先日お知らせした"世界最高綿織物"、330番手四子(よんこ)撚り。
それをつくってくれたのは、今から約200年前、1822年にイギリスで創業した "DAVID & JOHN ANDERSON"
今は世界の超ラグジュアリーなものを保有するイタリアのアルビニグループの傘下に入り、その世界最高峰の中でも最高品を生産するDJA。
DAVID & JOHN ANDERSONは、世界中から最高の品質の原料を集めるところから始まり、そこで使われるものは厳選に厳選を重ねたもののみ。
だから、今回はGIZA 45。
エジプト綿というのは、"長繊維綿"に分類されますが、そもそもに占める割合が少ないのが特徴です。
GIZA 45となると、エジプト綿全体量の0.4%しか収穫されないそう。
しかもね、更に、その収穫されたGIZA 45の中から、DJAが「長さ」・「細さ」・「強さ」この三要素をものすごく高い基準で選定する。
DJAの基準に満たされた高品質中の高品質なものは、GIZA 45の生産量の2%にしか満たないそうです。
それだけ選び抜いたGIZA 45のみが採用される。
でも、そこからがスタート。
選ばれたGIZA 45を材料に、世界の最先端の技術を持つアルビニグループの紡績工場で紡績をし、糸にする。
もちろん、そこで生産された糸は、とてつもなく細いものが出来上がる。
ただ、まあ、330番手はそのような中でも次元が違うけど。
実は、今回のこのコットン100%の生地。
先日もブログで書いたけど、思い起こしたのは、一年半前。
そこからスタートしたのですが、当初の予定であれば、今回のものとは別のものを使う予定でした。
原料こそGIZA 45で固まっていたんですけどね。 最初に予定していたのは、DAVID & JOHN ANDERSONの中でも、"GOLDEN JUBILEE"という最上のシリーズでした。
それは、 経糸が330番手四子撚り。 緯糸も同じく330番手四子撚り。
という、330×4/330×4という途轍もないものだったんですよ。
それがイタリアで眠っていた。
だから、それを当店が、今回一緒にこの企画を進行するブランドに全量確保を頼み、生産を進めて行ったら、大問題が発生。
なんと残っている生地が使えない。
という連絡がイタリアから入った。
理由は、簡単。
それだけのメーター数を、これまで世界の誰もオーダーしてこなかったから。
あると思って、生地のストックを確認してもらったら、生地が織り傷だらけで、要望に応えられない。
と言われた。
このレベルの生地になるとそういうことが起こってくる。
そりゃそうです。 世界トップの原料をそれだけの細番手にし、織り上げることは困難極まりなく、他に世界中の誰もが生産ができないものだから。
まもなくやってくる来年で200年もの歴史を持ち、その世界最細番手で君臨してきたDAVID & JOHN ANDERSONでさえも、このクラスはダメだった。
でも、でも、でも、それで諦めるわけにはいかない。 せっかくこのようなチャンスを得て、あと少し、もう一歩で"世界の最高"に手が届くというタイミング。
もうお客様方にこの生地を見てもらいたくて、ウズウズして、モジモジして、仕方がなかった。
そして、洋服屋としても、自分としても、洋服を、綿織物を、探究をする者として、絶対に成し遂げたかった。
だから、今回この素晴らしいことに一緒にトライしてくれたブランドに何としても懇願し、当店も折れることなく、ブランドもそれを汲み取ってくれ、とても尽力してくれて、DAVID & JOHN ANDERSONを動かした。
このレベルになると、世界中のセレブたちが愛用するクラスの超絶モノが出来上がります。
そのお客さん達をターゲットにする機屋です。
その、ワールドトップが我々に応えてくれた。
一反だけ。
つくってくれました。
現代の最先端の技術を全て、何もかも駆使し、そのあまりにも感動を超えた感動を提供してくれるもの。
完全にエルメスのスーパーVIPやハリウッドセレブ、アラブの石油王たちが着用するクラスの"GOLDEN JUBILEE"というDAVID & JOHN ANDERSONの真骨頂のシリーズ。
その、現時点での最高品の位置付けとしてのスーパーウルトラハイパーパねぇ生地ができました。
これは、先述の通り、本来のターゲットは、世界の指折りのセレブリティー達を想定した生産工程を踏んでいます。
しかし、それを発売するのは当店CASANOVA&CO。
そう、つまり、DAVID & JOHN ANDERSONが、今、出来る、最もハイクオリティな"コットン100%"の生地を 世界で初めて 発売します。
DAVID & JOHN ANDERSONが動いてくれたのは、もうね、とても感動しましたね。
まあ、日頃は一着分とか数着分しかオーダーが入らないくらいの生地を「全部買わしてくれ」ってブランドに伝えてもらったんだからインパクトあったのかなって思ってる。
でも、その分、このブログをご覧頂いている方、全員、これまでの人生で絶対に体験したことのない生地を用意できたと断言します。
もし、石油王がブログ見てくれてたら別だけど。
そして、実際のところ、今回皆様に用意をした生地は、 経糸は、170番手双糸。
緯糸は、330番手四子撚り。
という数値のものです。
これを生産するまでに、何度も試作を重ねてくれ、240番くらいまでに数値を落としてくれたら、経糸緯糸ともに、同じ番手でできるけど。
って言われたりもしましたが、この未体験な数値である"330番手"ということは絶対に譲れませんでした。
だから、何としても実現してもらった。
そのために経糸のみ番手を下げ、生地を完成させるために170番手双糸にしてもらいましたが、緯糸は330番手のまま。
この"緯糸を330番手"というのが結構重要なキーワードで、今回の生地は綾織りです。 そう、綾織りは、緯糸が肌に当たる、"裏面に"多く露出します。
つまり、肌に当たる面の多くが330番手がやってくる。
そして、そして、綾織りというのも今回のもともとの考えからは変わっていません。
理由は、これだけの超超細番手の生地を平織りでつくると、すごく薄くなっちゃうから。
だから、ある程度の着てもらった時に安心してもらえる生地であることも目指したかったので、"綾織り"で織り上げてもらいました。
その生地が、 これ。
圧倒的な輝きと柔らかさ、生地がゆらめく度に、光を反射する。
流れるような生地表面とフラットではない、綾目のしっかりと立った見た目。
そして、肌当たり。 更には、透けにくい。
これ、ここまでのウルトラ番手ですが、着てもらった時には、すごく頼れる生地なのを感じてもらえると思います。
それは、綾織りということもあるし、DAVID & JOHN ANDERSONが最上質な原料を使って、見事にイギリスの質実剛健なルーツを発揮してくれた。
必ず、度肝を抜いてもらえることを約束します。
このようなものになると、織機は昔ながらの古いものでは織り上げることができず、先にも書いたように世界最先端のものを駆使します。
しかし、最先端と言っても、高速で織り上げるのではなく、限界までスピードを落として、その織機を熟練の高度な技術を持った職人が一台に付きっきりで織り上げてくれたそうです。
今回のこの生地の生産プロセスも出来る限りの公表はしたかったのですが、世界中から追いかけられる立場であるDJAです。 その技術を真似されないために、ずっと200年ほどやってきた歴史があるので、それを覆すことはできませんでした。
でも、もちろん"経通し"は極細の糸を手作業で一本ずつ行ってるし、生地を織り上げるのにすごく時間をかけてくれました。
あとは、この生地タッチにするための最終仕上げも重要な項目のようでした。
生地を織り上げるだけでもとても困難極まりないものだったそうですが、それを織り上げた後に、"錬金術"と例えられる、イタリアの繊維業界が持つ伝統の仕上げを行なってくれたそうです。
でも、それも教えてもらえませんでしたが。。
しかしながら、この生地でつくられた洋服を手にしてもらった時、袖を通してもらった時には、"人生で忘れられない"経験になるでしょう。
と言葉をもらいました。
そして、今回、この生地の圧倒的素晴らしさ、いろんな生地に触れてきた自分でも全くの未体験だった領域。
それをマイクロスコープで。
経糸に、170番手双糸。
緯糸に、330番手四子。
その左綾で織り上げられた生地。
マイクロスコープで見ても感じられる、繊維レベルでのあたかも濡れているかのようなツヤ。
双糸の経糸がギュッと締まり、四子撚り(よんこより)の緯糸は、鱗のように見える糸の表面。
そして、DAVID & JOHN ANDERSONが世界でも最細番手のキングと称えられるのが、"ただ細いだけじゃない"ということ。
細さだけを追求するものはここ最近ではよく目にしますが、アルモやカルロリーバなども同様に細い数値だけではなく、それがあった上での、生地の風合い。 これがとても重要です。
この圧巻の風合いがあるから、数値が引き立ってくるとも言える。
比較として、これを見てください。
これ。 日本か中国かどっちか分からないけど、経糸・緯糸ともに"160番手"の綾織りのシャツです。
160番手と言われながらも、糸にはムラがあり、毛羽立ちも多い。
太いところや細いところ、更には、密度もバラバラ。
これにより、一瞬、肌触りは滑らかそうに感じますが、着るとそうでもない。
糸のムラゆえに、着ても物足りなく感じてしまいます。
このように"数値だけ"の謳い文句の生地はたくさん存在します。
対して、
先ほどの今回の生地。
ほとんど同じ倍率での撮影だったと思うのですが、全然違って見えると思います。
このマイクロスコープでの見た目の違いが、そのまま着用時の感じ方の違いに直結します。
この"数値"を裏付ける、仕上がりのクオリティがDAVID & JOHN ANDERSONの素晴らしい点です。
更に拡大。
一層の拡大をしても糸からの毛羽立ちはほとんど見られません。
そして、糸の一本一本、繊維の全てが、輝いてる。
超上質なGIZA 45を、更に際立たせるDJA独自の"調理方法"によって生み出されています。
あと、横方向に走る緯糸をじっと見てみると、ギュッと4本の糸が捻られてるのが分かると思う。
そして、それを分解。
330番手四子撚りの緯糸をそれぞれ一本ずつに分解したのが、タイトルにある写真です。
これ。 マイクロスコープで撮るの大変だった。
何回も指が攣りましたね。
ほら。
もの凄い細い4本の糸。
この1本1本が、綿番手の330番という数値です。
ちなみに、一緒に写っているシルバーの物体。
これは、まち針の先端です。笑
やばいでしょ。 この細さ。
まち針の先端は、一般的に目にするような針先と変わらないので、皆様がすぐに思い浮かべられるような針と同じ太さです。
その針先が極太に見える。笑
それくらいの細さなの。
もう、このレベルは出会えないと思う。
先日も言いましたが、コットン100%の生地では、今当店で用意が出来る"最高"です。
日頃、そのような"最高"という言葉は使いませんが、これはそうだから。
ここまでくるのにもかなりハードルはあったけど、何とか、乗り越えられました。
というか乗り越えたのは実際は僕じゃないけど。
The CLASIK。
The CLASIKの田中さんとの協業じゃないと絶対に生み出せないものができたと思います。
そして、それをコレクションではやっていない、当店が最も好む、スペシャル仕様で形にしてもらいました。
続く。。。