題名の通り、本日はcalmlence。
calmlenceはとても律儀な服だと、僕は思う。
calmlenceをお一人で行なっている熊谷さんには、昨年夏に展示会でお会いしたのみでまだ一度しかお話ししたことはないのですが、熊谷さんのとても柔らかくも実直でストイックな、その人柄そのものがとても洋服に乗り移っていると思います。
そんなcalmlenceの洋服の最大の特徴の一つとも言えるのが、お店への納品前の最後の”仕上げ”として熊谷さん自身の手で行われる、製品洗いの工程。
30年以上のキャリア、洋服をつくる世界で様々なことを経験したからこそ、自分が世の中に出す洋服は全て自分の手を最後に加えたい。
そんな思いで洗いの工程を熊谷さんお一人で行っていると聞きました。
製品洗いという加工は、カジュアルな洋服を取り扱うセレクトショップではしばしば耳にすることがあると思います。
その多くが、”着古したようなユーズド感”や”こなれ感”みたいなものを意図的に演出するための手段として採用されているように感じますが、calmlenceに関しては僕はそうは感じません。
熊谷さんの手を加えると同時に、洋服を”すっぴん”にして、着る人を迎える準備を整えている。
あえて言葉にするならそんなイメージ。
製品洗いって、考え方によってはとても都合の悪い加工だと思います。
生地表面の加工などの”お化粧”が取れてしまうし、
プレスで綺麗にした形も崩れてしまう。
シームにパッカリングが走ったりもする。
せっかく表面を綺麗に整えた洋服も、洗いをかけることでさまざまな部分に変化が生じ、”すっぴん”の状態になるわけです。
なので、その洋服のありのままの姿を曝け出すことになる。
ありのままの生地。
ありのままの形。
ありのままの縫製。
それらが全て曝け出されても、calmlenceの洋服はとても美しい。
いや、曝け出されてこそ美しくなるように、つくられている。
ひとつひとつ熊谷さんの手で洗いをかけることで、
生地の持つ真っ直ぐな力、
フォルムを描くテクニック、
堅牢な縫製、
それらが曝け出されながらも揉みほぐされ、人柄の通り実直さと柔和さが共存し洋服に現れるのだと思います。
そんなcalmlenceから、今日は4型ご紹介します。
calmlence
ATELIER COAT
material _ linen 84%,wool 11%,hemp5%
color _ BLACK
size _ 2
今シーズンの新型、ATELIER COAT。
見た目だけなら、春夏のコートとは思えないほどの重厚感です。
実際はかなり軽やかさのある”春のコート”なのですが、それでいてここまでの重厚感が出せるのはすごいと思います。
素材の通りリネンがベースとなる生地。
ウールヘンプの混紡糸にリネンをグルグルに巻きつけて絣調にした糸と、60番単糸のブラックリネンを交織することで、ランダムな格子状の柄を浮かび上がらせています。
そして、こちらも例に漏れず製品状態でウォッシュ。
何も誤魔化しの効かない状態で、織りのパワーやフォルムのテクニックを存分に感じさせるパワーコート。
ほぼ写ってませんが、裏地はいつものフラワージャガードで、背抜き。
袖裏はレーヨンコットンです。
余白は設けられていますが、いわゆるAラインなシルエットではないです。
ほのかに裾にかけて広がりが生まれるくらい。
春先に着るコートであれば、分量的にはこれくらいがちょうどいいと思います。
洗ってあって生地に動きも出ているのに、このフォルムの精度やばくないですか。
過剰にはならない程度に前に振っているアームや、
胸あたりから次第に体から離れていく分量の広がり方、
エッジのたった裾や袖の端、
などなどなど。
細かな部分の丁寧な集積がcalmlenceをcalmlenceたらしめている。
そして更には重厚感あふれる生地のニュアンス。
異なる3種類の素材を組み合わせながら表現された、自然な凹凸のある絣生地。
長い年月を経たかのようなムードを持ちながらも、ベースとなるリネンにしっかりと光沢があるので、ただ古臭いような生地にはなってない。
このバランスがcalmlence。
後ろからの立ち姿も完璧です。
僕は正直、今までスプリングコートという存在を男性の洋服においてはそんなに重要視したことなかったのですが、これは早めに冬物のジャケットをクローゼットに片付けてでも着る価値があるコートだと思いますよ。
calmlence
HUNTING JACKET
material _ silk44%,wool56%
color _ D.BROWN
size _ 1,2
calmlence
TRIPLE PLEATED WIDE TAPERED
material _ silk44%,wool56%
color _ D.BROWN
size _ 1,2,3
こちらはセットアップで。
ジャケットは、2024SSシーズンからブランドで展開されているHUNTING JACKET。
パンツは、ブランドの代名詞的存在とも言えるでしょう、TRIPLE PLEATED WIDE TAPERED。
生地は、こちらも昨年の春夏シーズンで登場していたのでお持ちいただいている方、ご覧いただいた方もいらっしゃるかと思いますが、
「シルクウールポプリンワッシャー」
と、ブランドや僕らでは呼んでいるものです。
経糸にシルク、緯糸にウールを打ち込んだ平織りなので、「シルクウールポプリン」
さらに製品洗いだけではなく、生地状態でも洗いをかけているので「ワッシャー」
で、「シルクウールポプリンワッシャー」。
経糸のシルク、緯糸のウールともに双糸なのですが、それぞれの色に微差をつけてシャンブレー調にして織り上げているので、2度の洗いによって生地の光沢が落ち着き、仄かな毛羽立ちの中から深みのある色合いが顔を出しました。
ただ、先にお断りしておくと、この素晴らしい生地の鈍い光沢と経糸緯糸の配色の関係上、これから出てくる着用写真の色がかなりわかりにくくなってしまいました...
スミマセン....
先ほどのハンギング状態の写真の色が実物に近いので、脳内で色を置き換えて見てくださいください。笑
ネイビーっぽく写ってますが、本当は黒に近いチャコールブラウンみたいなイメージです。
HUNTING JACKETは襟を倒して着用することもできますが、個人的には上2つのボタンを留めるくらいでバサっと着てる感じがお気に入りです。
ブランドの中でも比較的ゆとりを持たせて設計されているので、それくらいラフに着てあげて、裾がサイドに逃げるようになるのがcalmlenceらしいのではないでしょうか。
こちらもATELIER COATと同様、裏は背抜きでフラワージャガード、袖裏にレーヨンコットンという感じです。
乾いた中に艶っぽさの残る光沢。
シルクもウールも結構細い糸を使っているので、2度の洗いを経てもしっかりと光っていますね。
この生地の持つポテンシャルをダイレクトに体感していただけると思います。
パンツはこんな感じ。
分量の強弱の激しいTRIPLE PLEATED WIDE TAPEREDが、余計なたるみや、不自然な生地の集約もなく、きちんとアウトラインを保っています。
何度も言いますが、洗ってあってこれですからね。
洋服を設計する段階で、このようなフォルムを描くことを見据えた上で、それを完璧にモノにしているcalmlence。
HUNTING JACKETも途轍もなく綺麗な形をしていてかっこいいけど、このパンツはほんとに良い。最高。
お客さんに試着していただいた時に、文句なしにカッコ良すぎて話したいことを忘れて黙り込んでしまったほど。
セットアップ。
もうこれこそ文句なしです。
誰が見ても高級な生地だとわかるけど、服装としてのいやらしさは全く無いし、日常から乖離してない。
今回当店ではHUNTING JACKETはサイズ1とサイズ2の2サイズでの展開としておりますが、大体180cmちょいくらいまでの人ならカバーできると思います。
パンツは3サイズあるので安心してください。
178cm60kgの野口でジャケットパンツ共にサイズ2を着用しています。
パンツはサイズ1でも十分履けるのですが、TRIPLE PLEATED WIDE TAPEREDに関してはサイズ2で着用するのが好きですね。
calmlence
SCARF
material _ silk31%,cupro69%
color _ PINKPT
size _ ONE
今日の最後はスカーフ。
これもブランドでは定番で展開されているもの。
プリントの柄が今シーズンのものとなります。
ブランドで初めてのブラックカラーをベースにしたものもあったのですが、そちらは完売してしまいました....
経糸にシルクを生糸で、緯糸にはキュプラを打ち込んだ生地。
昨シーズンのスカーフはコットンシルクでしたが、今シーズンはシルクキュプラなので、よりキュッと締まると思います。
春夏には適したボリューム感かもしれませんね。
寸法は65cm×65cm。
抽象的な柄なので、calmlenceの重みのある洋服たちの中でも変に浮いてしまうことはないと思います。
ということで本日は以上となります。
あと、calmlenceのオンラインストアならびに通信販売に関しましては1月11日(土)から開始となります。
それまでは店頭のみでの販売となりますが、何卒ご了承ください。
また明後日くらいにcalmlenceの別のラインナップをご紹介できたらと思います。
”唯一無二の花柄”と”とびっきりのボーダー”があるので楽しみにしていてください。