3人の縫製者

 

 

 

 

 

 

 

これまでお知らせしてきた、”山内×CASANOVA&CO×葛利毛織工業”の洋服。

 

 

 

今回、世界一のモヘアと言われるような”フェレイラ・モヘア”というワールドクラスをも飛び越えたウルトラ原料を、服地のヘビーウェイトである”目付け581g”と超ふんだんに使ってるということもあり、プライスも超ド級のもの。

 

 

 

 

もしかしたら、既成服でこのような価格のものを実際に目にすることが初めてという方もいるかもしれません。

 

 

 

それくらい。

 

 

 

まあ、普通に考えて”別注商品”という枠組みの中では、僕はここまでのプライスのものを見たことがないかも。笑

 

 

 

 

ただ、僕は、決して”価格の高いもの”を販売していきたいのではないんです。

 

 

 

 

既に、今回のブログでも書いたのですが、ブランドが通常通り生み出すコレクション。

 

 

 

 

それ以外に、”わざわざ生み出すべき理由がある洋服”というものをつくりたかった。

 

 

 

ただ、それは自分の中で、”目的ではなく手段”です。

 

 

 

今回、山内の山内さんとの洋服をつくるという”手段”で、現時点での自分の洋服人生の中で明確に掲げる”最終目標”に少しだけ近付いていきたい。 それが今回の”目的”。

 

 

 

 

でも、その僕の中の”最終目標”は、すぐに簡単に実現するようなことではなくて、途轍もなく時間がかかるし、果たして自分の人生の時間の中でそれが達成できるのか、全く分からない。

 

 

 

 

 

だけど、そこに向かってやり続けていくしかない。

 

 

 

 

 

そして、その”最終目標”に少しでも近付くために、何年も前から山内の山内さんと話をし続けていた”フェレイラ・モヘア”に今回取り組んだ。

 

 

 

 

今回の”目的”。

 

 

 

 

これはいくつかあります。もしかしたら、このようなことを書くことによって、いろんな意見を持つ方もいるとは思うけど、僕は今までこのブログでいろんなことを書いてきた。

 

 

 

 

これは、仕事ってなんでもそんなものだとは思うけど、実は、それなりに辛い作業でもあり、結構自分の精神が削られてしまうようなことだってあるんですよ。

 

 

 

 

ただ、僕は洋服を通した”伝え手”として、今は自分が信じる方向に進もうと思っています。

 

 

 

 

話が少し逸れたけど、今回の”目的”。

 

 

 

 

改めて箇条書きで書き出したら、18個あったので、主題を書きます。

 

 

 

 

 

・自分が心の底から震えた繊維”フェレイラ・モヘア”を自らの手でお客様にお伝えしたい

 

 

・日頃、コレクションを取り扱うだけでは伝えることが難しい葛利毛織さんをお伝えしたい

 

 

・山内の”コレクション”では表現できない、山内さんのエゲツない力を知ってもらいたい

 

 

・縫製という仕事についてフォーカスしたい ・この洋服で、本当の意味で感動して頂きたい

 

 

以上、この5つのことが今回の主目的です。 だから、今日は、”縫製者さん”のことについて書きます。

 

 

 

 

 

 

先日、お伝えした通り、山内さんにつくってもらった今回の洋服は、3種類。

 

 

 

 

ジャケット、トラウザー、コート。

 

 

 

 

その3つの洋服を4人の縫製者の方に縫ってもらいました。

 

 

 

 

ジャケットは、 “岡本 尚子さん”と、もうお一方。

 

 

トラウザーは、 “佐野 理恵さん”。

 

 

コートは、 “成清 功一さん”。

 

 

 

ジャケットを縫って頂いた、岡本さんではない、もうお一人の方は、いろんな事情があり、このブログでは公表することができないのですが、いつも通り”縫製者タグ”は付いているので、そちらをご確認ください。

 

 

 

 

そして、それぞれ、その方々がどのようなことをされてきたのか、どのような方なのか、質問をし、それをまとめました。

 

 

 

 

日頃、縫製をされる方は、もしかしたら完成した洋服そのものに、一番直接的に手を加えている方かもしれないのに、ほとんど表立って言われることがないので、縫製をされている方の声って、結構、レアかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ジャケット縫製 岡本 尚子さん>

 

 

これまでの縫製歴は、27年。 この道27年という超ベテランだ。

 

 

国家資格である、婦人子供服製造技能士製1級。

 

 

この資格試験は、技能試験では、制限時間内に決められた着数の洋服を、一定水準以上のレベルで縫い上げないといけないのだそう。

 

 

それがなかなか困難らしい。

 

 

そんな中、岡本さんは、この試験の中で縫った洋服が”金賞”をも受賞されているということ。

 

 

洋服の縫製は、メンズよりもウィメンズの方が、厳密で厳しい世界なのですが、岡本さんは、婦人服は全てのものを縫うことができるという方。

 

 

それ以外にも、メンズ服では、誰もが知るブランドのジャケットを縫製していた時期があったそうです。

 

 

 

 

そして、岡本さんに今回縫った洋服について以下の質問をしました。

 

 

 

Q:縫って頂いたジャケットで、お客様に見てみてもらいたいところなどはありますか?

 

 

A:ジャケットという、ベーシックな洋服ではありますが、それでこそ生地の良さや縫製の良さが表れます。

端々まで気を使って縫製しました。

キチンと縫製されたジャケットを気持ちよく着て欲しいです。

 

 

 

 

Q:今回のジャケットで縫うのに苦労した箇所はありますか?

 

 

A:生地が硬く、アイロンが効きにくく、裁ち切りの織り目がほつれやすい所。

ですが、その分シワになりにくくシルエットが崩れにくいので良い生地だと思います。

 

 

 

Q:日頃、洋服を縫製される上で、心がけていることや大切にされていることはありますか?

 

 

A:同じパターンでも縫製によってシルエットが変わる事があります。 シルエットが良くなると着心地がよくなりスタイルをよく見せます。

縫っている洋服を着たお客様が気持ちよく着て、またその洋服を着たお客様が素敵に見えるように、と心を込めて縫っています。

<トラウザー縫製 佐野 理恵さん>

 

 

専門学校を卒業されてから、4年間程、縫製工場で働かれたそうです。

 

結婚、出産により、5年くらい縫製の仕事をされていなかったとのことですが、その後に、自宅にて委託縫製という仕事を始められたそうです。

 

 

 

在宅での縫製を中心にされているそうですが、プレタポルテの高級服の生地裁断から、縫製、更には、ボタン付け後の糸の始末という最後の工程まで、全て行うという洋服の縫製を続けてこられたそうです。

 

これまでの縫製歴は、約15年になるそうです。 岡本さんにもいくつか質問をさせてもらいました。

 

 

 

 

Q:縫製で得意な工程、場所などはありますか?

 

 

A:得意というか、好きな作業はポケット作りやカフス付け、ステッチ(特に落としミシン)です。

※落としミシンとは、縫い合わせた2つの生地の”縫い目”もしくは、その際ギリギリに、表から見えないようにステッチを入れる仕様のことです。

 

 

 

Q:今回縫って頂いたトラウザーで、お客様に見てみてもらいたいところはありますか?

 

 

A:合計4つのポケットと、前開きのところです。

 

 

 

Q:今回のトラウザーで縫うのに苦労した箇所はありますか?

 

 

A:後身頃の両玉縁ポケット、左前見返し、ウエスト部の生地が重なる身頃の貫通ステッチです。

 

 

 

Q:日頃、洋服を縫製される上で、心がけていることや大切にされていることはありますか?

 

 

A:いずれ誰かが着てくれる物なので、どこを見ても綺麗だと思ってもらえるように、丁寧に作業することです。

<コート縫製 成清 功一さん>

 

 

これまでこのブログでも何度も名前を出してきたことがあり、山内の山内さんだけではなく、IRENISAのデザイナー二人からも話を聞いたことがある成清さん。

 

 

専門学校を卒業後に、服作りを深く追求するために香川県の縫製工場に就職し、その頃は、休みの日もひたすらに縫い続けた思い出があるそうです。

 

縫製業は、一度だけ離れた事があるそうですが、その後、東京の縫製工場に再就職し、裁断やサンプル縫いなどを習得されたそうです。

 

 

サンプル縫いというのは、基本的にはその工場で一番技術のある方、知識や経験のある方が行うものです。

 

その縫製工場を退職後に、都内で個人事業主として縫製を始め、”山内”と出会い、現在は、福岡県で縫製をされています。

 

縫製の仕事は、15年程になるそうです。

 

山内のコレクションでも、重量系のアウターでは、そのほぼ全部を縫っているのが成清さんですが、成清さんにも質問にお答え頂きました。

 

 

 

Q:ご自身の縫製で得意なところ、また強みなどはありますか?

 

 

A:コートやジャケットなどの重衣料の縫製が得意ですが、パンツ、シャツなども縫うのは好きなので、得意だと思っています。

工場勤務では高級婦人服、個人になってから”山内”に出会えたことによってメンズ服。 レディースに必要な”柔らかさ”、メンズの”堅さ”など色々と経験してきたので、アイテム、素材、雰囲気に合わせて技術面で提案できるところが強みです。

 

 

 

Q:今回縫って頂いたコートでお客様に特に見て欲しいところはありますか?

 

 

A:縫製の面で言えば、BC(背中心)の切り替え?マチのところと思っています。

半裏仕立てのため、縫い代の見え方や始末も丁寧に処理しました。

縫う順番も大事で、一つ間違えると縫えません。

マチのプリーツの閉まり具合も裁断、最初のアイロンの折りや、ミシンの糸調子がしっかりしていないと出来上がりが台無しになってしまいます。

あとは、脇に付いているベルトループも好きです。

 

 

 

Q:今回縫って頂いたコートで縫うのに苦労した箇所はありますか?

 

 

A:やはりアイロン工程で、蒸気とバキュームの技術戦でした。

反発がとても強く、アイロンがしっかりと効いたと思っても、油断して蒸気が少し当たると浮いてきたりしていました。

良い生地だからこその苦労ですね。

あとは、縫い代のカット処理もいろいろと考えました。 誰も気にしないかもしれない箇所もしっかりと処理しています。

 

 

 

 

Q:日頃、洋服を縫製される上で、心がけていることや大切にされていることはありますか?

 

 

A:裁断、縫製、ボタン付けなどの最終工程まで一人で行っているため、一着一着丁寧につくっています。

裁断もすごく大切にしていて、特に生地の地の目は、出来上がりだけではなく、5年先、10年先の形態を左右するので、最初から最後まで気を抜かないように心掛けています。

 

 

 

今回、山内さんのコートを製作、販売する上で、沢山の人の繋がりやストーリーがあり、お客様がこれからストーリーをつくっていくところを想像しながら、また良い物作りを続けていきたいと思っています。

 

 

 

 

__________

 

 

 

 

以上のように長い内容ではありませんが、今回の洋服それぞれを縫って頂いた方に連絡を取り、お話をうかがわせてもらいました。

 

 

 

縫製者の皆さん、これまで培ってこられた技術をもってしても、ここまでのクオリティの生地は、滅多に縫わないような生地だったため、縫製工程のいろんな面で大変だったそうですが、その分、とても丁寧につくって頂けています。

 

 

 

今回の3種類の洋服をご覧頂ける方には、このような面も少しでも感じてもらえたら幸いです。

 

 

 

 

また紹介をしますね。

 

 

 

続く。。

 

 

 

 

 

 

 

BACK