PETROSOLAUMのブーツ
秋冬シーズンにも展開をし、そのクオリティにあまりにも感動したので、今回も取り扱いをします。
PETROSOLAUMのブーツ。
合計5足かな?現状では。
自分が所有するPETROSOLAUMのシューズの中でも、いろんな側面で考えて、圧倒的No.1のクオリティと思ってるブーツです。
ブランドのシリーズでいうと、03 LAST。
01 LAST、02 LAST、03 LASTと大きく分けて3種類が存在するPETOSOLAUMのシューズ。
その3つは使用する木型(ラスト)が異なるため、フォルムが違うのはもちろんですが、シューズの仕上げや少しだけベクトルも異なります。
今回の03 LASTは、PETROSOLAUMの中でも最も手と時間をかけて、途轍もなく高いレベルでの美しさと力強さ、そして、圧巻のクオリティが共存するシューズ。
その中でも、以前の秋冬シーズンに、いわゆる、新作という形でつくられたサイドゴアブーツ。
それを見た時に、ブーツの"その先"にあるものを凄まじく感じたから、自分でも気に入って履いていたんですが、それがハンパなかった。
そのことを世の中の方々にまたお伝えし、ご体感頂きたいと思った。
だから、今回はサイズ展開を変えて同じモデルを取り扱います。
PETROSOLAUM
side gore
material _ Cordvanbutt
process _ Mckay
color _ D.BROWN/BLACK
size _ 40,41,41.5,42
※40,41は完売致しました
これ。
今回のサイズ展開は、40からスタートでこれまでよりも大きなサイズで取り扱いをしています。
理由は、前回は小さいサイズばかりを扱っていたから。
だから、その時には手にして頂くことができなかった方にもご覧頂けるようにしました。
スッと自立し、立体的に佇む新品の状態。
使うレザーは、PETROSOLAUM特有のコードヴァンバットという革。
シューズの一番の顔になる場所である、トゥ部分にはとてもキメの細かいコードヴァンレザー。
そして、ヒールに向かうに従って徐々に少しずつ革質がグラデーション状に、スウェード層に変化するというものですね。
これは僕がPETROSOLAUMに出会ってから今でも最もトキメキ続けるレザー。
姫路の新喜皮革さんと開発した素材で、シューズ一足の中で奥行きのある表情をバチバチに感じることができる。
これ、ヤバいね。
トゥには誰が見ても、とてもキメが細かく整ったコードヴァンが配置。
そして、少しずつ革質が変化してくる。
ヒールは完全にスウェード状。
そして、ヒール部分には、手釣り込みの証である釘の穴も存在します。
このクラスのシューズになってくると手での釣り込みは必然ではあるのですが、やはりアッパーの革への影響が格段に違います。
履いていって年月が経った時はもちろん、新品時でも機械釣り込みの場合は僅かに負荷がかかったシワが発生してしまいますからね。
それが人間の足にピッタリと添った立体的な木型であればあるほどにそう。
これまでに何千足、何万足と手がけてきたその道のプロフェッショナルでさえも、簡単にはできず、片足だけでも1時間とは言わないにしろ、時間がかかってしまう"手釣り込み"の工程。
機械釣り込みであれば、ジェットのパワフルな力を利用して、ものの30秒ほどで終了してしまう工程ではありますが、シューズが完成した時には、細かい点ではありますが、全然別物になってしまう。
その手釣り込みの中でも、特にその工程を重要視しているブランドですからね。
硬く強靭なコードヴァンバットの革を、負荷をかけることなく、超絶立体的な03 LASTに添わせて成形する。
やはり手と時間をかけてつくられたシューズは素晴らしいものですよ。
そして、このサイドゴアブーツは、表に露出する全てのレザーの端が断ち切りの状態で仕上げられています。
これは、コードヴァンバットならではの仕様ではあるのですが、そもそも馬のお尻のコードヴァンは、牛革と違って、革を構成する繊維質の構造が異なります。
牛革は、繊維質が横方向になっているのに対して、コードヴァンはそれが縦方向で、しかも密度が超高密でひしめき合ってるそうですよ。
だから、何度も履いた時のうねるように深く刻まれるアッパーの皺が生み出されるのですが、その性質を利用して断ち切りにしてる。
更には、その野生的な側面も残すため、革のコバの処理もしていない。
あとは、写真見てもらったら分かると思いますが、このレザーはベースはダークブラウンの革。
それに対して、ブラックで染めてる。
100年くらい前のオールドムード漂う、"茶芯"の状態を意図的に生み出してるコードヴァンバットです。
現在、店頭で取り扱ってるTaiga Takahashiのレザージャケットも同様なのですが、昔のブラックのレザー製品は染色技術の未発達から、革を黒く染めても、内部まで染まりきらないことが多発してた。
しかしながら、それが年月を経た時の途轍もない奥行きにつながるってわけですよ。
ダークブラウンベースだから、少しだけ赤みがかったブラックのニュアンス。
新品のその先の色の変化もご体感ください。
まあ、そう簡単には茶色は出てこないですけどね。
このサイドゴアブーツには特徴的な仕様がふんだんにあるのですが、まずは、このトゥ部分から履き口に向かっての革の反り上がり。
通常、サイドゴアの場合は、足の甲から足首にかけて、曲線的にカーブさせる構造にする。
その時には、レザーに熱をかけて強制的に革をカーブさせていくそうです。
でも、これは違う。
その熱での曲線形成をホンのちょっとだけしか行わず、ほぼ一直線の状態にしてるの。
何度も何度もブランドで試行錯誤した設計みたい。
これが、所有者の方には素晴らしい恩恵があるんですよ。
シューレースも何も存在しない一枚構造の甲部分の革に、着用による深いシワがバッチンバッチンに刻まれるってワケ。
着用を続けると、新品ではストレートだったこの箇所が、所有者の足の動きにより、シワが生まれ、そしてそれと共に丸く曲線を描く。
これ、全員好きだと思う。全員。
そして、サイドゴアには付き物のサイドのゴム。
カッコ良く言うと、エラスティック。
通常は、サイドゴアはこのゴムが表に露出してるものじゃないですか。
でも、これはゴムの上からコードヴァンバットのレザーを当て、見えないようにしてる。
更に、これによりゴムの耐久度が格段にUP。
ゴムを覆うようにステッチもドレスシャツレベルで細かく入ってますからね。
パッと見、シャツかな?って思う。
ステッチだけで判断した場合は、思わず袖を通そうとしてしまうくらいの運針。
ちなみにアッパーの縫製は全てPETROSOLAUMの荻野さんがアトリエでやってる。
この狂いのないピッチで、コバを攻めに攻めまくってるステッチワークは圧巻。
あと、荻野さんが前に言ってたけど、サイドのゴムの高さを微妙に低くすることで強さも増すそうです。確か。多分。そう言ってた。気がする。
で、肝心のゴム。
これは、ドイツのイエガー社製のゴムを採用してる。
以前に荻野さんに比較で見せてもらったことがあるんだけど、何となくこういう付属は、made in NIPPONのものがクオリティが高そうなイメージがあったんですよ。
でも、荻野さんも耐久テストとか、色々試した結果、行き着いたのがこのドイツ製のゴム。
確かに、国産のゴムと比べてもこのイエガー社のゴムの方が、目が段違いに細かいし、引っ張ってみてもその違いは歴然だったんですよ。
どうしてもサイドゴアブーツって履き続けた時に、ゴムがビロンビロンに伸びちゃうのって許容できないじゃないですか。
何なら気に入って買っても、ゴムの心配ばかりしちゃって、ついつい履く回数も減ってしまうくらい。
でもね、これなら安心。
もう保証するわ。
全然伸びきってしまわないんですよ。
とても信頼できるゴム。
その上、もちろん、仮に、仮に、仮にね、長年使い続けてゴムが伸びてビロビロになってしまった時にもちゃんと交換可能ですから。
安心してください。
ドレスシャツレベルのステッチよりも遥か上を行く細かさレベルのイエガー社の誇るゴム。
03 LASTのシューズが誇るアメージングなアウトソールの仕上げ。
アウトソールの交換可能なマッケイ製法なのですが、通常では底面に露出するマッケイのステッチが見えない。
これは、クラシカルなヒドゥンチャネルって言う仕様で、アウトソールの革を薄くめくり、その状態で底付けを行う。
その後、めくった革を伏せて磨きをかける。
昔から古典的な製法のシューズが良しとされる世界ですからね。
このようなディテールもこのブーツの品質を物語る一つの要素です。
そして、このサイドゴアブーツに関しては、ブランドサイドにかなりイレギュラーなオーダーをしているのですが、ヒールのみVibramのラバーを張ってもらっています。
理由は、滑り止め、踵の摩耗を抑制するためのヒールのみの取り付けと、前面のハーフラバーは貼り付けても良いんだけど、レザーのアウトソールはやはり"呼吸"してくれますから。
春夏でもブーツを履く漢の方々には、靴底の呼吸も必須でしょう。
これはやはりラバーソールのスニーカーでは体感できない点ですからね。
僕もOLDE HOMESTEADERの靴下との組み合わせで、真夏でもブーツ履いてるから、こういうの大事なんですよ。
とても美しい靴底の仕上げ。
角度によっては鏡のように光ってくれるから、新品の状態では靴だけではなく、鏡の機能も併せ持ってる。笑
ソールのコバの磨きもとても美しい仕上がり。
これ、写真で分かって頂けるか微妙なところですが、03 LASTのシューズは、アウトソールがダブルレザーソール仕立てです。
革が二重になってる。
でも、そうなると爪先の減りが早くなるし、歩行の硬さにもつながるので、爪先にいくに従って、ダブルレザーソールがシングルレザーソールに変化してるんですよ。
僅かに、僅かに、僅かに、ソールの厚みが爪先の方が薄いのが分かりますかね?
アウトソールでさえも、とても細い設計がされてるのが目に見える。
爪先や、シューズ全体のアウトソールのコバの処理は、平コバですが、土踏まずのアーチの箇所のみ、丸コバ仕様です。
これは、このクラスのシューズの嗜みの一つなのですが、造形美の追求という側面も含んでる。
ヒールが左右非対称の形状なのも同様ですが、このブーツを真横から見た時に、地面から浮かび上がる土踏まずの部分が目が引き込まれるくらいに奥に深さが見えるんですよ。
僅かにテーパードしたヒール。
ヒールには、寸分狂わず積み上げられたレザー。
レザーシューズは、どうしても洋服と違って、品質の良し悪しが非常に難しい側面も持ちますからね。
一般的には、どうしてもブランドネームでの安心感でシューズを選んでいる方って多い印象です。
でも、海外のシューズはやはり細かい箇所の精度で言うとどうしても大らかに思ってしまうことが多々あるんですよ。
一目で分かるのがヒールの積み上げられてるレザーがズレてるとか、とても分かりやすいのに結構見る。
レザーシューズは、とても細かい箇所が大事ですからね。
あとは、さっきも言ったけど、釣り込みもだし、それまでにどんなプロセスを踏んで製作がされたかっていうことが品質を大きく左右する。
僕はある種、レザーシューズは、品質を分ける上で一番重要な部分って言うのは、完成してしまった時には、"見えない箇所"だと思ってる。
だから、当店ではこの手の海外生産のレザーシューズは現状、取り扱っていません。
ほら。見てこのレザーソールのアウトライン。
どこを見ても美しいブーツ。
そして、このサイドゴアブーツには、ホースレザーのインソールが付属します。
これで履いていった後でも、所有者の方の好みのフィッティングに調整してください。
僕は、これを使わない前提で極限までサイズを落として履いてますが。
アッパーのトゥに負けずキメの細かいホースレザー。
こちらもまたしっかりと芯がある丈夫さを感じますね。
そして、これ。
半年前から、超絶ヘビーユースしてる僕が履いてるサイドゴアブーツです。
もうね、作業靴として、履いてる。
足の実寸が左が24.6cm、右が24cmなのですが、それでサイズは39ですね。
サイズをとにかく下げて履いてるし、しゃがむことも多いので、アッパーに皺が入りまくってる。
今回取り扱いをしているのが一番大きなサイズで42なのですが、当店でも190cmくらいの方でも、PETROSOLAUMのシューズは、サイズ42より上のサイズ方はこれまでにいませんので、それを最大サイズとして展開してます。
そして、ここ。
履き口に向かって己の足でカーブさせた足首部分。
アッパーからふんだんにコードヴァン特有のシワがうねってる。
これで自転車乗ってるし、東京も一人で猛ダッシュしてることがあるから傷は入ってますが、いずれ近日中に茶芯が現れてくることを期待してる。
もちろん、ゴムも全く伸びてない。
足首へのフィットがかなり強いからとても信頼できるゴムですね。
上から見てもシワの入り方はコードヴァンバットならではの深さ。
サイズが全然違うけど、比較の写真です。
最初は、履き口がとても狭いのですが、それは繰り返しの着用を想定しての設計。
最初から足入れがスムーズなシューズは年月が経つとガバガバになりますからね。
とにかくキツいのを選んで。
サイドビュー。
全体としてやはり強さが出てきたように思いますね。
アッパーの革の断ち切り部分のサイドと、表革のコントラストも明確になってきた。
完成した時には、目に見えない工程も、細かな箇所もとにかく手の技術と時間をかけて製作されてるブーツです。
そのポテンシャルを最大限に引き出すためにも、とにかく繰り返し履いてあげて。
そうすれば応えてくれるブーツです。
お好きな方は見てみてください。