ここに来て、やってきた超大物。
2020SSシーズンがスタートしていますが、ここまでのものになるともうこれが欲しいか欲しくないか、洋服好きとして着たいのかどうなのかという問題になってくるんじゃないかな。
"山内" ついこの間、シルクのシャツを特別につくってもらったものを販売したのですが、初日の1月2日で残りサイズ2が一着となり、翌日には完売。
ありがたいことに、こちらの予想を遥かに上回りました。
でも、まああの生地をあのつくりでやってますからね。 しかも価格もすごく頑張ったんですよ。
でも、もちろん、生地や仕様は最初の段階から簡素化することなく、あのプライスを実現できたので、ご購入頂いた方は自身の着方でヘビーユースしてもらえると嬉しいです。
ちなみに、そのシャツは2020SSシーズンって感じでつくったのですが、今日のトレンチコートは枠組みとしては2019-20AWシーズン。
もう時系列がむちゃくちゃになってますね。 まあ、どれだけつくるのが困難なのかってことが分かってもらえると思います。
ただでさえ、超複雑な山内の洋服ですが、これはその先の洋服のものづくりの高くそびえたつハードルを凌駕してる。 これだけのコートは手に取ったことはおろか、目にしたことがないと思います。 日本の最高レベルの技術が注ぎ込まれたトレンチコート。
3way トレンチコートという名前がついてます。 何wayとかっていうとどこかを取り外せたり、形を変えられたりってものがほとんどだと思うのですが、これに関しては全く別物。
一着+一着で一着になってる。 つまりは二着で一着になってるってことです。 しかも、その一着ずつが悶絶モノ。
明らかなる高級感と圧倒的な質実剛健さが漂ってるコートが二着。 それで構成されるスペシャルトレンチコートです。
まずは、それぞれを紹介しますね。
これは通称「ライナー」。
まあ、これがライナーなら世の中に存在するライナーは一体何なんだクオリティ。 生地は、ウール100%です。
山内が数年前からコレクションで展開するノーミュールシングウールという、素晴らしい思想によって誕生したウールです。
簡単に言うと、羊に対して一切の虐待行為を行っていないウールの事。
それのSUPER 120'S。 繊維がもの凄い細いウールです。
更に更に、そのウールの繊維を糸に設計する段階から考え抜き、生地に織り上げるときにも特別な技術を取り入れた、いわばカシミアタッチのウール。 思わず自らの手を疑うほどの滑らかさと、二度見するほどの光沢が美しい生地ですね。 それをコートということで重厚に仕上げた生地なんですよ。
簡単に想像してもらうと、アウターで使われる目の詰まったメルトンを人生で体験したことのないレベルで柔らかくして、滑らかにして、チクチク感をなくして、軽くして、宇宙レベルで自然な光沢を出した感じ。
それを山内の仕立てでつくりあげたライナートレンチコートですね。
秋に着るアウターとしては充分な保温性を持っているし、なによりアウターなのにステッチワークはまるで上質なドレスシャツ。 厳密に言うとドレスシャツと比べて縫い糸の番手は低いのでステッチが力強く見えるのですが、ステッチの一本一本が輝いてる。
これを街で着ていたら、誰が見ても、果てしなく上質な仕立てのコート着てる人って認識してもらえると思います。 それに加わるのがこのカシミアタッチのウールの優美さ。 動く度に顕著に現れる重厚感を孕んだドレープ。 まあ、実際に手にして感銘を受けてください。
こちらは、通称アウターです。
さっきとほとんど見た目変わりません。
この生地は、コットン65%、リネン35%です。遠州産ですね。
コットンとリネンって言われても、このコットンリネンの生地は誰もが想像できないと思います。
というのも、これは超強撚。 日本でできる強撚の最高だそうです。
今回は「強撚」だとか「撚り(より)」ということについての解説は省きます。 通常、強撚というのは大体1200回くらいの撚りで強撚と言われる。
これは、なんと2000回。
圧倒的な数値をたたき出しましたね。
しかも、こういったコットンとかリネンとか大体の生地って製織後に表面加工をしたりするんだけど、これはほとんど加工してないんだそうです。 それはやはりこれだけの"超強撚"だから成せる技。
僕も初めてこのコート見たときに山内さんに「コットン・リネンです」って言われたけど、「これコットンとリネンですか??」って同じことリピートしちゃいましたもん。 想像不可能な生地です。
もちろん、超強撚だからハリや表面の滑らかさはすんごいです。 あと、生地の跳ね返りが凄まじいの。 リネンってすぐに皺になるじゃないですか。 繊維の特性上、どうしても仕方のないことなんですが、これはリネンあるあるのシワを跳ね除ける。 弾力性が経験値を超えてるっていうか。 驚き。
もちろん、今回もマイクロスコープでレンズを覗いちゃって、皆様にお伝えしようと思っていたのですが、見た瞬間に気持ちの高ぶりがあったので写真を撮るのを忘れちゃいましたね。 仕事を忘れさせる生地と名付けようかな。
それでね、この3way トレンチコートはこの二着から形成されています。
衿、袖口、見返し、この3つの部分に付け外し用のボタンが備わってる。 それも手付けされた本水牛のボタンが堂々と鎮座してます。
ちなみにこれはアウターのほうの内部なんですが、背抜き仕様です。
スプリングコートとして着てもらえるように。
前身頃の見返しを利用した内ポッケが左右に2つずつ。 ファスナーはもちろんエクセラ。
後身頃には、トレンチコートならではのウエストベルトが付属するのですが、ウルトラ複雑構造になっています。
まず、ウエストベルトは、コットンリネン超強撚生地のベルトが一本。
ノーミュールシングウール生地のベルトが一本。
二本一緒に付けてもオーケーだし、片方だけでもオーケー。
それぞれにバックルは付きません。 何故なら、山内さんがバックルが好きじゃないからだそうです。
そして、トレンチコートでよくあるベルトの紛失をなくすために、ベルトが落ちないようにベルトのベルトが施されています。 ボタンでそれは着脱可能。
そして、ベルトループ。
わかりますかね?? 多段階方式のループです。
このベルトループは間違いなく世界一丁寧なループだと思う。
ベルトをしてしまえば一切見えないところだけど、見えないところも細かく丁寧につくる。 「つくり込まれた」洋服というワードが相応しい部分ですよ。
これによって、ベルトを紛失しないためのベルトのベルトを通す箇所と、ベルトを通す箇所とが分かれています。
実際に店頭で説明させて頂きますね。
これはライナーのみ。
それなりの厚みとこの洋服が持つオーラは見てもらえると思う。 最上質ウールの深い漆黒の中から溢れ出る光沢。 豊かなドレープとその陰影。 ただ、トレンチコートは元はミリタリー。
ただの上物感だけではなく、そこに感じるのは男臭さ。 この生地の特性が活きるように考え抜かれたパターンで一切のフェミニン感は皆無。 男の洋服をつくる山内だからこその骨格の太い洋服。
こちらはアウターのみでの着用。
やはりウールと比べると軽さが出ますね。見た目に。
ただこれが天然繊維でほとんどの加工をしていないものだとは到底思えない。 最高品質の繊維の良さを存分に出しているからかな。 軽さはあるけど、安いペラ感は微塵もなし。 ハリが強い分、形状がすごく立体的に出てくれます。 肩にしっかり乗ってくれるから、程よく重みを感じるかな。着心地は。
そしてこれが完成形です。
ここまでくると完全に冬に対応してくれる。 もうこれ着て、寒いとかないね。
まあ、高機能ウェアってわけじゃないのですが、しっかりと保温してくれる。 あとしっかりと肩に重厚さを感じるようにつくられています。 でも、肩が凝るという感じではないかな。 人間の体に心地よく乗ってくれる部分と沿ってくれる部分とがありますね。
全部締めも良いですよ。 土臭さが増しますけどね。こういうの好きな人いるんじゃないかな。
このコートは近年の当店の取り扱いでも一線を超えました。 それはものづくりのレベルの面でも価格の面でも。
買ってくれる人がいるかいないかわからない。 しかもこの一月の入荷だし。 でも、これは実際に目にしてもらいたいと思ったし、きちんと紹介すべきだと思った。 だから取り扱いをしました。
ちなみにサイズは3です。 よく、どこどこのブランドが値段が上がった、というような話を聞くことがあります。 それはもしかしたら、クオリティが上がったのではなく、もしかしたらブランディングの一つとして価格が上がったっていうこともあるかもしれない。
つまりは、モノは変わらず価格が上がるってことですね。
ただ、このコートで言うと、現時点で僕の人生で経験したレベルのナンバー2。
ものづくりのクオリティ。
洋服でここまでのことができるんだって知ることができたコート。 去年までは16万円のアウターが山内の最も高額なものでしたが、今年は値段全然違います。 でもこのプライスは、実物を手にしてもらえると、これだけの洋服づくりが注ぎ込まれているからなんだってすぐに判断してもらえると思います。
ものすごいですよ。これ。
ちなみに、ナンバー1は近日入荷します。
更に遅れて。
山内より。