり続けていることの凄まじさ。
これは本当に言葉では言い表せない次元の凄さだし、人一人の人生の長さではカバーできいないほどの長い時間を集団として成長し続けるということは、もはや異次元。
1994年に吉蔵氏が逝去するまで、彼のスピリットを目の前のカバンと共に働く仲間たちに注ぎ込み続けたからこそ、現在の姿があるのだと思う。
それを象徴するのが、株式会社𠮷田が大切にしている「一針入魂」という言葉。
この言葉は吉蔵氏が掲げたもので、その精神が今もなお受け継がれ続け、カバンそのものの佇まいがキチンとその言葉を体現している。
”日本のクラフトマンシップ”とか”メイドインジャパン”みたいな濫用されてしまった枕詞では表現できない、”ものづくりの美しさ”がめちゃくちゃ強く宿っていると思います。
そしてその「一針入魂」の哲学は、PORTERのみならず、LUGGAGE LABELにも共通しています。
実は今回のイベントでご紹介するLUGGAGE LABEL、ブランドとしては1984年のデビューです。
つまり、40年以上続いているブランド。
僕たちみたいなセレクトショップは、世界中の素晴らしいブランドたちの中でもまだ知名度やキャリアの浅い人達をフックアップする役割を担うのが一般的だと思う。
だから、”日本初上陸”とか”世界⚪︎店舗限定”みたいなものがフィーチャーされやすいと思うし、次の世代を担う新たな旗手が出てくることは必ず必要なこと。
そしてそれを担うお店も絶対的に必要。
その意味においてはLUGGAGE LABELのような超ベテランブランドとの新たに取り組みを行うというのはある種異例なのかもしれないけれど、僕たちはもう一度ここにきちんと目を向けなければいけない時代が来たと思っている。
つまりそれは、新進気鋭のものや希少性の高いものに心惹かれる事実を尊ぶ反面、広く知られたブランドや集団を既知のものとして軽んじてしまうような二項対立に囚われてしまっては、本当に価値あることを見失ってしまうんじゃないかということ。
株式会社𠮷田という日本の鞄産業におけるレジェンドが大切に90年繋いだバトンを次の世代に丁寧に渡していくためには、今日の情報過多の世の中でキャッチーに映る”日本初上陸”に踊らされるんじゃなくて、もう一回ちゃんと身近なところまで浸透した”レジェンド”に目を向けるべきという、ある種の警鐘にも近い。
まぁ、要は、
「みんな𠮷田カバンって知ってるつもりかもしれんけど、もっとヤバいから」
って話。
歴史を知って実物を見てもらったらご理解いただけると確信しているけど、本当にこのチーム、めちゃくちゃカッコいいことをやってる。
いや、やってる、というか、やり続けている。
90年間も。
そして、40年続いたLUGGAGE LABELに、新たな風を吹き込んだ。
言うなれば、”世界から評価される𠮷田カバンが、もう一回日本に向き合った形”が、今回のLUGGAGE LABEL。

柿渋染めと暮染めの”OLDNEW”

本藍染めで、土に還る”TRUE BLUE”

古来から日本人の生活に密接に関わる竹を用いた”FILAMENT”
今回ご紹介するLUGGAGE LABELは、この3シリーズ。
火曜日くらいからそれぞれのシリーズの中のラインナップをご紹介できればと思います。
楽しみにしていてください。