先日お知らせしました、GraphpaperとBODHIとのLIMITED STORE。
今日は、今回Graphpaperと特別に制作したものを紹介させてください。
前のブログでも少し触れたのですが、これまで昨年、一昨年とGraphpaperとの別注ピースを製作してきました。
そして、3度目となる今回はこれまでのものを超えることが絶対だったし、コレクション外での特別なものをつくるという意味に於いても、"その生み出す価値"が大いにあるものを。
とずっと考えていました。
当店ではGraphpaperを取り扱いをしてから数年が経つのですが、ブランドのコレクションラインナップもシーズン毎により磨きがかかっているように思います。
ただ、ブランドの中でも変わらず存在し続ける生地があるんですよ。
それは僕自身がGraphpaperのフルラインナップのコレクションを初めて見に行った展示会のときに一番最初に手に取り、心躍ったもの。
そのときの驚きや感動の感情は今でもすごく心に残っているし、この生地をつくることができるブランドの力を感じた。
その生地は、当然ながらGraphpaperのみしかつくることのできない、いわゆるオリジナル生地。
当時も、今も展開されている生地でもあります。
そもそも"オリジナルの生地"という言葉が販売の謳い文句のように簡単に使われるようなファッションマーケットだと思うけど、特段オリジナル生地が良いというわけでもないし、市場に流通している生地が悪いというわけでもないんですよ。
ただ、他では生み出すことのできない上質さやテクスチャーの個性を出したり、そのユニークさやクオリティをより一層追求するという意味では非常に意義のあることじゃないかと思います。
オリジナルの生地というものは。
それで、今回Graphpaperと当店CASANOVA&Co.の別注プロダクト。
Graphpaperを象徴する生地でありながら、超名作のオリジナル生地です。
既成のアイテムに対して、単に生地を変えたり、カラーリングを変えたりという分かりやすいことではなく、Graphpaperブランドの素晴らしさを改めて皆様にお伝えしたいということが一番でした。
だから、どうしてもこのブランドオリジナル生地を使いたかったんです。
Graphpaper Selvage Wool
今シーズンより名前が変わりましたが、以前ではコックパンツ、今シーズンよりシェフパンツに使われている生地です。
もしかしたらお持ちの方も、知ってる方も多くいるかもしれません。
ウール100%でありながら、世の中に存在するウール生地とは全然違う。
質感も見た目もGraphpaperらしさがとても込められ、ものすごくクオリティの高い生地だと思います。
原料は、世界でもウールの一大産地であるオーストラリアに生息するメリノ種の羊毛。
世界的に見てもウール繊維というのはこのメリノ種が大半を占めてる。
ただ、そのメリノウールの中でも段階ごとに分類されるのですが、Graphpaperが使用しているのはこの中で最高品質にランクされるもの。
デイリーユースできる耐久性は必要になってくるからカシミヤの繊度とまではいかないけど、とても細いウール繊維を使っています。
例えるのであれば、人間の髪の毛の大体4分の1の細さの繊維レベルですね。
とてつもなく細い。
そういう原料を使用すると、もともとの繊維が細いために肌への刺激が少なく、とても滑らかでしなやかな糸ができる。
そして、その繊維を使って糸に。
生地は完成までに多くの段階を経ますからね。
原料→糸→生地
超簡単に言うとこういうことなんですが、そこまでに数多くのステップが存在するんですよ。
そのステップでGraphpaperが目指す生地へと向かうためにいくつものハードルが存在し、職人が付きっきりとなってその技術が込められて完成します。
先ほどお話したようにすんごく細い原料の羊毛を使って、糸をつくる。
その糸は言ってしまえば、結果的にエゲつない細さレベルの糸になってるとかではないんだけど、そこは生地が完成したときの姿を狙ってそうしてる。
ただ、単純にこの生地ヤバいでしょ。みたいな着る以前の謳い文句ではなく、着用することを想定してつくられている。
着る人のリアルなことを考えてつくってる、とてもきちんとしてる生地なんですよね。
そして、その糸を使って生地を織り上げるときには、手織りに近い風合いの良さ、深みが生まれる古い織機で織り上げてる。
ときどき耳にすることがあるかもしれませんが、ションヘル織機ですね。
今ウールで、高品質かつ、趣を出して、素材のポテンシャルを最大限引き出すとなるとションヘル織機くらいじゃないですかね。
素材の質の良さも活きるし、ペラペラで軽薄ではなく、深みのある生地を生み出すことを想定したときにはこの旧式織機で織り上げることになるかな。
それで生地表面が斜めに見える、綾織りのこの生地ができます。
一旦ね。
ただ、これだけだったら少し素朴な印象の生地にどうしてもなってしまうんですよ。
これだけなら、ヴィンテージのウールウェアとそう変わらない生地感になりますかね。
Graphpaperが目指してるのは古いものを再現するというところではないんですよ。
ここからが非常に大事。
オフスケール加工。
いわゆるウールはチクチクするということで敬遠する方もいると思いますが、それは原毛が太いというのとスケールという原毛を覆う鱗状のものが原因なんですよね。
人間の髪の毛で言うとキューティクルみたいな。
本来であれば、そのチクチク感を軽減させるためにそのキューティクルのような鱗状のスケールを整えるんですが、それって一般的には粗悪なウールに使われるような加工なんですよ。
そのオフスケール加工をメリノ最高品質に注ぎ込む。
これにより、全然違う見た目に変わってくるんですよね。
このGraphpaperの生地。
ウール特有のウォーム感や着古したような毛羽立ちは取り払われ、色合いも漆黒のような吸い込まれそうな深みの境地へ辿り着ける。
この工程を踏むからこそ出来上がる生地。
ただね、これだけじゃない。
とても手間かけてる。
オフスケールして、もうこれ以上深みが出ないくらいの限界まで黒く染め上げた後に、まだヤってるんですよね。
具体的には言えないけど、染色後にまた大変なこと経てるんです。
「細い原毛を使って手織りに近い織機で織る。」
これだけだと、ただただ単純に年月を経た、古いものを好きな人が垂涎モノの質感ある生地になってしまうんですよ。
もちろん、それはそれで良いんだけど、Graphpaperはそこじゃない。
Graphpaperが、他の誰もがやっていない、Graphpaperだけがつくりあげることができるセルヴィッチウール生地。
手織りのような風合いある質感がベースでありながら、それに加わる、透き通るようなクリアなあの生地のテクスチャー。
滑らかで上質な素材のみが持つ光沢がありながら、独特の透明感と一見するとウールとは思えないあのタッチ。
僕も初めて聞いたんですけどね。
その加工。
含浸してるのよ。 含浸。
誰もが考え付かないような工程を何度も経て出来上がるGraphpaperオリジナル。
そちらについては、お好きな方には店頭でお話をさせて頂きますね。
洋服を紹介する人間として、この生地は既に知っている人にも、そうではない方にも、皆様に改めて見てもらいたいと心から思っています。
ギュッと強く撚られて糸が双糸使い。
見た目と肌当たりの心地良い生地だけど、長年の着用を想定された耐久性をもしっかりと兼ね備えてる。
そして、均整のとれた生地の交差する目と毛羽立ちのない美しい生地。
これが洋服となったときに誰が見ても高品質な姿になるんですよ。
ただね、この生地の細かなところを見てもらいたいと思って意気揚々とマイクロスコープしたんだけど、ウールの原毛の質の良さと、数段階の特殊加工によってマイクロスコープのライトが異常に反射しちゃうんですよね。この生地。
だからはっきり言って分かりにくいんだけど、洋服になったときの良さは期待していてください。
また後日、何つくったのか紹介しますね。