Nobuyuki Matsui "Still Move"
今日は、昨日届いたばかりのNobuyuki Matsui。
2017AWシーズンから取り扱いをし、早くも8シーズン目になってきた。
Nobuyuki Matsui。
毎シーズン松井さんにしかつくれない洋服をつくってるから、それを見る度に心躍るし、とても魅了される。
完成した洋服もきっちりとしたハイクオリティでつくりあげてるんだけど、そのコレクションテーマを軸として、ここまでのレベルの洋服を生み出せる人もこの業界でもそう多くはないですよ。
そして、今シーズンもとても良いものつくってくれてる。
2021SS
"Still Move"
直訳すると、動き続ける。
なんだけど、そうではない。
stillは、動かない。じっとした。というそっちのほうの意味合いです。
「静と動」
それを表現したコレクション。
松井さんがいうには植物からやってきたテーマだそう。
花や木などの植物は、止まって見えるけど、成長して、動き続けている。
洋服も止まっているけど、着ると動く。
そして、着ていくと風合いの変化だったり、新品のころとは違うような見た目に変化する「動き」があるじゃないですか。
大きく大きく言うとそういうことを着想に、テーマとしたシーズン。
1st Deliでは、ブルゾンタイプのジャケット、左右非対称のシャツ、肩が左右で違うカットソー、ニットカーディガン、リングベルトをつくってくれて届いたんですが、今日は、その中でも2つ紹介させてください。
Nobuyuki Matsui
Cardigan
material _ Cotton 65%,Linen 35%(Partly)
color _ Earchy(Brown)
size _ 2,3
カーディガン。
まあ、メンズウェアでは最近あんまりなかったけど、そろそろ良い頃ですかね。
だから、当店でも用意させて頂きました。
ただ、フツーのじゃなかったけど。
かなりコシとドライな質感のコットンをベースにした編地。
機械編みで編み上げていくのですが、編み進める途中で何度も停止させ、ロービング(撚ってない)のリネンの糸を手作業で組み込んで入れていくNobuyuki Matsuiの完全オリジナルニット。
通称、"Nobuyuki Matsui編み"。
大体同じような見た目には狙ってつくっていくのですが、編み進めていくニッティングマシーンを途中で停め、そこに手でリネンの糸を入れていくため、全く同じものを生み出すことが不可能なカーディガンです。
リネンの糸が飛び出すのも一点ずつ異なり、その姿を所有する方には楽しんでもらいたいと思う。
これは、機械で編み進めていくことを「動」と捉え、それを停止させ、手でリネンの糸を編み込んでいくことを「静」と考え、コレクションピースとして形にしたカーディガン。
展示会、というか松井さんのアトリエに行って、着いた瞬間に目に飛び込んできた。
こんな編地は世の中では存在しない、Nobuyuki Matsuiの力を感じてもらえるものだと思いますよ。
そして、その編地だけじゃないのよ。これ。
アシンメトリーパターン。
ここもNobuyuki Matsuiのカラーがはっきり現れているところだと思う。
左はラグランスリーブ。
右はセットインスリーブ。
そして、それに併せて前立ての仕様も異なり、とても複雑なカーディガンです。
全体に植物のツタが生えたようなゆらぎのあるロービングリネン。
そして、ボタン。
これも特筆中の特筆項目。
皮付きのナットボタンです。
ナットボタン=ナツメ椰子の実のことね。確か。
それも"皮付き"。
皮付きのって見たことないでしょ。
これ、すごく勉強になる。
かもしれないから心して見て。
そもそも、今、日本って先進国じゃないですか。
当然のことだけど、先進国になればサービス業の第三次産業が中心になりますよね。
だから、何事でも原料となるもののほとんどは、第一次産業が盛んな海外から輸入して、買うことになる。
それは、洋服の繊維でもボタンでもそうなんですよ。
で、通常はこのようなナットボタンもエクアドルから輸入されることが大半。
でも、輸入すると、このボタンのような「皮付きナット」はないそうです。
Nobuyuki Matsuiのこのボタンは、とても古いボタンで、日本で第一次産業が盛んだった植民地時代。
その頃に、日本国内でつくられたボタンだそうです。
海外では手に入らない。もちろん、今の日本ではつくられていない。
だから、ボタンでさえも一点ずつ色味が違って、少し変色してる濃度がバラバラ。
この編地にとても似合ったボタンです。
しっかりと芯のあるコットンにロービングリネン。
それを形にするNobuyuki Matsui編み。
そして、古く時代を経てここに使われる皮付きナットボタン。
カーディガン欲しかった人もそうじゃなかった人もこれは見てて。
バックスタイルにも健在。
表記はBrownだけど、この色と、
Nobuyuki Matsui
Cardigan
material _ Cotton 65%,Linen 35%(Partly)
color _ Aidate(Navy)
size _ 2,3
よりコントラストが明確なNAVY。
深い色合いのグラウンドに対し、どことなくゴールドにも輝いているように見えるロービングの糸がこの洋服のパワーを圧倒的に見せつけてくれてる。
着るだけで特別な景色に連れて行ってくれるピースですね。
Matsuiさんの力をご体感ください。
そして、
もう一つ。
Nobuyuki Matsui
Linen Jacket
material _ Linen 100%
color _ Natural
size _ 2,3
ブルゾンです。
これもまた今シーズンのテーマを大きく反映した象徴的なPiece。
"のり割り"。
という技法で染色をされたリネンの平織り生地。
生地を製織した後に、生地表面の全面に厚く、糊を塗り、バリバリに乾かすそう。
そして、その後に糊をひび割れさせ、染料を流し、染色をしていく技法だそうです。
先シーズンの柿渋染めに続き、非常に高度で高額な染色をしてますね、Matsuiさん。
あと、糊を乾かした後、通常であれば生地をロールさせたり、筒に巻いたりして、規則的に糊を割っていくそうですが、これはそうではないそうです。
ハンマーで叩いたり、サンプルの段階では工場の床に敷いて、何も意識せず作業して、歩いて踏んで、自然の割れをつくったそうです。
さすがに商品になるものは踏んではないみたいですが、規則的で均質のあるひび割れよりも、人為的ではあるけど、狙ってできない最も自然の姿に近いような"のり割れ"を生み出したそう。
この生地を見てるととても美しく、すごく奥行きがある。
販売してるものだから、作品とまでは言わないけど、服地という枠を飛び越えた領域に存在するものに思う。
こういう生地の洋服を取り扱えるのは、服屋としての喜びを感じますね。とても。
Gジャンタイプのブルゾンですね。
でも、そのカジュアルなベースとは違い、仕様も別格。
衿にはステッチが露出せず、曲線を描く。
デニムジャケットなどには存在しない、衿を支える、月腰も備えられます。
羽衿は二枚の生地で形成されていますが、表に対して裏衿は見えないように僅かにきちんと控えさせてる。すごくちゃんとしてる。
表からは裏衿が見えません。
ウエストポッケ付き。
フロントプリーツと3rd TYPEのような切り替えも設けられたカッティングですが、とても端正な顔つき。
胸ポケ。
松井さんのつくる服はすごく構築的だから、一見すると分からないようなポケットが備わってます。
裏も特異で得意な複雑仕様 with パイピング。
身頃には裏地は付きませんが、
袖裏には、日本で最も厚地なオリジナルキュプラ裏地が配置。
二枚袖に、バックスタイルも美しいのが大前提だから切り替え仕様。
はい。
剣先タイプのアジャスターでアジャスタボー。
一般的な洋服よりも切り替えが多用されてるブルゾンなので、生地が変わることによってのり割りの表情を楽しめますね。
このカーディガンやジャケットの他にも届いてるから、お好きな方は見てみてください。