こんにちは。
CASANOVA&COの野口です。
2025SSシーズンは佳境も佳境。
クライマックスを迎え、納品を待つものは残り数品番となりました。
そんなタイミングということもあり、いわゆる年2回のコレクションの流れとは異なる時間軸で活動をする方をご紹介させてください。
個人的にもとっても楽しみにしていたイベント。
FUKUBORI
ORDER EXHIBITION
2025.06.21 (SAT) >>> 2025.06.29 (SUN)
その活動のインパクトや拠点から、当店をご愛顧いただいている方ではご存知の方もいらっしゃるかと思います。
名は”河原真輔 (カワハラシンスケ)”。
職業は、パタンナー。
企業やブランドからの依頼を受けて型紙=パターンを引くコミッションワークを主とする、言わば「型紙の専門家」。
河原さんの言葉をそのまま借りると、分業制によってつくられる洋服の数多あるプロセスにおいて、自分はあくまでパターンの専門家であり、”デザイン”の領域は専門外。とのこと。
そのように分業制の中で自分自身の立ち位置を俯瞰する河原さん。
そんな彼のライフワークとも言える活動が、”服ヲ掘ル”と名付けられた研究活動。
そして、それに基づき製品化したものが”FUKUBORI”というブランド。
今回、CASANOVA&COでは、”服ヲ掘ル”の活動内容の展示と”FUKUBORI”のオーダーエキシビジョンを開催いたします。
遡ること数ヶ月前、僕たちと繋がりのある方にご協力いただき、河原さんのアトリエを訪れました。
場所は、岡山県倉敷市の児島。
僕の自宅からドアtoドアで45分。
出張というより、もはや遠足の距離感。笑
まさに遠足のように期待に心を高鳴らせながら、河原さんのアトリエへ。
まず最初に見たのが、”服ヲ掘ル”の活動内容とその成果物。
この”服ヲ掘ル”の活動内容に関しては、明日改めてご紹介しようと思いますが、とても簡潔に言うと、
「ヴィンテージのデニムやミリタリーウェアなどの洋服を分解して、さまざまな考察を行う」
というもの。
しかしその作業は、ただ単に洋服を分解して形を分析するものではなく、洋服の縫い目の奥に閉じ込められた時間や人の想いを丁寧に丁寧に取り出していくというもの。
型紙の専門家としての技術的な視点だけにとどまらず、その1着がつくられた時の時代背景や縫い手の心情といった情緒的な点に至るまでを、1針1針を解いていく中で読み取り、記録していく。
技術や経験で習得できるものではない、縫い目の奥にあるものに想いを巡らせるチカラ。
これこそ河原さんの凄み。
分解する作業自体は真似することができても、この部分は真似することも誰かに伝えることもできないと思います。
だからこそ、その痕跡を”FUKUBORI”という洋服にして、人に伝達できるように形あるものにしているのだと思う。
つまり、破壊する活動の工程の中で1針1針から時代の流れや人の心の動きを読み取り、新たに人に伝達していける手段として別の価値に置き換えている、ということ。
ただ、冷静に考えてみれば、1着ウン十万円という市場価格のヴィンテージウェアを分解することは、とても覚悟が必要なことだと思います。
それはコスト的な面だけではなく、市場=社会において価値があると評価されている洋服を分解するということはその価値を壊すということに等しいことだから。
なので、最初は河原さんも色々な人に怒られたそう。笑
ただ、その活動の強度が上がることで、分解から生まれる新たな価値が人に伝わり始めた。
時の流れが止まり、未来ではなく過去にだけ接続することのできる洋服となったヴィンテージウェアを丁寧に分解し、それぞれの要素をきちんと整理してゼンマイを巻き直す行為が”服ヲ掘ル”という活動の内容。
詳しくは、また明日ご紹介します。
そして、そこから生まれる未来と接続できる新たな価値の一つとして、現代に生きる我々が着用できるものとして出力されたものが”FUKUBORI”。
その内容は、1針1針から読み取った情報を元に、”生成り”だけで洋服をつくるというもの。
ただし、そこに河原さんのデザインは入らない。
ベースとなるヴィンテージウェアに対して恣意的な改良を行わず、忠実に則った洋服。
行うのは洋服としての完成度を高めるための必要最低限の編集だけ。
現代においては必要のないディテールや、表からは見えない内側の縫製仕様まで、全てを踏襲する。
究極に原理主義的な洋服づくりなので、モダンで美しいパターンの洋服ではありません。
ですが、目を見張るほど美しく、確実な意識と理解を持って縫い上げられるFUKUBORIの縫製は、ベースとなる洋服からの逸脱を許さない原理主義的な姿勢の中では、ある意味異質であり、FUKUBORIのもつ最大の魅力だと思います。
実物は明後日くらいにはご紹介できると思いますが、すごいですよ。
パターンや仕様に対する縫製のバランスはぜひ注目してみてください。
...ということで本日はここまで。
また明日、”服ヲ掘ル”について詳しくご紹介させてください。