AUBETT × CASANOVA&CO


お知らせをしておりましたAUBETT、この18日(土)よりスタートしますが、昨日は、ブランドのコレクションのものを紹介しました。


お知らせをしていた通り、杉原さんが手がけるAUBETTは、今回がラストシーズンとなるのですが、最後に登場。



AUBETT × CASANOVA&CO



今回のものは、シャツです。


これから着ることができるのは、もちろんだし、生地の特性もあり、暑い夏場にも使ってもらえると思う。



これまでお知らせしていた通り、AUBETTのデザイナーとして、杉原さんが在店をしてくれるのは、最後になる。

ただ、このタイミングに合わせて、いわゆる”別注”をしようと考えていたわけではないんですよ。


昨日、お知らせした通り、コレクションで充分に良いものをつくってたから。




去年の夏のある日、AUBETTの展示会。



昨日、お知らせしたラインナップに加え、僕自身がこれまで見てきたAUBETTの洋服の中で、より際立って見えたシャツがあったんですよ。


あまりフツーの感じではないし、明らかにクセもある。


ただ、誰にでもって感じではないかもしれないけど、僕はすごく心惹かれ、そのシャツが忘れられなかった。


生地のテクスチャーや、立体裁断での構築、それでいて、ユニフォームレベルでいつも穿いてるAraki Yuuのニッカーボッカーズとのピカイチの相性。


その上、展示会は晴れた夏の日だったから、夏でも着ることができるかどうか、しばらく外で着て試してたんですよ。


そしたら、夏でもイケる。と。


だから、オーダーの時点でそれなりの数量をブランドに提出したんですよ。


でもね、そのコレクションサンプルを着て、鏡の前に立った時に、杉原さんがつくったディテールで、少しだけ、ほんの僅かに気になる箇所があったの。


それを、その時、直接伝えてたの。


しかしながら、それが気にならない程に、自分の中でそのシャツが気に入ってたから、さっきも言った通り、相応の数をオーダーした。



そこから月日が流れ、ある日、杉原さんから連絡が来たの。


そのシャツのディテールを僕の好きな仕様に変えよう。という旨の提案の連絡だった。



そこから、僕のハートに炎が燃え上がった。



だから、今回は、結果的に、もともとコレクションで存在したシャツのクオリティをより一層、ポジティブに変えることができたと思ってる。


しかも、杉原さんは、僕の好きなディテールを伝えてから、更なる磨きをかけるため、もう一度、立体裁断を行い、つくり直してくれたの。



そういうこともあり、当初から別注やエクスクルーシブというものを考えていたわけではないけど、当店として、お客様方に見て頂く上で、とても良いものができたと思っています。



僕も超絶お気に入り。



もちろん、この時期に発売する洋服なので、これからの季節には最適です。


夏場も、灼熱の太陽の下で活発に動き回らなかったら、モーマンタイ。



更には、この素材は特性上、なんと冬にはインナーにも適してる。

本当の意味での”通年素材”。あり得ないくらい超優秀。


しかもね、杉原さんと機屋さんのオリジナル規格の生地なんですが、この生地構造は、世界の繊維業界でピックアップされ、少し注目の的になってたりするみたいですよ。


それくらいのレベルの特殊生地。


まあ、ただ、形が変わってるから、インナー使いしてくれる人がどれだけいるか分からないけど。笑




それが、、、




これ。








AUBETT × CASANOVA&CO

LONG LENGTH SHIRTS

fabric _ コットン×サマーウール 縮絨サッカー

material _ WOOL 76%,COTTON 24%

color _ GREIGE

size _ 3,4,5


“立体裁断”が非常に駆使されたロングレングスのシャツ。


最近の春夏シーズンの僕のテーマ、


暑い時期に、”シャツのように着ることができるけど、フツーのシャツじゃない”


という単純明快なイメージをベストバランスで形にしてるの。これ。





まずは、生地。






平滑ではない、とても凹凸のある生地の表情。


これは、杉原さんが岐阜県の”三星毛糸”さんと、何年もかけて開発を続けてきたオリジナル生地。


三星さんは、杉原さんをはじめ、いろんなブランドのデザイナーから聞くのですが、僕はまだ行ったことない機屋さんですね。


機屋さんで直接行ったことあるのは、カネタさんと葛利さん、山栄さんだけだから。

今度行こうかな。



まあ、そんなことは置いておいて、、、



このオリジナル生地は、混率は、上記の通り、ウール76%とコットン24%です。


生地の組織は、写真を見ても全然分からない複雑さですが、”平織り”。


AUBETTをご存知の方は、知ってる人もいるかもしれませんが、この生地は、ここ数シーズン、杉原さんが追究してきたもの。


22年の秋冬シーズンも同じ混率のもので似てるものがあったんですよ。


でも、今回のは、また全然違うの。



22年秋冬シーズンの生地は、5色のカラーリングでつくったグレンチェックだった。



今回のものは、杉原さんが持つ、むちゃくちゃ細かい色見本から、1色のみで、糸の段階で染めた生地。


ただ、実際の生地は、”2色”に見える。


ウールとコットン、それぞれの素材特性により、同じ色に染めても同一にならないという作用を利用した生地。


そして、この生地は、柄に見えるところも、無地に見えるところも、全てが”柄の組織”になってるの。


これは、杉原さんと三星さんが目指した、これまでにない、”グレンチェックの応用”。



この生地の構想を始めたとき、杉原さんは、”自然界に存在する美しさ”を織り生地で表現したいと思ったそうです。


それは、オーストリッチや、リザードなど、過酷な環境で育つ動物が持つ、人間が美しいと感じる質感。


そのような凹凸を最も簡単に表現するのには、いろんな生地加工が存在する。


ただ、単純な生地加工だと、その表情がどうしても”機械的”に見えてしまう。


そうではないものを。


いろんな方法で考えたそうです。



そうして、閃いたのが、”グレンチェックの応用”だそう。



まあ、そんな応用、通常ではデザイナーが思い付かないと思いますけどね。



杉原さんは、生地についても超人的なプロだから。



グレンチェックという生地は、大きな格子柄の中に、糸づかいで”無数の線”を入れて、柄表現ができる組織。


“無数の線”を入れることができるからこそ、無限にも感じるようなバリエーションが存在する。


それを、何度も何度も、杉原さんが三星毛糸さんと話し合い、どこの”線”にコットンを入れるか、どこの”線”にウールを入れるか。


そして、その配置を交互にするのか、並べるのか。など、杉原さんが目指す生地でのベストな表現の試行錯誤を繰り返した。


その結果、導き出したのが、無地に見える箇所にも”柄組織”での配置、その上、生地に”縮絨”を行い、この素材特有の質感を最大に活かすということだった。







これ。


マイクロスコープ。


平織りなんだけど、全く見たことのない組織してるの。


浮き上がった部分もあり、もはやピントが合わない場所があるから。


ハンパない奥行き。


ただ、その結果、とても凹凸があり、肌から離れ、日本の気候には超絶ベストバランスな生地のタッチと、ここにしかない完全固有の見た目の生地が生み出されたの。








そうして出来上がったオリジナル生地。

それを使って、導き出してくれました。


このシャツ。







ディテールを紹介しますね。

コレクションサンプルとして存在したものも、衿つきだったのですが、このシャツに合わせて、杉原さんが衿の幅や、返りの位置などをもう一度、調整してくれた。






フロントネックの前下がりが少し強めのシャツなので、台衿の付かない一枚衿の仕様です。







フロントには、フラップ付きの少し深めのスクエアパッチポケット。


このポケットの形状は、僕の好きなように変えてもらった一つのポイントでもある。


コレクションのものは、フラップ付きだけど、パッチポケットの形状が違ったのと、両胸に付いてた。


このポケットについては、フラップを無くすことも考えたのですが、最初は、それでスッキリした見た目で、良いように感じても、使っていくと、ポケット口がパカッと開いて、浮いてしまう。


そのポケット口の開きを抑える意味合いでも、フラップは必要でした。


あと、フラップなしのパッチポケットが胸に配置されてると、例えば、バングルなどを付けてた場合に、ポケット口に引っ掛かってしまって、バングルに急激な負荷がかかって、変形するのを経験したことがあったんですよ。


いつも僕は、DAN TOMIMATSUのENLINKシリーズのバングルを付けてるんですけどね、手を上げ下げしてると、それが口の開いた胸のパッチポケットに引っ掛かることを何回か経験してた。


だから、こういう洋服の胸のパッチポケットには、ポケット口が開いてしまうことを防ぐフラップは必要なんですよ。


あと、コレクションサンプルでは、ポケットが両胸に付いていたんですが、両方あるとワーク感が少し強いように感じたの。

しかしながら、それを両方なくすと、着丈の長さから、レディースウェアのようなムードに寄ってしまうことが考えられた。


そういう意味で、視覚的にメリハリが付くことと、僕が好きな角が立ったスクエアの深い形状にすることがベストだった。


あと、タバコ吸うんですけどね、それをパンツポケットにあんまり入れたくないの。

パンツのウエスト周りのフォルムが崩れるから。

だから、薄着になる季節でも、上半身に収められる箇所が必要だった。







フラップの取り付け端が見えない仕様。

フラップ見返しも表地です。






パッチポケットの内側の折り返しは、裁ち切り状態ではなく、思いやりのあるオーバーロックで、生地端の処理をしてくれている仕様です。







フロントボタンも特殊。

これはサトウキビ原料のボタンです。

いつもならこういう洋服には、水牛ボタンを使うそうですが、この生地のテクスチャーには、マットで特有の色合いを持つ、サトウキビボタンがベスト。


このために温めていたボタンだそうです。








杉原さんの立体裁断での袖の造形が設計されてるから、平置きすると平面にならない。

ミステリアスな形状になってしまう袖。






袖のサイドビュー。

肩を頂点として、後ろ側に膨らみの頂点が設計された、三角形の袖のフォルム。

時折目にする、前振りの袖。とは全然違うの。


そして、サイドから見た時の袖の膨らみ、ボリュームが袖口で一気に集約される。


この袖のアウトライン。


かなりのシロモノですよ。


ボリュームがあるように見えるけど、途轍もなくシャープ。


この出来栄えは、現状では、当店の2023年春夏シーズンでは、No.1に君臨するアームだと思ってる。







そして、このカフス設計。

ステッチが入らず、長めのカフスに対して、袖口のボタンをここに配置したかったの。


これが今のところ、僕がベストだと思うカフスの形状です。


こうすることで、着用時に、手の甲に添ってカフスが広がってくれる。


人間の手の構造にフィットするし、僕が考える手元が最もエレガントに見えるスタイル。







ちなみに、袖そのものは、立体形状を維持し、カフス開きを自然につくるための二枚袖。






縫製仕様としては、全て本縫い。

基本的には、折り伏せ縫いですね。


先述のポケットの内側だけが、オーバーロックの仕様です。






身頃脇、折り伏せ。

裾、三つ折り本縫い。







CASANOVA&COの文字を入れてくれてる。







アームホールも同様です。

生地によっては、ここにはオーバーロックが入るシャツもあるけど、今回のこのシャツは、折り伏せです。

この仕様が、肩周りのフォルムを出すのにも力を貸してくれてる。













縫製の糸に関しては、上糸(表側)は、シャツでは珍しく、30番手という太めの糸。


この太さは、アウターに使われることが一般的ですね。


シャツでは、もう少し細い、50番手の縫製糸が使われることが通常です。


しかしながら、このロングシャツは、ディテールや設計がシャツ以外のものから踏襲してることが多いので、それに伴って、縫製糸もアウターに使われる糸でのステッチ。


これが、ちょー効果的。


見え方が、全然違ってくるから。







そして、、、








これ。

身長167cm、体重53kgでサイズ4を着てる。


通常、僕はAUBETTに限らず、多くの洋服は、サイズ展開の最小を着るのですが、これは真ん中サイズの4。


サイズ4の理由は、3のサイズよりも立体形状をふんだんに体感したいから。笑


だから、一応サイズ3も用意はしてるんですが、一着だけです。


これは、出来る限りタイトフィットが好きな方や、僕よりも小柄な方に向けて。


基本的には、サイズ4と5の2サイズだと思ってもらったら良いですね。







見て。

この造形美。


僕は、日本のブランドでこのようなフォルムを演出できるデザイナーは、杉原さん以外に知らない。


当店のラインナップだと、toogoodとIsabella Stafanelliがこれに近いというか、近い方向のフォルムを演出してるかな。


これは、日本人では、僕は杉原さん以外には、出会ったことがない。












これが新品の状態です。


ただね、新品は満足度レベルは超えてるけど、感動領域には達してないの。


ここじゃないの、理想は。



そもそも、この生地、20回、30回、それ以上と、洗って使い続けることを想定してる。


そうすれば、素材の良さ、生地のポテンシャルがどんどん引き出されてくる。


杉原さんは、実際に繰り返し、繰り返し、生地を洗い続けて実証してるから。


立体裁断もそのためのもの。


例えば、パターンではなく、アイロンワークで丸みを持たせる洋服づくりも、もちろん大切ではあるんだけど、それは洗うことで崩れてしまう。


対して、立体裁断を用いた、”パターンでの形成”であれば、洗い続けても、フォルムが変わってしまうことはない。



だから、手にしてもらえた方は、まず、一回洗って。


このシャツ。


そしたら、もの凄く点数がUPするから。


既に縮絨してるから、ウールが入ってても縮率は安定してるし、洗うことで、生地とフォルムがむちゃくちゃマッチングしてくれますよ。





ここからの写真が本番です。


シャツを舐めるように見て。





これ。

僕が一週間前に解禁したもの。

既に2回洗ってる。


“生地の奥行き”と”立体裁断の設計”が高次元でマッチングし、全てが”一体化”。


これが杉原さんのつくる洋服。













ウールとコットンの縮率差による、生地の表情が格段に向上してる。


そして、身体から離れた位置で生み出される、流れるアウトライン。


袖が身頃のドレープの内側に見事に入り込む。













そして、狙いのカフス。

手の甲に添って、柔らかく広がるアウトライン。


まあ、僕は手がむちゃくちゃ短いので、結構カフスで手が覆われてますけどね、僕以外の方は、もっと収まりが良くなる袖丈の設計です。
























バックヨークを起点に、後ろには、杉原さんの設計通りのドレープ。







フロントも、アームホールが身頃の内側に隠れる。

これこそ、単なるパーツではない、洋服の全てが一体化してる証。







手を動かすと、全てが一体化してるから背中や腰まで生地が一緒に動き、追従してくれる。







今から数ヶ月間は、長袖として。


それ以降は、袖を捲ってフロントを開けて、簡単に着るだけでオーケーです。


汗をかく時期には、洗濯を繰り返すことで、見た目の上でも、着用時でも、このシャツのクオリティをより一層体感してもらえるようになると思ってる。



洗濯による縮みですが、杉原さんがとってる縮率データでは、縦に1cmの縮みで、横はそれ以下。


僕も実際に2回洗ったものと、新品のものとを計測しましたが、全く同じ数値でした。



下記に記載するので、ご覧ください。


<新品サイズ4>

肩幅:52cm

身幅:68cm

袖丈:59.5cm

着丈:105cm


<2回洗濯後サイズ4>

肩幅:52cm

身幅:67.5cm

袖丈:58.5cm

着丈:104cm



以上の数値です。

だから、体感としては、洗っても、縮みを感じない方がほとんどだと思いますね。



そして、今回のシャツ。



プライスは、、、、









¥37,000-  (税込¥40,700-)。




杉原さん、とても良い価格で出してくれたと思う。


このような立体裁断が行った場合、技術も含め、時間を考えたら、通常とは、かけてるものが格段に違うし、生地のクオリティも申し分ない。


でもそれは、できる限り、手にしてもらえるハードルを下げ、”立体裁断”や、機屋さんの”技術”を知り、体感してもらいたい。という杉原さんの考えてることを表してる。


洋服としては、このクオリティで、このプライスは、他にないものができたと心から思っています。



ご検討頂けたら嬉しいです。




お知らせしていた通り、18日(土)より店頭で販売をしますね。




18日(土)は、杉原さんと一緒に、皆様のご来店をお待ちしてます。

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