先日、紹介したIsabella Stefanelli (イザベラ・ステファネッリ)。
今回は、その新たなものの中の"Allen"というコートを紹介します。
Isabella Stefanelli
Allen
fabric _ No.6
material _ LINEN,CASHMERE,WOOL,COTTON & INSERT (HAND WOVEN)
buttons _ COROZO BURNED
size _ 2(Sサイズ相当)
※完売しました
こちら。
"Allen"という名前が付いたコート。
全てのIsabella Stefanelliの洋服は、過去に実在した人物が"生きていた当時"に、このような洋服を着ていたのではないか。とイザベラさんが想像をし、デザインしたもの。
Isabella Stefanelliで登場する洋服は、その人物の考え方、行動、現在に残したものなど、イザベラさん自身が、その生き方に"共感した人物の装い"を想像してつくられたデザインです。
今日、紹介するコートは、
1926年〜1997年まで生きた、アメリカの詩人、"Allen Ginsberg (アレン・ギンズバーグ)"となります。
また、本コレクションのIsabella Stefanelliは、"手織り"生地の中で、いろいろなバリエーションがあり、その中での選択が可能でした。
それら全てにナンバリングがされ、今日紹介する"Allen"は、No.6と付けられた生地でオーダー致しました。
あと、今回より、ブランドの中でも、これまでのコレクションに存在した"手織り生地"と異なる点がある。
それが、完成した"製品"の生地もイザベラさん本人が手織りしているということ。
洋服をつくる上での全ての工程を、ハンパじゃない"技術"と"センス"で、自分自身で行なうIsabella Stefanelli。
これまでは、手織り生地の"デザイン・設計"、"手織り生地サンプルを織る"ということをイザベラさん本人が行なってきました。
また、そのイザベラさんの手によって完成された"手織り生地見本"をもとに、イギリスのBristol Weaving Millという世界的企業が商品の手織りを行なうという生産プロセスが取られていました。
しかしながら、その限りなく複雑な生地設計であるため、Bristol Weaving Millでの手織り生産が徐々に困難となったそうです。
だから、この度、完成した手織り生地の洋服より、全てのものがイザベラさん本人が"生地のデザイン・設計"と"織り"を行なったものとなります。
上記のことが手織り生地の変更点。
これまで通りのBristol Weaving Millでの生産方式を取るのであれば、"手織り"という、非常に時間のかかるプロセスであっても、ある程度の生産性は確保できる。
ただ、それが本生産(量産)を依頼された機屋からは、あまりにもハードルが高いものであった。
"これまで通り"を続けるのであれば、手織り生地の簡略化を進めるはずです。
しかしながら、Isabella Stefanelliで選択した方法は、"自分で織る"ということ。
つまり、Isabella Stefanelliとしての洋服づくりの更なる領域へと移行したと言える。
我々と同様に、ブランドも、運営をしていく中で、様々な選択に迫られることがあると思うのですが、Isabella Stefanelliでは、簡単な道を選択しなかった。
より難しい選択肢。
時間も手も精神力もかかり、ただ、濃厚なものとなる道を選択したと言えると思います。
このような選択が仕事を進めていく中で、できるでしょうか。
僕は、Isabella Stefanelliの洋服づくりから、生き方、毎日の過ごし方、考え方、物事の捉え方。
そのような"価値観"・"人生観"というものを考えさせてくれ、それによって、教え、届けてくれる服だと考えています。
胸元、内側に付属するオイルが染み込んだ下げ札。
ここに、本コレクションより、手織り生地には、ご覧のように、
"DESIGNED & WOVEN BY Isabella Stefanelli"
と記載されます。
もう既に感動的。
そして、その手織り生地を紹介します。
今回、僕がオーダーした"No.6"。
本コレクションで最もアーティスティックだと思ってる。
ただ、凄いのが、それが着ると決して過剰ではないこと。
これは、実物を着て頂けると間違いなく体感頂けると思います。
また、手織り生地を"横使い"していることは、これまで通りの特徴です。
経糸(服になった時には、横方向)は、グレーカラーのリネン双糸。
対して、
緯糸(服になった時には、縦方向)は、カシミヤ・ウール・コットン・リネンが打ち込まれる。
それに加えて、過去のコレクションで、"手織りされてきた生地を裂き、それが緯糸を打ち込む際に、一緒に挿入される"。
それが、"Insert"という表記で記載されますが、僕が数えた限りでは、今回の"Allen"はその数、"396"。
もしかしたら400を超えてるかもしれないけど、一着のコートに、それほどまでのアーカイブ生地が一緒に織り込まれているというもの。
様々な色合いや、大きさ、太さ、打ち込まれる間隔などが箇所によって異なる手織り生地。
それぞれが、グレーのリネンの経糸で抑えられ、打ち込まれている様子が分かると思います。
ただし、この生地、全然それだけではなくって、、、、
箇所によって、緯糸に打ち込まれるベースの糸の素材、色も異なる。
だから、遠目から見ると全体が、ボヤンとした間隔の違う、幅の広いストライプの生地に見えるの。。。
だけではなくて、、、、
同色の範囲内でも、"生地の組織"が切り替わる。
に、加えて、"ストライプの色の境目を超えて、生地組織を繋がらせている"。
と思いきや、"組織が変わったり"。
もうね、パッと見では、全然ワケが分からない。
ベースは、"綾織り"の生地組織をデザインしているのですが、非常に複雑で極まった生地になってるの。
分かりますかね??
真ん中から、左側が濃いネイビーの色で、右側が薄いネイビーに色が変わってるんですが、色の境界を超えて、組織は繋がってる。
でも、それは、この範囲まで。
着用時には、理解するのに途轍もなく時間がかかるのですが、その分、着た時の印象が凄まじいの。
"人間がデザインしたとは思えない生地"だと思います。
と言うのも、人間が形づくることができるものは、どうしても規則性に従ったシンプルなものになってしまうという話を聞いたことがある。
もちろん、このIsabella Stefanelliの生地も規則性を持っている。
ただね、洋服全体を見渡すと、
・色の変化
・組織の変化
・裂織りされた手織りアーカイブ生地 (Insert)
この3つの要素がそれぞれをクロスオーバーして、一体になり、簡単には理解できない生地の表情を持つ。
このブログを書くために、ご来店頂く方に話をするために、いろんなところを見て、この生地を解析しようと思っていたのですが、一着に何日もかかったんですよ。
そんな生地、なかなかないですよ。
しかも、"デザイナー"が織った生地ですからね。
ヤバくないですか??
これが、Isabella Stefanelliの実力。
ただ、1年半前に、イザベラさんのアトリエに行き、その生地の設計方法を見させてもらった時、イザベラさん本人が言ってたの。
「なぜこのような生地が出来上がるのか、私にも分からない」と。
それは、"本物のデザイナー"であるがため、言葉で僕に伝えるのが難しいし、"出来上がったそのもの"で伝えている。ということの現れだった。
生地を開発することに取り掛かり、サンプル生地を"デザイン・設計"していく。
その道中、イザベラさんは、45年以上の洋服づくりの"経験とセンス"、現在までに培った技術を駆使して、没頭するように、頭にあるものを手で目の前に現実化し、それを目で確認してつくりあげていくそうだ。
ただ、もちろん、その極まった生地であるがゆえに、サンプル生地の設計段階から、どのような構築、構造にしたのかという生地設計を、本生産時に自分自身で再現できるようにメモをしたり、時には、自らビデオを固定して、動画として記録をするそうです。
そうして出来上がる、紛れもなく、世界で唯一の圧倒的クオリティのIsabella Stefanelliの手織り生地。
この驚愕の複雑さと奥行き、そして、オーラ。
実物で是非、腰を抜かせてくれ。
一枚衿がネックに付く、"Allen"。
Isabella Stefanelliでは、裏地も芯地も存在しないため、正真正銘一枚の生地だけでできた衿。
衿端には、生地の重なりがないため、縫い代がなく、衿の外周は、生地端をそのまま利用した仕様で、裁断部分は、手織り生地を構成する糸を縫い糸として、"手縫いロック処理"を施しています。
先述の通り、Isabella Stefanelliは、基本的に、生地そのものをそのまま使用するため、生地を横使いしてる。
フロント身頃の前合わせ部の生地端は、裁断をしているため、衿と同様に、生地を織り上げる糸と同じものでほつれないようにロック縫製。
"生地を織る糸で縫製をする"という工程は、僕自身はIsabella Stefanelli以外では見たことがないウルトラ仕様であり、超特殊。
"自分で生地を織るから、その糸を持っている"ということも物理的には必要な条件となるかな。
しかし、そうすることで手縫いの生地端の縫製箇所が、生地そのものに同化し、全然見えなくなるんですよ。
見た目では、まさに生地そのまま。笑
Isabella Stefanelli以外では、実現不可能なディテールであり、その上、見え方も非常に良く出来上がる手法でしょうね。
裾は、横使いされた生地の生地端がそのままやってくる。
"Allen"のコートの着丈の長さは、手織りの"生地幅"そのものの着丈の長さになると思ってください。
袖も身頃同様に、横使い。
袖口にも、生地の端がやってくる。
そして、No.6の生地は、袖口からアーカイブの裂き織りInsert生地が少しだけ噴き出してる。
これも、実物は、めちゃくちゃカッコいいの。
フロントには、合計3つのボタン。
Isabella Stefanelliで、焼いて焦がしているコロゾボタンです。
手縫いで縫い付けられる3つのボタンの焦げ方も、それぞれ違いますね。
また、このボタンを縫い付けるボタン付け糸も、生地を織り上げるのに使われる緯糸の複数色のネイビーのウール。
だから、ボタン付けでさえも、普通とは全っっっ然違う見た目に仕上がってる。
あり得ないくらいイケてる。
そして、それに伴いボタンホールも超特殊。
密度の甘い手織り生地の隙間を押し広げ、"隙間を広げてる"。
生地に切れ目を入れず、そのまま使う。
これが、"Isabella Stefanelliのボタンホール"。
ただし、広げた穴が塞がらないように、ボタン付けや生地端の縫製で仕様しているウール糸を使い、縫ってかがって穴を固定しているように思います。
"神ワザ"。
前身頃のウエスト位置に配置される"揉み玉"仕様のポケット。
Isabella Stefanelliのポケット口の形状は、多くの場合、この写真のように上部は緩やかにカーブ、下部は大きくカーブをしているのですが、これも意図的に考えたディテールのようです。
揉み玉の両玉縁仕様のポケットは、必ずこのようなラウンドをさせ、その形状でしっかりと固定してあるんですよ。
これは、ポケットを見なくても使えるようにするため、手や物の出し入れをすんなりと行えるようにするためかな。
あとは、ポケットにものを入れても、ポケット口の開きがほとんど変わらないという超絶仕様としても。
以前紹介したことがありますが、こう見えて、しっかり強靭につくられてるポケットです。
ポケット口の拡大の写真ですが、生地本体を構成している糸を、縫い糸として採用しているため、完璧に同化し、縫っている箇所が全く分かりません。
あとで、裏側の写真も掲載しますが、このように"生地そのものの糸で縫う"ことで、縫い糸が見えなくなるのですが、見ているとそれは、縫っているというよりも、ディテールをつくって、そのディテールを織って一体化させているようにまで感じます。
日頃はあまり使わないワードですが、"究極"の縫製仕様だと見るほどに思う。
後ろ。
"Allen"の設計は、クラシックにセンターベントがあるので、背中心に切り替えが存在。
先述の通り、通常では衿は、表地+芯地+表地というように3つのパーツで形づくられますが、Isabella Stefanelliでは、1枚の生地のみ。
しかしながら、それでもなお、着用時には衿が重力に負けてしまうことがないの。
特にね、後ろ衿は、もう凄い。信じられない程に、首に沿って立ち上がる。
着用時の姿、佇まいでIsabella Stefanelliのレベルが惜しげもなく体感できますよ。
そして、袖。
これは、前から見た右袖の写真。
こちらが後ろから見た右袖の写真です。
写真で分かりますでしょうか。
この"Allen"は、他のIsabella Stefanelliの洋服とは異なり、"二枚袖"の設計です。
これまで当店で取り扱いをしてきた洋服は、全て一枚の生地を筒状にした"一枚袖"のものでした。
通常は、一枚袖の設計の場合には、袖はストンと真っ直ぐ下に落ちるのですが、"Isabelle Stefanelliの一枚袖"設計は、その腕のカッティングのとり方で、驚くようなフォルムが形成される。
今回の"Allen"は、これまでのIsabella Stefanelliの袖のフォルムよりも、より太くなり、前にカーブが強くなっていることが特徴です。
しかしながら、それでもなお、"通常の二枚袖"の洋服とは、別次元の見え方で、アームホールは小さく、肘に向かって強く丸みがあるフォルムしてますよ。
あとで着てる写真を掲載するので、そちらを見てください。
写真ではご理解頂けるか分かりませんが、ハンガーの状態でも、前にグッとカーブし、ボリュームのある袖です。
これは、"Allen"ならではで、とても特徴がある。
そして、裏側。
Isabella Stefanelliの特有の超絶技法である、"全面フラット縫製"。
一切の裏地が付属せず、誰がどこをどう見ても、非常に整った裏側の様子。
しかも、"地縫い"という最初の接ぎ合わせは、"ミシンで"行ない、その後に、"全て手縫いでフラットに"していくという極限技法。
ミシンの強靭さ、手縫いの精緻さと自由さ。
2つのものを駆使して、強く、とても丈夫で、どこを見ても完全に整った洋服が完成してる。
この箇所も、生地と同じ糸を使って縫っているため、"縫っている糸"が見えません。
まるで、"血管"のように見える縫い代の膨らみだけ。
この手法は、ホント行ききってますよ。
どれだけ近くで見ても、どれが縫ってる糸なのか、まっっったく見えない。
さっきも言ったけど、これ、縫ってるというよりも、"織ってつなげてる"と言ったほうが良いかもしれませんね。もはや。生地と縫い糸が同じだから。
マジでやべー。
いくら慣れてるとは言えども、この首周りだけでも、どれだけ時間かかってるんだろっ。。。
肩の袖側の"イセ込み"分量も、手縫いで丁寧に処理されてる。
もうね、こう見てると、どっちが表でも、どっちが裏でも、世界どこ見ても、超一級品。
とてつもないクオリティで、レベルで、出来上がってる。
自分自身が設計し、織った手織りの生地でできたIsabella Stefanelliは、やっぱり格が違いますよ。
すごいものが世に生み出た。
そして、着用。
基本的には、グレー(経糸)とトーンの違うネイビー(緯糸)が面積の多くを占めるので、ベースはダーク。
そこに存在する、"Insert"の数々。
身長167cm、体重52kgで、袖を一回折って着用してますが、袖を折らなければ僕の場合は袖は長いです。
と、いうことは、僕のこれまでの体感では、非常に多くの方を受け入れるサイズバランスだと思いますよ。
身長は170cm後半くらいの方までオーケーかも。体格によりますが。
Isabella Stefanelliは、身幅の分量がありますからね、標準的な体型の方であれば、全員に"Isabella Stefanelliフォルム"をご体感頂けると思いますよ。
手織りならではの"揺らぎ"と、風によるゆらめき。
こう見ると、Virginia程には身幅の分量は感じませんが、こちらのほうが全体のボリュームはあると思います。
あと、二枚袖ならではですが、アームホールは大きめで、袖口に向かってシャープになっていく腕のフォルムです。
コートの造形も完全体。
手織りならではの太い糸で構成された生地の動きと、Isabella Stefanelli設計のパターン。
このマッチング、フォルムも、ムードも、超ウルトラレベルしてる。
Virginiaよりもボリュームのある二枚袖ですが、アームホールは小さく見えるように設計され、そこから柔らかく広がる袖。
これほどの洋服は、物理的にも、手にして頂ける方は、一人のみという非常に限られた世界ですが、とても良いものだと思いますよ。
Isabella Stefanelliのイザベラさんが、その人生の大半の時間を捧げたものづくり。
そして、今回から、それが一層の進化と深化をしてる。
見てみてもらえた方、手にして頂けた方には、必ず感じてもらえることがある。
それがIsabella Stefanelli。
是非、見てみてください。