先日、ヤクとウールの特別な生地が入手でき、それで洋服をつくるという話をしましたが、もう既に何となく察して頂いている方もいるようです。
その生地を使って特別な洋服をつくることを依頼したのは、山内。
素晴らしい洋服ができました。
僕自身、洋服人生でこれまでで一番の驚きだったと思います。
洋服として完成したものを見たときには。
洋服は、 ・見た目 ・クオリティ ・着心地 この3つの要素から、そのものの良さが決まるんじゃないかと思います。
大まかで簡潔に言うと。
その三位一体で考えたとき、この洋服は現時点でのNo.1と言える。
製作したのは、トレンチコート・テーラードジャケット・シームレスパンツ、この3つです。
どれもがそれぞれにこのヤクウールの生地の特性をとにかく活かすことができ、普遍的なものの枠からはみ出ないのは大前提として、山内とつくり上げたのがとても意味あることとなったと思っています。
そして、発売はもうすぐ。
21日(土)より発売します。
その販売方法についてはまた追ってお話しさせて頂きます。
まあ、店頭ではこれまで通りで何ら変わらないですが。
山内 for CASANOVA&Co.
ヤクウール/テーラードジャケット
face material _ 18.5μ nondyed yak 50%,SUPER 120s wool 50%
size _ 2,3,4,5
今シーズン山内のコレクションでも展開されているテーラードジャケットをベースにこのヤクウールを生地としたジャケットです。
原型は同じものを使用していますが、ブランドのこれまでのテーラードジャケットの中でも最もきっちりつくってあるものだったので、原型はそのままのもので製作をお願いしました。
山内で過去に展開をされてきたジャケットは特殊な生地のものなどが多かったのですが、こちらはいわゆる正統派というかこれだけの生地を使用しているので、芯地をしっかりと施しています。
前身頃には全て芯地が据えられ、ショルダーラインや、後身頃の肩に至るまできちんと芯地を入れ込ませています。
当店ではこれまでこのようなジャケットはあまり展開してきませんでしたが、やはり年々歳を重ねるごとに不思議と求め始める自分がいました。
だから、数年前から常に考えていたのですが、このタイミングで僕のこの気持ちを全部ぶつけられる山内のテーラードジャケットです。
山内は、山内さんが自分でも言っていますので、テーラードジャケットではありますが、テーラーさんがつくったものとはまた少し違っています。
それは少しこのブログでお話をできればと思っていますが、簡単にテーラーの仕立てというワードが蔓延しているアパレル市場だからこそ、そことは住み分けをしたいと思います。
このジャケット、特筆すべき点は、「肩」と「ステッチ」。
他にもたくさんあるのですが、特に、特に、特筆すべきところとして、明確に他のテーラードジャケットと大きく違う点を説明させてください。
まずは、「肩」。
そもそもこれまであまりテーラードジャケットというものをあまり僕自身着てこなかったのですが、それは年齢も含め。
あとは、そのつくりの性質上、どうしても浮いてしまうことに違和感がありました。日常で頻繁に冠婚葬祭があるわけじゃないし。
それはなぜかというと、肩パッドが強すぎるということ。
しかしながら、芯地のほとんどないような薄すぎて軽すぎるテーラードスタイルのジャケットはどうしても苦手でそれはそれで、着たいという気持ちが掻き立てられなかった。
ただ、このジャケットは今までとは違った。
理由が先ほどの肩。
「似せ割り」という初めて聞いた手法によりつくられたショルダーディテール。
写真を見てもらえたらある程度分かると思いますが、テーラードジャケット特有のポコッと浮かび上がった肩ではないんですよ。これ。
それが「似せ割り」の賜物。
今から見えない内側の話をさせて頂きます。
通常のジャケットはその性質上、縫い代が袖側の片方に倒されます。
これを片倒しと言います。
パッドを肩の身頃部分に配置し、その上で、更に縫い代を袖側に片倒し。
これにより、パッドで浮いている分量に加え、袖が丸く浮きます。
これが通常のテーラードジャケット。
で、パッドもなく薄いテーラードスタイルのジャケットは薄い芯地のみが肩の身頃に配置or何も入れていないことがある。
それはそれで良いんですが、、、 今回のこのジャケットはとても珍しい仕様です。
「似せ割り」。
先ほど言った片倒しの縫い代を袖側にしているのですが、それだけではなく、同じ分量の生地(表地のヤクウールのもの)を身頃側にも入れ込んでいます。
似せ割り=割り縫いに似せた仕様です。
割り縫いとは、例えばセルヴィッチデニムのアウトサイドの内側の仕様や、例えば当店で取り扱いをするNEATのトラウザーの両端の内側の縫い代が割り縫いです。
つまりは同じ分量の縫い代が内側に潜んでいるということ。
この「似せ割り」は通常のメンズのテーラードジャケットはもちろん、ブルゾンなどの洋服でもほとんど行われる仕様ではなく、とても珍しい仕様にしているとのことです。
それによって、きちんと立体的で男らしく綺麗な肩のラインは生まれるのですが、行き過ぎることがありません。
カジュアルにも着ることはできるし、少しきちんとしたシーンでも問題なく着用できるジャケットに仕上がっています。
もちろん、これだけ良い生地ですからね。
着るほどに所有者の体に添って、しっかりと馴染むように変化してくれます。
そして、次はステッチ。
テーラードジャケットをつくる際に山内さんは、どう普遍的なジャケットに山内らしさを込めるのかを考えたそうです。
山内は、縫製のクオリティが非常に特徴的なブランドでもあり、山内さん自身もステッチワークをとにかく追求する方です。
本来、ステッチはカジュアルなものであればあるほど、表に露出します。
カジュアルウェアの代名詞のカバーオールやジーパンなどを想像してもらえたら何となくイメージできるでしょうか。
反対に、フォーマルウェア(ドレスウェア)であればあるほど、ステッチは隠されます。一般的には。
つまりテーラードジャケットの枠組みで考えると、本来は、後者にあたる服種ですよね。
元来のテーラードジャケットはあまりステッチが露出しないのがスタンダード。
山内が目指したものは、そのスタンダードな姿からは大きく逸れることがない中で、山内らしさを込めること。
また、山内の洋服はシャツなどの衿が付属するものには硬めの芯地を差し込み、その上からコバステッチをかけて洋服のエッジを際立たせるという仕様をとることが特徴的です。
そして、このジャケットにも生地の端から1.5mmの箇所に非常に細かなコバステッチが施されています。
それは通常のテーラードジャケットではあまりステッチを見ない箇所、ラペル、身頃端、裾、袖口その全てに均整のとれた非常に細かいステッチワークが存在します。
この山内エッセンスが加わることで見た目が全然違っています。
決して過剰ではないのですが、美しくもあり力強いテーラードジャケットが生み出されてる。
このジャケット、表地は皆様周知の通り、ヤクとウールです。
対して裏地。
山内さん、特別なものを用意してくれました。
ブランドでいつか使いたいと思っていた高級裏地を備えています。
ウールとキュプラの裏地です。 これもとても珍しい。
僕自身もたくさんの洋服を目にするのですが、滅多にお目見えしないウールとキュプラの裏地。
これさえも途轍もない高級感とインナーに優しく寄り添うタッチ。
カラーリングは見ての通り、ハイレベルなマッチング。
ちなみにサイドベンツ。
角の立った額縁仕立て。とコバステッチ。と裏地の手まつり。
先ほどから言ってるコバステッチについてですが、この写真を見てもらえると分かる通り、裏側まで狂いなく真っ直ぐ縫製されています。
何故、山内さんにテーラードジャケットにコバステッチが採用されていないのかを聞いたのですが、先ほどのドレスウェアだからということ以外には、裏がステッチが落ちてしまいやすいからだということが言われました。
実物を見てもらえれば分かるのですが、表地って単純に一枚だけで表地してるんじゃないんですよね。
二枚の生地が重なって表になってる。
ラペルとか。見返しとかも。
裏側にくる箇所がステッチが落ちてしまったら台無しですからね。 それで、ほとんど目にしないんだろうということです。
ボタンは、今回表地に合わせて少し濃いトーンの本水牛のボタンを準備してもらいました。
もちろん天然物なので一つ一つ柄が異なります。
そして、袖口は本切羽の3つボタン仕様です。
当然のラインでしょう。
サイズは、ブランドの展開のフルラインナップで2〜5まで超絶限定着数で展開します。
山内 for CASANOVA&Co.
ヤクウール/トレンチコート
face material _ 18.5μ nondyed yak 50%,SUPER 120s wool 50%
size _ 2,3,4
こちらはトレンチコートです。
このコートに関しては、使用しているヤクウールの生地の特性を最大限活かせるように設定しています。
ジャケットは総裏地ですが、こちらのコートは半裏の設定です。
そして、芯地も衿など必要箇所にはきちんと施してあるのですが、出来る限り、着用時のドレープを生み出せるように表地一枚のみで仕上げられるところは表地のみで構成されています。
そして、このコートは芯地の入れ方こそジャケットと比べライトなのですが、ステッチワークがエゲつない。
ジャケット同様、コバステッチは健在なのですが、 コバ+7mmのダブルステッチがふんだんに搭載されています。
超上質生地に対しての山内クオリティの神業縫製のコントラストをお楽しみください。
背中や肩にいたっては4本の細かなステッチが施されている超絶仕様。
このピッチで常に狂いなく平行に縫い上げる技術は素晴らしいと思います。
また、後日それぞれの洋服を縫製された縫製者さんの名前は紹介いたします。
コートは半裏仕様です。
非常に上質なヤクウールの膨らみのあるドレープと山内のステッチワークとのコントラストを満喫してください。
やはり着丈の長いコートは圧倒感ありますよ。
この生地分量ですからね。
コートという洋服の特性を考え、この生地の特性を理解し、見事な完成度で出来上がったと思います。
このコートに関しては、元来のジャケットの上から羽織る洋服という性質は守られ、ゆとりのあるサイズです。
身幅やアームホールなど。
思いっ切り、バサッと纏ってもらえたら、 そこにあるのは絶景ですよ。
山内 for CASANOVA&Co.
ヤクウール/サイドシームレスパンツ
face material _ 18.5μ nondyed yak 50%,SUPER 120s wool 50%
size _ 2,3,4
最後はこれ。 パンツ。
このパンツに関しては形からの完全オリジナル。
まあ、ベースは存在するんですけどね。
山内さんに今回のために一からパターンをつくってもらった完全なるオリジナルです。
山内のブランドコレクションに詳しい方にはすぐに察してもらえるかもしれませんが、コレクションであるウールのシームレスパンツが着想源です。
でも、今回はジャケットもつくってるので、極上セットアップを日本中の僅か一握りの方に楽しんでもらいたいと思っています。
そのジャケットとの組下になったら。ということも想定していますので、コレクションにあるパンツに前開きとベルトループを加えてもらいました。
でも、それが言うのは簡単。
形にするのは大変で、山内さんに頑張ってもらいました。
そしたら想定以上のもの、降臨。
お喜びください。
このパンツの特徴としては、生地の特性を余すことなく最大に体感してもらえるようにしています。
シームをできる限り排除。 裏地なし。
この2つが特筆ポイント。
先ほどのジャケットやコートには山内の代名詞であるステッチワークというものを最大に可視化しています。
しかしながら、ただ見えるだけが全てじゃない。
洋服は三位一体です。
引き算という美の世界もある。
だから、縫製箇所を極力減らし、縫い代が存在することによる硬さを極限に排除。
それにより生まれたのは柔らかなドレープ。
特にアウトサイドのシームが存在しないので、着用時のサイドビューの景観はiphoneの壁紙に設定してしまっても良いかもしれません。
これね。 穿いたらご理解頂けると思います。
ウエストにはゴムが配置されていますが、ジャケット着用時にはゴムのギャザーは見えにくいようにしています。
ベルトもできるようにループも配備。
天狗やエクセラ、ダークブラウンの本水牛も鎮座。
このパンツに関しては、僕のこれまでの洋服人生で最高の履き心地を実現しました。
まず、穿かずに、握って触ってください。
その時点で違うから。
皆様のパンツの概念を打ち破ります。
このパンツを穿いて極上の肌へのタッチを感じない人はいません。
過去に梳毛のカシミヤのトラウザーを穿いたことがあるんですが、それを超えました。
これが、葛利毛織さんの生地の力です。
この生地の素晴らしさをもっとも体感できるのがこのパンツ。
そのため、悩みに悩んで、裏地は無しの仕様にしています。
山内さんと考えて、意を決して裏地なしの決断をしましたが、それにより最高の肌当たりを獲得しました。
是非穿いてみてください。
形は裾に向かって細くなる綺麗なアウトライン。
外側のシームがなく、一枚の生地で筒をつくっているのでとても複雑なパターン操作の上、成り立っているテーパードスタイルです。
もう間もなくです。 21日(土)より。