今日は、Isabella Stefanelli (イザベラ・ステファネッリ)を紹介しますね。
まず、現在の時点で当店にあるラインナップは以下の通りです。
Isabella Stefanelli
Virginia
material _ LINEN,SILK,WOOL
size _ L
※完売致しました
Isabella Stefanelli
Gustave
material _ ORGANIC COTTON
size _ S
※完売致しました
Isabella Stefanelli
Oliver
material _ WOOL
size _ S
※完売致しました
Isabella Stefanelli
Oliver
material _ WOOL,COTTON,CASHMERE
size _ M
Isabella Stefanelli
Amedeo
material _ WOOL (HAND WOVEN)
size _ 4(M)
Isabella Stefanelli
Charles
material _ WOOL
size _ L
※完売致しました
その想像を絶するような洋服生産のプロセスを踏んだブランドであるため、非常に複雑極まりない洋服であるIsabella Stefanelli。
だからこそ、一気に紹介することは到底無理があると思う。
少しずつ順番に紹介していきますね。できれば。
今回はこちら。
Isabella Stefanelli
Virginia
material _ LINEN,SILK,WOOL
color _ DASH-GREY
size _ L
※完売致しました
すごいですよ。
この"Virginia"。
洋服ってどうしても秋冬向きの重厚な生地を全面に使っているものの方が、そのものの迫力って出るじゃないですか。普通に考えて。
ただ、これは物理的には重たい、重厚感のある生地を使っているのではない。
それにも関わらず、圧倒的な高級さ、迫力が溢れ出てる。
これは、ハンパないですから。
だから、そのことを少し紹介しますね。
まず、生地について。
この写真で伝わりますかね。。
イタリアのsolbiatiというところでつくったものだそう。
solbiatiの生地は、当店では現状だとIsabella Stefanelliの洋服くらいしか目にすることがないのですが、ドレス(テーラー)のジャンルでは、"リネンの至高"とまで言われるみたい。
ただ、リネン生地に特化したsolbiatiですが、今回紹介しているIsabella StefanelliのVirginiaでは、リネンだけではない。
リネン・シルク・ウールの3つの素材で出来上がってるもの。
質感としては、どちらかというと、リネンの存在感よりも、シルクと梳毛ウールとの存在をダイレクトに感じる生地に思う。
リネンって一般的に流通しているものだと、少し乾いたようなタッチや、芯のある硬さがあるじゃないですか。
でも、この生地は、そういうレベルのリネン繊維を使ってないんでしょうね。
はちゃめちゃに"とろけるような"生地してる。
最初は、僕はリネンが入ってるって全く思わなかったくらいです。
この写真は、少し生地を触って、動きを出したもの。
さっきも言ったけど、とろけるような驚き生地してる。
それほどまでの柔らかさと、滑らかさと、誰が見ても超高級というのを一発で察知できる生地の艶。
勘違いしないでね。これ、水の中じゃないですからね。笑
今回、曇りの日に屋内で写真撮ったんですが、左側を見るとなんかやたらと光ってるの。
分かりますか??
光りに当たった時に反射する光沢は、次元が違う。
そして、この生地は、それだけではなく、白い箇所がシルクだと思うのですが、経糸でも、緯糸でも使われてる。
その白いシルクの糸は、一本の糸の中で、"太さのムラを意図的に出してる"。
日本の生地で例えるならば、"絣(かすり)"のような見え方に近いようなイメージです。
圧倒的な高級さの中にある、古びたようなムード。
その"時間を超越した"かのような雰囲気を存分に醸し出してるの。
あと、この生地を初めて見た時には、生地の見た目から"平織り"だと思っていたのですが、どうも違いそう。
平織りを応用した"変わり織り"の組織をしてる。
Isabella Stefanelliでは、布帛の場合には、今回のように"織機"を使って織った生地と、"手織り"による生地との2種類が存在しますが、この度、紹介しているVirginiaは、"手織り"の洋服と比べても全っっっ然、遜色ないクオリティだと思いますよ。
実際に、店頭にお越し頂いてるお客様方には分かって頂けると思いますが、僕自身がこの生地をすごく好きで、自分で同じ生地の"Amedeo"をよく着てる。
だから、僕自身がまずこの生地にハンパなく惹かれてる。
非常に極まった生地ですよ。これ。
まあ、実物をご覧頂ければ、上記のことを全てご理解頂けると思います。
衿が付かず、丸いネックが特徴の"Virginia"。
1982年〜1941年まで生きたイギリスの女性小説家、"Virginia Wolf (ヴァージニア・ウルフ)"が"生きていた頃に着ていたのではないか"ということをイザベラさんが考え、デザインした洋服が"Virginia"というモデル。
Isabella Stefanelliというブランドを象徴するような洋服として認知している方もいるんじゃないかと思います。
ただ、前回、Isabella Stefanelliの洋服(Audreyというシャツ)をこのブログで紹介した時にも少し触れたのですが、同じ名前の付いた洋服でも、生地が違えば、"仕様が異なる"のがIsabella Stefanelli。
次にディテールを。
Isabella Stefanelliは、生地を出来る限り"そのまんま使用する"ということも一つの特徴です。
Virginiaは、"身頃も、袖も"。生地を横使いしてつくられる。
そのため、コートという着丈の長さがある洋服ですが、この着丈は、使用する生地の"横幅"で決まると思って頂けたらオーケーです。
また、上の写真にあるように、手を広げると、明らかに人間の上半身のフォルムとは、かけ離れた形状をしてる。
そして、そのVirginiaの形状は、、、
身頃は一枚の生地のみ
袖も左右一枚ずつの生地を筒にするのみ
ポケットや細部の構築を除いてですが、、、、
virginiaの洋服としての基本構築は、上記のように、"身頃一枚"・"袖が一枚ずつ"という、
たった"三枚の生地"だけで、超絶ウルトラ領域の洋服のフォルムが完成されるの。コートなのに。
これは、人間の技を超えてる。マジで。
これ、後ろから見た様子。
だから、さっき言ったように、身頃は一枚のみで構成されるから、後身頃に一切の切り替えがありません。
更に、なんと、なんと、驚愕の、、、
身頃脇にさえも、切り替え、ダーツなども皆無の状態。
つまり、正真正銘、フロントの前端から、グルリ一周、反対側の前端まで、一枚の生地のみで構成されてるということ。
そんなの信じられますか??
僕は、信じられません。
更に、、、
"肩線"
"アームホール"
"筒状に接ぎ合わせた袖"
Virginiaのフォルムを形づくるための、縫製箇所は、僅か、この箇所だけ。
その限られた箇所に、フツーの人間の技から離脱した、イザベラさんの極限複雑技法が注がれまくってる。
背中心に切り替えもない。
流れ落ちる一枚の身頃生地。
身頃脇にさえも、どこにも縫製箇所が存在しない。
でも、例えるならば、ブランケットなどを身に纏った時のようなアウトラインとは、全くの別物。
単なる"平面の布"を身に付けただけだと、曲線的な上半身に対して、フィットしないのはもちろん、生地の無駄な"浮き"や着用時の不安感が出るじゃないですか。
上の写真を見ると、着用時の、ウルトラクオリティの、アウトラインの、片鱗を、ハンガー状態でも既に感じさせる。
この秘密は、"非常に限られた縫製箇所の一つ"。
肩線に隠されてると僕は思う。
というか、後で着用してる写真は掲載しますが、じゃなきゃこのVirginiaのフォルムを生み出すのは、絶対に無理。
この肩線の"意味が確実に存在する"の。
もはや、ハンガーの状態で説明をするのには限界があるので、着ました。
"肩線"を見てください。
"肩線"は、続きに一枚の生地で形づくられた前身頃と後身頃とを繋げる、"唯一の縫製箇所"ではあるのですが、、、
"肩線の入る位置"
と
"肩線の入る角度"
が、世の中の他の洋服と全く違うの。
まず、首のすぐ横を見て頂くと、肩線のはじまる位置があるのですが、この位置は、洋服の一般論のスタート位置とは、まるで違います。
通常よりも"数cm、前に出てる"の。
そして、上の写真では、肩線の切り替え位置が"真っ直ぐ"になってると思います。
が、、、
僕の左手の角度を見て。
これ、むちゃくちゃキツい位置なのですが、斜め後ろのよく分からない方向に手を挙げてるの。
人間の日常生活では、絶対に向かない角度に手を挙げてる。
普通に、自然に手を挙げると、こうですからね。
分かりますかね??
肩線の切り替えは、一直線ではなくなり、Isabella Stefanelliのフォルムが少し現れてきた。
これと、、、
これ。
全然違うでしょ。
ご理解頂けますかね???
この写真も、左手を斜め後ろの角度に挙げてるのですが、そのまま前を向くと、前身頃も、横地の目の通りに真っ直ぐ落ちる。
が、しかし、
同じように左手を斜め後ろの角度に挙げても、"この位置しかない"と判断された、超絶的な角度で既に縫製をされているので、後ろはもうIsabella Stefanelliフォルムが隠し切れてない。
つまり、
洋服の常識ではない"位置"
と
洋服の常識ではない"角度"
で、一枚の生地を肩線の位置で裁断、縫製することによって、Isabella StefanelliのVirginiaの形が生み出されるわけです。
だから、仮にこのVirginiaの肩線の縫製を分解し、バラしたら、「嘘だろ」って思う生地端のカッティングをしてると思いますよ。
ただ、それって、誰かに教わったことではなく、45年に登る洋服づくりの中から研究し、導き出したもの。
しかも、この"肩線の構造"は、仮に、誰か別の人が真似をしても、絶対に同じレベルのものは出来上がらない。
Isabella Stefanelliの洋服は、世界で間違いなくイザベラさん本人にしかつくることは不可能。
この領域の洋服は、見れば見るほどに、"Isabella Stefanelliにしか存在しない凄み"をご体感頂けると思いますよ。
そして、袖。
この袖も、"ただの筒"ではない。もちろん。
ハンガー状態で"前"から見たもの。
ハンガー状態で"後ろ"から見たもの。
二つを見比べると、アームホールから袖側に向かって見た時に、前と後ろとでは、膨らみ方の分量が全然違うの。
前側はシャープに、後ろ側は強く丸みを持たせてる。
前方斜め上から見た、アームホール部分。
手前側が前身頃側、奥に向かって後身頃側になってる。
手前側の袖にはあまり感じないけど、奥側の袖には、ポコポコとした"イセ込み"による生地の集約が見られると思います。
このことは、実はチョー大事で、Virginiaを実際に着た時に、腰が抜けるようなウルトラフォルムを実現することに大きな役割を担ってるんですよ。
あとで着用写真を掲載するから、よく見てみて。
袖口。
冒頭にお伝えしたように、Virginiaは、生地を横使いしています。
だから、今日紹介しているこちらは、袖口には生地ミミがそのままやってきます。
あと、この袖口をご覧頂ければ、地の目の角度から、単純に横使いされているのではないことも察知して頂けると思います。
裾も同様に、生地ミミがそのまま配置。
こちらは、フロントの前合わせの箇所です。
左右の前端は、裁ち切り状態です。
ただ、丁寧に端の糸が抜き取られている仕様です。
同じVirginiaでも、生地が違うものであれば、前端が生地を構成している糸で縫われているものや、別糸で縫われているものなど、様々存在しますが、全ては洋服を生産する前段階で、イザベラさん本人が、"洋服のモデル"と"生地"との組み合わせの"最適"だと考える仕様を導き出し、その仕様で処理される。
だから、Isabella Stefanelliの洋服は、洋服そのものだけではなく、それを形成している"細部の仕様でさえも、一期一会"だと思ってもらえると良いと思いますよ。
そして、ウエスト位置に配置されるポケット。
これは、両玉縁ですが、両玉縁の玉縁の、細さがエゲツない"揉み玉"というもの。
この点に関しては、お父さんがテーラーさんだったこともあり、テーラーの英才教育を受けて育ったというイザベラさんの技術を分かりやすく感じられる仕様だと思います。
まあ、今の時代に、"揉み玉"なんて仕様を既製服に搭載してるブランドなんてほぼ存在しませんがね。
当店では、両玉縁を"南京玉縁"仕様にしてるAraki Yuu、"揉み玉"を必ず行ってるIsabella Stefanelliが特異な存在です。
糸の光沢を見る感じでは、多分、シルクの太い糸で手縫いで構成された"揉み玉"ポケット口。
ポケットでさえも、手のワザの美しさを感じられる。
そして、これ。裏側。
裏側も、限られた箇所に凄まじい仕様が搭載されてる。
まず、このネック。
表から見ると、単純に裁ち切りのネックに見えるけど、そうじゃない。
ネックの裏に本体と同じ生地が当てられているのが分かるでしょうか?
先述の通り、本体は、地の目が"横使い"。
ただ、ネック裏の見返しとなっている箇所は、生地ミミを裁断し、地の目を"縦使い"し、生地ミミの端が"2mm分だけ均等に表に現れる"ように、手縫いで縫いつけてあるの。
それにより、首周りがきちんと自立し、設計通りのネックバランスで見えるように処理されてる。
洋服づくりにおいて、一切の"芯地"を使わないという特殊な洋服づくりを行っているIsabella Stefanelli特有の仕様だと思います。
そして、"テーラーの最高技法"と言われる裏地なしという仕様は、こちらのVirginiaも。
芯地と裏地。
普通の洋服なら、必要となって当然使用される"副資材"を一切用いることがないのに、世界の指折りのクオリティの洋服を完成させるIsabella Stefanelli。
裏地を付けないという洋服特性であるがゆえに、裏側の縫製仕様は、カンペキなフラット縫製。
洋服の地縫いのみ、ミシンで行い、その縫い代は、全て限りなく平坦に仕上げるために、全て手縫い。
もう、おかしいですよ。この洋服づくり。
これだからこそ、一着を完成させるのに想像できない程の時間を費やすことになるけど、出来上がったものは、感動的なウルトラクオリティ。
Isabella Stefanelliの洋服は、着ることで着用者、所有者の方の、"モノの見方、捉え方、考え方、という価値観"にポジティブに作用してくれるものだと思ってる。
一着の洋服をつくることに果てしない時間と、精神が削れるような労力がかかるけど、今の世の中では、置き去りにされてしまったような、本当の"モノづくり"ということ、それに対する"責任"ということを、イザベラさん自身の生涯をかけて世の中に伝え続けてるブランドだと僕は思っています。
裏から見た肩線の縫製。
この写真は、右側が前身頃側の裏、左側が後身頃側の裏です。
こうね、写真で裏側を見ると、前後ともに、イセ込みは結構強いのですが、実物は後ろ側の方がやはりイセ込み分量は格段に多いと思う。
それにしても、めちゃくちゃ綺麗にイセ込み分量が手縫いで処理されてるでしょ。
アームホールのシームの重なりの箇所も、イザベラさんレベルになるとマジで神がかってる。
めちゃくちゃ均等に、フラットな裏の縫い代処理。
そして、裏のポケット。
こちらのVirginiaでは、ポケットは袋布タイプですが、ブランドの中にはポケットが一体型になってるタイプもありますね。
表と同様の糸が、裏の手の縫製でも使用されています。
ポケット袋布を構成している白い生地と、本体と同じ生地との縫製は、ミシンで地縫いされてる。
その後に、手縫いが施されています。
だから、リアルに使えるポケットとして、モノを安心して入れてもらえたらオーケー。
ポケット裏の上部を見ると、負荷のかかりやすいポケットを丈夫に仕上げるための構築を、仮止め、地縫い、縫い代抑えと、何度も縫ってるのが見てとれる。
このブログでは、一着のVirginiaのことを切り取って話をしてるけど、実物をご覧頂ければ、この洋服が"どれだけのものなのか"ということを分かって頂けると思います。
当店でも一番高額なブランドですが、それには確実に理由が存在する。
というか、理由しか存在しない。
4歳から洋服づくりを英才教育でテーラーだったお父さんに叩き込まれ、現在まで、45年以上の時間を洋服づくりに費やすIsabella Stefanelli。
文字で書くのは簡単だけど、それって自分がやろうと思ったら、もうそこまでやるのってほとんど不可能じゃないですか。
僕も洋服の業界に入ってまだ13年とかですけどね、Isabella Stefanelliの洋服を見てると、自分自身がとても奮い立たせられるんですよ。
全っっっ然まだまだだって。
僕は、"仕事=人生" みたいな感じだけど、そういう自分の考え方、大きくいうと、人生を変えてくれた数人のデザイナーがいるんですよ。
その内の一人がIsabella Stefanelliでもある。
今でも、当時のイギリスのアトリエでの洋服づくりを見せてもらい、その"向き合い方"を目の当たりにしたことは鮮烈に残ってる。
だからこそ、このブランドの洋服は伝え続けていかなくちゃな。って。
まあ、でも、それは、僕自身の気持ちの問題だけではなくて、実際に出来上がってる洋服のクオリティがそういうものだからですけどね。
これは、人生変わる。Isabella Stefanelli。
良い意味で。
着用。
今回紹介しているVirginiaは、大きいサイズで、Lです。
僕は、身長167cm、体重52kgだから、大きいですね。
身長は、170cm代の中盤〜180cm代の前半の方にかけて最適なサイズです。体格にもよりますが。
身幅の分量と手を広げた時の特異なフォルム。
肩をスタート地点にした、流れ落ちる超クオリティのsolbiati生地のドレープ。
この"抱きのドレープ"はIsabella Stefanelli、ハンパない。
横から見ても、肩をスタート地点に始まる、前後のドレープ。
そして、アームホールにもご注目ください。
写真では、分かりにくいんですが、
アームホールを見ると、袖の後身頃側に"イセ込み"が多かった理由を分かって頂けるんじゃないかと思います。
アームホールと袖とを比較すると、袖の方が太く見える。
これは、着用時にアームホールが小さく見え、着用者の"スタイルが良く見える"ということ、肘部分で袖のイセ込み分量が解放されることで、"袖の理想的なフォルム"を生み出してるの。
着ていない、ハンガーの状態で見るとこうですからね。
着用時には、驚愕のフォルムが生み出される。
これが広い世界の、トップクオリティ領域の凄み。
ちなみに、前から見ると、腕消える。笑
Virginiaは、フロントの"抱きドレープ"が非常に強いのが特徴の洋服でもあるから、このようなフォルムが演出されます。
このようなことを"非常に限られたディテールで生み出す"というのが、いかに凄まじいことであるか。
サイズは、お伝えしていたようにLサイズ。
Isabella Stefanelliの洋服の良さをご体感頂けましたら幸いです。
お好きな方は見てみて。