今日は、Isabella Stefanelliを紹介しますね。
いろいろと納品が続いていたり、いろんなことしてたら、なかなか紹介できなかったけど、今日はトラウザー。
"Diane"です。
まず、当店に現在在庫をしているIsabella Stefanelliの全ラインナップは以下の通り。
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Isabella Stefanelli
Amedeo
material _ WOOL (Handwoven)
color _ Bark Brown
size _ 4(M)
※完売致しました
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Isabella Stefanelli
Oliver
material _ WOOL,COTTON,CASHMERE
color _ Mopale
size _ M
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Isabella Stefanelli
Oliver
material _ Cotton,Linen
color _ Tea Dye
size _ L
以上の3つと、本日紹介をする"Diane"。
合計4点が現在の当店のラインナップとなります。
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Isabella Stefanelli
Diane
material _ Mohair,Cotton
fabric _ T2
size _ S
※完売致しました
これ。
"驚愕のトラウザー"、Diane。
Isabella Stefanelliでは、全ての洋服に、イザベラさんがその人物の生き方、生涯を通して行ってきたことに共感をした"実在した人物"の名前が付く。
今回のトラウザーは、Diane Arbus。
ダイアン・アーバス。
1923年から1971年に生きた、アメリカの女性写真家。
生きていた当時に、「このような洋服を着ていたのではないか。」とイザベラさんが想像をしてデザインしたトラウザーです。
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まずは、生地について。
素材は、"モヘアとコットン"という組み合わせ。
これは、この生地以外で見たことがない素材の組み合わせである。
日本の尾州(愛知の毛織物産地)で、イザベラさんが生地のデザインをし、毛織物の機屋さんが織り上げた生地。
この"モヘアとコットン"という素材の組み合わせは、僭越ながら、過去に僕自身も見たことがない組み合わせであるため、トライしようとしたことがあるの。
その時は、AUBETT時代の杉原さん(現nonnotte)と、カネタ織物さん(主にシャトル織機を使う綿織物の機屋)とコットンモヘアというのが難しかったから、当時つくった"赤錆びカラー"のZZ強撚綾三重織りという生地は、混率としてはコットン・ウール・モヘアとなった。
やっぱり、コットンとモヘアという組み合わせは実現不可能なんだな。って思ってたら、イザベラさんやってた。笑
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日本で開発をした生地ということもあり、絣のように、出ては消えるストライプ。
それぞれの線の長さや強弱。
そして、非常に独特なハリと、モヘアならではの乾いたタッチ。
でも、実物を見るとグレー系の色合いなのに、鮮やかな発色と明らかに上質な生地の光沢に目を奪われる。
ウルトラ超絶カッコいい生地である。
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そして、それが格上げされているのがこれ。
お分かり頂けるだろうか??
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パンツの下部。
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ミシン縫製と、手縫いで、生地を継いでるのだ。
この理由は、次に言及しますが、この生地を継いで、設定通りのレングスをつくることにより、ストライプの途切れや変化が生まれてる。
これまた超人ディテールである。
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この"Diane"。
通常、これくらいの足まわり分量のあるトラウザーであれば、普通は、フロントに必ずタックが設けられるはず。
でも、タックというのは、主にメンズのディテール。
先述の通り、女性がモチーフになっているトラウザーだから、タックがフロントに入らない。
そのため、ウエストはSサイズだけど、少し大きめ。
それをベルトで絞って着用するというもの。
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横から見た、"Diane"のトラウザー。
なんかエレガントで良いシルエットが出そうな雰囲気出てるでしょ。
ここからがIsabella Stefanelliの"極まったディテール"の登場である。
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"アウトサイドシーム"のあるパンツ。
アウトサイドシーム、脇線とも言われますが、この切り替えはあってもなくても、パンツのシルエットには影響を与えない箇所。
そのため、時折、生地のドレープ性を活かすため、アウトサイドシームが排除されたパンツがあると思う。
また、ジーパンでも生地端(セルヴィッチ)が外側に配置されるのは、アウトシームの裁断線が一直線でも、問題なくパンツの"外側の線"は、綺麗に出るからである。
これは、"重力"が関係しており、重力によって、パンツの"外側の線"は必ずちゃんと出る。
だから、パンツのシルエット形成で重要なのは、"内側の線"をつくる、"内股"なの。
内股は、"重力"に伴い、どんなパターン線であっても綺麗にアウトラインが出るとは限らない。
であるから、世の中のパンツのたくさんのものが、"内股のパターン線"を工夫し、そこに注力するのだ。
"Isabella Stefanelliを除いては。"
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これ。
全員、凝視してくれ。
Isabella StefanelliのDiane。
世の中の全てのパンツに、"必ず存在する内側の切り替え"が存在しない。
これは、前人未到、前代未聞、人類史上、他に誰がこの領域に辿り着くことができるのかと言えるほど、極限のディテールである。
しかも、このことは、ただ突飛な設計をしているのではなく、度肝を抜くようなトラウザーの輪郭と、着用し動いた際の"神のドレープ"が生まれるの。
これは、めちゃくちゃ価値あることだと思いますよ。
途轍もない唯一性。
しかも、この"内股の切り替え線が存在しない"というのは、なんと、Isabella Stefanelliではスタンダードなことなのだ。
ホンッッット、これすごいこと。
僕は、初めてこのようなIsabella Stefanelliのパンツの仕様に出会ったとき、、、
"バイヤーとして、このような洋服に辿り着けた喜び"
を心から感じたのをとてもよく覚えてる。
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そして、股を見ると"魔法のディテール"登場。
左右の身頃の付け根に、それぞれ三角形が並ぶ。
これが、このトラウザーの真相だ。
着用時に感じられる圧巻のフォルム。
これは、所有者のみが体験できる"優位性の塊"。
是非、ご体感ください。
洋服を通して、価値観変わるから。
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そして、先ほど紹介した、パンツの下部の生地の継ぎ足し。
この理由は、上記の"内股の切り替え線がない"ということが大きく関わってると思う。
このDianeの生地は、"生地を横使い"されてる。
ボーダー状に織り上げた生地を横使いすることによって、ストライプ状に形成しているのですが、何度も言う通り、"内股の切り替え線が存在しない"ため、左右の足の筒が一枚の生地の構造だ。
しかも、ただ、内股の線がないのではなく、"内股の線がない中で驚異のアウトラインを描いている"。
だから、裁断の際に、生地の取り方が恐ろしいほど特殊なの。
そのため、もともと生地幅が広いものではないこともあるけど、横使いした際に生地の"幅"がDianeの設計に足りない。
そのために、生地を継いでつくっているということです。
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他のディテールも紹介しますね。
腰回りもすごいから。
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まず、ボタンはコロゾボタンを焼いたもの。
そのボタン付けの糸は、シルク糸だそうです。
Isabella Stefanelliは、付属する下げ札には、洋服の使用しているものに関して全て記載がありますが、こちらのDianeは、
・ミシン縫製が"綿糸"
・手縫い縫製が"シルク糸"
という記載があります。
腰回りの箇所では、写真では細かすぎて見えないかもしれないけど、"ウエスト帯"の身頃との縫い付けでは、ネイビーの綿糸で二重にミシン縫製が施されています。
また、一般的に、全てのパンツには、ウエスト帯には、伸び止めのために必ず"芯地"が内部に使用されます。
しかしながら、Isabella Stefanelliは、"芯地"と"裏地"を使用しない洋服づくり。
そのため、複数枚のコットン平織り生地を縦の地の目で、ウエストに入れることで伸び止め、着用時にウエストのフィッティングを高めてる。
その白い生地がウエスト帯から覗いてる。
白い色の絣ストライプとの調和も見事に効いてるでしょ。
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ちなみに、ベルトループの取り付けは、ミシン縫製によるネイビーの綿糸。
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前立て形成は、ネイビーの綿糸で二重に縫われていますが、それも途中で止め、最後のカーブを縫わないことで、意図する"股のアウトライン"を出せるようにしている仕様です。
前立ての開き止めのカンドメ、小股のステッチは、シルク糸での手縫いで行われる。
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前開きは、焼いてるコロゾボタンの仕様。
ボタンホールは、全てハンドホール(手縫い)で、着脱のしやすさも備えた斜めのボタンホールです。
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使用に伴って負荷がかかる箇所でもある"前立て"と"持ち出し"パーツ。
表地ではなく、白いリネンの綾織り生地で、補強と絣ストライプとの調和を。
耐久性とセンスの両方を兼ね備えた前立て。
持ち出し見返しの白いリネン綾織り生地は、表から過剰に見えないようにハンドステッチでコバを縫って控えさせるテーラーテクニック。
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ポケット、サイドのシームも共にシルク手縫い縫製。
ポケット内部からは、絣ストライプが覗く。
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バック。
この生地の絣ストライプがどこにどう入るのかは、納品されるまでのお楽しみという感じだったんですが、超絶イケてる後ろ姿。
イザベラさんのセンスを抜群に感じる生地の扱い。
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角に丸さのあるパッチポケットが右側のみ縫い付けられます。
ポケットの取り付けは、ミシンで縫われることなく、シルク糸での手付け。
手縫いに使用されるシルクの糸は、全箇所が多本取りされたシルク糸を撚り合わせていることにより、強靭さが際立ち、ステッチもとても引き立つ。
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そして、アメージングな裏側の登場。
Isabella Stefanelliの洋服ですからね、表から見て凄みがあるのは当然です。
でも、裏側にひっくり返しても感じる洋服のオーラ。
非常に研ぎ澄まされたものを感じる。
写真にあるように、裏地は付かない一重の仕様です。
生地のウェイト、質感から考えると、通年系のパンツです。
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先述の通り、ウエスト帯の内部には、芯地ではなく、平織りの綿織物が二重かな?で配置。
そのため、ウエスト帯は生地の厚みがあるため、ふっくらしています。
ベルトループが縫い付けられる箇所の裏には、綾織りのリネン生地が補強で入れられる。
持ち出し布の見返しにも、同様に綾織りのリネン生地。
パイピング箇所は、パイピング用テープではなく、綿平織り生地。
ポケットの袋布は、かなり柔らかいタッチの綿ツイル生地。
このように裏側の箇所においても、適材適所と考えられた生地を組み合わせているのがIsabella Stefanelliの洋服。
裏側は基本的に白い生地で別布として構成されるので、シルクの手縫い糸がブラックな分、パンツの裏側の構造が明確に理解できてコントラストも効いてるし、見てるだけでも楽しいですね。
壮絶なつくりだけど。笑
洋服のムードとしては、"見た目の繊細さ"を感じるのですが、洋服の構築のそのものは、類まれな堅牢さを持ってると思う。
同じ洋服の形でも、どんな生地でつくるのかによって、ミニチュアの洋服をつくり、考えられるだけの選択肢を試した後に、ベストな方法で形づくられるIsabella Stefanelliの洋服ですからね。
それぞれの洋服で、仕様や縫い糸を変えることは当たり前にやってる。
だからこそ、一着の製作に"普通ではない"時間がかかるし、それに伴って、生産できる絶対数も非常に限定的。
でも、その分、一着の洋服の濃度が計り知れないほどの高さで出来上がってる。
そういう洋服はとても尊いものだと思う。
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先に書いたように、ウエスト帯と身頃の縫い付けは、ネイビーの綿糸でミシン縫製を二重。
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太い縫い糸は全部手縫い糸です。
アウトサイドシームの生地端の処理についても、手縫いのオーバーロックを施しています。
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見えますかね??
アウトサイドシームは、地縫いという生地と生地と接ぎ合わせるための縫製は、ネイビーの綿糸で細かいピッチでミシン縫製。
縫い合わされた縫い代、生地端は手縫いのロック縫製で片倒しされる仕様です。
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裏側を見ると、継ぎ足してあるのがよく分かる。
ただ、そのレベルも凄まじく、激しいですね。
完璧な縫製がされてるから。
この継ぎ足しを見るだけでも、心震える。
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この箇所も、それぞれを接ぎ合わせるための地縫いは、ミシン縫製。
生地端は糸が抜き取られ、それぞれの縫い代を均等に割ってる。
更に、その後にシームを跨ぐように手縫いの縫製で補強。
これはむちゃくちゃカッコいい仕様だ。
実物をご覧頂ける方には、是非この箇所も眼球を擦り付けて見てみて。
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ハンパない。
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裾は、生地の向きを変えた見返し。
細い幅の見返しで、裾に少しの重みが出るのですが、一般的なトラウザーの仕様とは異なるため、着用時には非常に軽やかですね。
着用時の裾の動きに自由度が高く、とてもカッコいいと思う。
あと、先日までDianeのトラウザーは、もう一つ別のものがあったのですが、それは表地とは別生地が裾の見返しに採用されてたんですよ。
同じ形のパンツでも、使う表地によって仕様が異なるのは、Isabella Stefanelliを象徴すること。
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バックポケットは、シルクの手縫い糸で縫製。
この箇所は、裏側にミシン縫製のステッチが見られないことから、手縫いでの一発縫製ということが見てとれます。
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着用。
身長167cm、体重52kgで着てる。
前に記載した通り、ウエストは気持ち大きめですが、このパンツについてはそういうもの。
ベルトで絞って着用してる。
このトラウザーを穿いてると、どこから僕の実際の足が始まってるのか分からないでしょ??
サイズさえ合う方が穿けば、Isabella Stefanelliで設計をしたアウトラインが100%出てくれる。
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止まっているとバッキバキのアウトライン。
でもね、、、
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動くとこれ。
分かりますか??
右足の"内股"の生地の揺らいだドレープ。
内股にまで生地のドレープが出るというのは、Isabella Stefanelliだけ。
日本のブランドでも、海外のブランドでも、インシームの内股のラインが綺麗に出るというのはあるんですよ。
でもね、それだけではなく、Isabella Stefanelliでは、動くと内股に生地のドレープが出るというトラウザー。
インシームが存在しないトラウザーだからこそ、動きに合わせて、"内股の生地のゆらぎ"が生まれる。
これは、イザベラだけ。
他のブランドでは、再現が極めて難しいことだと思う。
じっと見てみないと分からないような些細なことかもしれないけど、着用時には確実にそこに美しさを感じる。
全っっっ然違うの。
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非常に鋭利なシャープさと、分量のあるボリュームとが共存したトラウザー。
お尻周りはフィットし、そこから驚きの優美さで流れるフォルム。
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もうね、どこをどう見ても、完璧な美しさ。
途轍もなく自信ありますよ。これは。
まあ、僕はつくってないけど。
実物はね、その美しさに言葉を失うほどのレベルです。マジで。
パンツって誰でも穿くけど、別格のクオリティ。
まあ、こういう値段ですからね、普通にセレクトショップに並んでるパンツと同レベルなはずがないですけど。
Isabella Stefanelliを超えられるのは、Isabella Stefanelliだけ。
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超人的バッキバキアウトラインを内股の切り替えをなしで。
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動作時には、動きに合わせた自然な揺らぎ。
表や裏の随所のつくりにあるように、非常に強靭で丈夫にもつくってるIsabella Stefanelliの洋服。
このトラウザーを手にして頂けた方には、Isabella Stefanelliが生涯をかけて続けてきた45年以上もの洋服づくりを存分にご体感ください。
誰もが穿くトラウザーというものだからこそ、この素晴らしさを強烈に感じられると思いますよ。