こんにちは。
CASANOVA&COの野口です。
早いものでもう5月も最終盤。
だんだんと夏の気配を感じる気温の日も増えてきました。
CASANOVA&COの店頭もだいぶ夏らしく、半袖やショーツなどが充実してきましたが、本日は夏の足元、サンダルをご紹介させてください。
今シーズンの、否、今まで僕が出会ったサンダル史上で、最も履物としての機能性とクラフトマンシップを両立したサンダルと言っても過言ではないでしょう。
PETROSOLAUM
cage sandal
material _ Horse membrane
color _ black
size _ 39,40,41,42
※サイズ40は完売いたしました
こちらのサンダル。
僕は、サンダルというカテゴリにおいて、夏場に求める軽やかさと、履物としてのムードの重厚感や剛健さにおいては基本的にトレードオフだと思っている。
どちらかを求めれば、どちらかを失う。
もしくは、”二兎を追うものは一兎も得ず”か。
でも、PETROSOLAUM、二兎得ちゃった。
それを可能にしたインスピレーションが、タイトルにもある”八つ目編み”。
足の甲の部分のメッシュ状の箇所の編み方が、通称”八つ目編み”。
これは、大分県の別府市周辺で古くから受け継がれてきた竹細工の編組技術のひとつ。
その名称が表す通り、タテ/ヨコ/ナナメに交差して生まれる編み目の穴が八角形になる編み方の事を指します。
経済産業省から伝統的工芸品にも指定されている”別府竹細工”は、竹籠など生活の道具を自作する文化から発展してきましたが、それをレザーで、しかも靴作りに取り入れたPETROSOLAUM。
そのアプローチの素晴らしさをおかずに白米が食べれそうなほど感動しましたが、それを履き物として昇華させる荻野さんの思考と技術、そして最終的な製品への落とし込み方のバランス感覚が本当にすごい。
”八つ目編み”部分をアップで見てみると、八角形状にレザーがくり抜かれて型押しされているのではなく、細いレザーテープを使って”別府竹細工”と同じようにきちんと編み込まれている。
さらに、このレザーテープは、ただの細切りレザーではありません。
写真、超見づらくてスミマセン。。。
足に触れるサンダルの内側から撮影したもの。
それぞれのレザーテープの幅の中央に線が見えると思いますが、この細幅のレザーテープは2箇所で折り畳まれています。
さらに、製品の状態では見ることはできませんが、1本1本のレザーテープの中には、同じく細切りにされた芯材が入っているとのこと。
これによって、履き込んだ時に八つ目編み部分のレザーテープが伸びてビロンビロンに型崩れしてしまうことを防いでいるわけです。
編み上げた際のメッシュ状の編み目の見え方の美しさと、履物になった時の堅牢性を考え、革の厚みや芯材の使い方をコントロールする。
出来上がったcage sandalの見た目には凛々しさを感じますが、このバランスに至るまでに様々な試行錯誤や苦慮があったであろうことは想像に難くありません。
もう一度先ほどの超見づらい写真を見てください。
5mm幅で統一された1本1本のレザーテープ。
三つ折りとはいえ、断ち切られたレザーの両端は裏側で重なることなく、ピッタリと断面と断面が合わさり芯材を包み込んでいます。
重なりがないことでレザーテープの厚みが抑えられ、八つ目編みの編み目がキレイに見えるだけでなく、着用時に足の甲にレザーの段差が当たる異物感を防ぎます。
ただ、裏側に重なりを生まずに芯材を包んだまっすぐなレザーテープを作るということは、それだけ裁断や芯材を包む作業に1mmの誤差すら許されなくなるということでもあります。
このレザーテープをひとつひとつ作る作業を想像するだけでも...
”八つ目”の箇所以外には、ほとんど隙間なく丁寧に複雑に編み込まれたレザー。
この八つ目編み部分は、ぐるりと足を囲い込むパーツに挟み込まれるようにして縫合されています。
ただ、この作業も至難の業。
レザーテープを編んだシート状の八つ目編みが出来上がるわけですが、もちろんその後には甲の部分のサイズに合わせて裁断する工程が必要。
しかしながら、編み込んだだけのレザーをそのまま裁断すると、面積が小さいこともあり編み込んだ部分がほぐれてしまい、せっかくの美しい八つ目編みが台無しに。
そのため、裁断の工程に移る前に編みの端をほぐれてこないように処理してから、ひとつひとつ裁断を行う必要がある。
ただ、そんなとんでもなく効率の悪いことをやってくれる工場などあるわけもなく、必然的にPETROSOLAUMのアトリエで自分たちで裁断を行うことに。
以前ご紹介したクロコダイルのチロリアンなど、自らの手で裁断や縫製などの工程を行っていることがしばしばあるPETROSOLAUMですが、自分たちでそれを行なっていることの希少性みたいなことが言いたいのではなく、PETROSOLAUMというブランドが追求するクオリティに対して妥協のないプロセスを選択して行った時に、荻野さん自身がその工程を担うことで求めるクオリティを担保できるという選択肢を持っていることは、”デザイナー”という立場においてとても素晴らしいことなのではないでしょうか。
つまり、追い詰められた時に”己の手”で解決できる技術や経験を持っているということ。
僕自身も斯く在れるようにせねばと、背筋が伸びるような思いです。
、、、と八つ目編みの部分だけでとても長く書いてしまいましたが、それだけ日本の伝統的な技法を美しく取り入れるための試行錯誤が詰まったものなのね。
ほんで、ここからは履物としてのつくりに関して。
構造としては、バックストラップ付きのサンダル。
バックストラップも裏から革が重ねられ、実用の中での堅牢性が考えられています。
とはいえ、あくまでレザーであり負荷がかかる部分ですので、着用に応じて伸びてくることになります。
その点も考慮してストラップのホールは3つ。
イメージ的には、試着時に真ん中のホールでピッタリであれば、履き込んでストラップが伸びてきたら3番目のホールで留めてもらえればいいフィット感になると思います。
大きめのギボシ。
歩いてる最中に外れたりするのは煩わしいですからね。
安心感があると思います。
バックストラップも挟み込まれるようにして縫合されているので、足に感じる異物感もないと思います。
また、かまぼこ状のステッチで縫われているのですが、バックストラップに問題が生じた時には交換が可能なつくりになっています。
アウトソールはフラットで、ヒールのみラバー。
サイドから見ると、ヒール部分にかけて3枚分の積み上げがあるのがわかります。
ヒール部分はクッションが入っているので、従来のPETROSOLAUMのサンダルの中でも歩行性は非常に高いのではないでしょうか。
編み込まれた八つ目編み部分も、きちんと足の甲に合わせて反り返るような曲線を描いています。
靴としての顔となる部分。
ただただレザーを編んだものをアッパーにくっつけました、ってレベルじゃなく、きちんと靴としてのつくり込みの中に落とし込まれていることを感じます。
僕自身は今回のPETROSOLAUM然り、先日インスタグラムでご紹介した山内の名古屋黒紋付染ショーツ然り、日本の伝統あるクラフトマンシップを取り入れた技法を、人の手垢を感じさせないような精度と凛々しさで製品に仕上げているものがとても好き。
その技法の背景には、確かにかつての人間の営みやそれにより醸成された文化があるのですが、それが見た目の主張に色濃く反映されているのではなく、きちんとそのものがそのものたらしめる要素として内包されている状態が美しいと思う。
内包され表面からは見えずらいそのような主張に意識を向けることは、ものづくりを通して自分自身が”文化”や”歴史”といった過去に触れるような体験を生み、ちょびっとだけ豊かさをもたらしてくれる。
と僕は信じています。
、、、まぁとにかくホントに素晴らしいサンダルだってことです。
夏の履物に困っている方は是非見てみてください。