今年最後のAraki Yuu part2


昨日は、今シーズン最後の納品があったAraki Yuuの4B jerkin jacketを紹介しましたが、今日も別のものを紹介します。


今日は、NEW STYLEのハーフコート的な立ち位置かな?というジャケットとワンサイズオールフィットのpyjama pants。








Araki Yuu

field jacket

material _ WOOL 90%,POLYESTER 10%

lining material _ COTTON 100%

sleeve lining material _ CUPRO 100%

button _ BLACK BRASS

size _ 0,1,2

※完売致しました


今年の秋冬では以前に紹介したニッカボッカーズとこのジャケットがブランドの中でも新たなスタイルの洋服となりますね。

前にも書いたけど、Araki Yuuにはコレクション的にどんどん新作を生み出すことは求めてないから特に新しい形の洋服がああだこうだってことはないんですが、そのNEW STYLEがさすがのレベルだったので、オーダーをして製作をしてもらってる。


そして、このfield jacketもそう。


ミリタリーエッセンスが入ってるのは誰が見ても瞬時に察してもらえると思うのでそれで良いのですが、その構築が素晴らしいですね。

とても良くできてる。


着た時のサイズバランスで言えば、4B jerkin jacketやmotorcycle jacketは体にフィットする感じがあるのですが、こちらはその2つに比べると少しだけルーズな着用感はあると思います。

ただ、まあ全然オーバーサイズとかじゃないんだけど。比較的ね。比較的。







全体的にはかなりおじさんしてるジャケットです。良い意味で。

衿は第一ボタンを開けても留めてもどちらでも成立する。

衿には押さえステッチもコバステッチも入らず、柔らかく立体的に浮かび上がるように見えますね。

衿の形状は写真ではなかなか伝わりづらいと思うのですが、最近あまり見たことのないようなカーブの強い、かなり古典的な衿型をしてますね。

これ好きな人ここだけでも充分にポイント高いと思う。






そして、構造的には台衿や月腰のない一枚衿仕様なのですが、一般的な一枚衿だと、着続けた後には後ろ衿がペタッと貧相に潰れてしまうけど、これはそうではないの。

生地の柄が強いから写真で全っっ然見えないけど、月腰という衿を支えるパーツを配置するような箇所に何本ものステッチがとても綺麗に平行に入れられています。

これにより後ろ姿もバッチリ。

バックスタイルは衿がしっかりと立っているように見え、首の後ろは高い位置に設定されているのですが、月腰のステッチが前方に行くにつれてなくなり、首下りもちゃんと抜けすぎない程度に深めだから、前から見ると硬すぎない柔らかい首元の印象が出てくれる。


まあ、要するにかなり良い感じの首元って思ってもらえたらそれで良いです。







モチーフがモチーフなので、フロント胸ポッケにはマチ付きのものが2つ備え付けられます。

僕はこのポケットも驚いた。

サンプル段階では全然気付かなかったけど、よくできてる。






昨日紹介した4B jerkin jacket同様にポケットには身頃裏と同じコットンの裏地がきちんと配置されてるのですが、





このフラップ、、






ポケットのフラップ端は補強の意味もあり表地が3つ折りで折り返されてるのですが、生地端以外は厚みが出過ぎないようにカットして端が処理されてる。


その生地端の処理が、見たことのないくらい細かいオーバーロックがかかってるの。





これやばい。

レディースの薄手のカットソーのロック処理かと思うくらい細かい。

これアウターですからね。

肉眼じゃはっきりと見えないくらい細かいからアレだけど、多分オーバーロックだと思うこれは。

まあ、正直どうでも良いことだと思うけど、自分にとってはこれは全くどうでも良くないの。


もちろん、フラップだけじゃなく、ポケット本体のポケット口の両端も手のカンヌキ入ります。


いや〜、これだけ服を見てきても、見たことないディテールや誰もできないレベルのことを目にして、服でこんなことできるんだって知れることはとても良いことですね。

どうせ服見たり、新たに手にするならそこら辺のものよりもこれだけしっかりつくって、誰も追従できないクラスのものの方が喜びがあると思うんですよ。

まあ、最初のスペックがどこまでイカついのかっていうことを伝えたいんじゃなくて、細かいところまでデザイナーが手をかけるから、物理的に長持ちする洋服になるし、結局そういう洋服の方が着ていてネガティブに気になるような不快感も一切ないし、ついつい安心して手にとれるワケですよ。


そういうことを目指して、考えて、時間をかけてつくってる洋服です。


Araki Yuuは。







ウエストにはマチ付きポケットではなく、大きな玉縁というか、箱ポケットというのかグッとカーブした容量の大きいポケットが備わります。






袖には、削り出しの真鍮に黒塗りされたボタンが2つ付き、袖口のストラップで調整が可能です。


でも、このストラップも単なるストラップのパーツを別でくっつけてるワケじゃないの。






二枚袖の片方の袖が袖口でそのままストラップとして延長されてる。

しかもこの形状は何て言うのか具体的な名前忘れたけど、直線的なパーツではなくカーブしたネクタイ型のようなパターンしてる。

Araki Yuuの洋服はとにかく曲線が多いのですが、一直線のストレートなディテールばかりで組み上げられてる洋服よりも、カーブして、ラウンドして、って曲線でつくられているものの方が美しいのは当然です。

しかもそれを左右対称に。

もちろん生産工程でのハードルはとても高くなるけど。


今では生地の取り分量とかも考えて真っ直ぐつくってるものが大半だけど、それはとても機械的に見えるし、量産品感を強く感じますからね。そういうものは。

もちろんそういう洋服もそれはそれで良いんだけど、Araki Yuuはそことは別世界の住人ですね。






袖裏ボタンにはレザーの力ボタンと今回もお任せしたキュプラ100のスリーブライニング。






コットン100の裏地が備わります。






着丈はお尻が余裕で隠れるくらいのハーフコートのような長さなので、深めのセンターフックベント。






黒塗り真鍮ボタンが備わり開閉可。

そして、このボタンを留めつけるコットンのパーツなんですが、これも感動した。

まあ、どう頑張っても写真に収まらなかったから実物見てもらえれば良いんですけど、この白いコットンパーツは四枚分の生地の重なりからできてるんですよ。

かなり頑丈。

その理由は動きの激しい腰位置に付くというのもあるけど、ボタンを留めて着用した時に表にボタンが干渉しないようにしてある。


これ、激ヤバ。

超人的な思いやり仕様。






4B jerkin jacketと同様の裏地の付け方。











身頃の見返しに挟んで処理された大きな内ポケが左右一つずつ。with レザー力ボタン。







全て削り出しの真鍮黒塗りボタンが付けられます。






そして、この生地。

この秋冬のAraki Yuuのスペシャルファブリックです。

混率は、先に記載の通り、ウール90%とポリエステル10%。

太い糸でギュッと織り上げられた生地は、表面はあたかも”鱗”のような立体感。


展示会時にはこの生地がどうなってるのかは全く解析できず、その表情に圧倒されたんですが、今回納品され、肉眼でじーっと見ても、マイクロスコープで見てもどうなってるのか分かんないのよ。


最近は生地のクオリティが高いブランドが多いので、こちらとしてもそこに対する理解力が必要になってきたから、その積み重ねで単糸、双糸、引き揃え、交織、二重織りなどは肉眼で分かるようになってきたし、更にはマイクロスコープがあれば理解できない生地は滅多になかったのですが、これは、、


生地組織が分かりません。


これ、良い意味で。


尾州の機屋さんで織り上げた生地で、その機屋さんはとてもクリエイティブでこれまでに多くのデザイナーとたくさんの傑作生地を残してきたところだそうですが、そこで糸から選定して織り上げた生地だそう。


生地のタッチは糸が太く膨らみと反発性がある分、ズシっとあるのですが、ウールは経糸と緯糸ともにセーターなどにも使う紡毛糸とポリエステルの芯が通ってる。

それに無染色のウールとブラックのウールを交織してるんですが、その糸がとてもとてもとても特殊。











これ。

ツルッと光沢があるのがポリエステルの糸。

毛羽立って見える黒と白の糸がウールです。


混率を見た時に、なんでこの生地にポリエステルが入ってるんだろうか。と不思議に思っていたのですが、これはこの生地の奥行きと風合いを出すために必要なことがよく分かりました。

無染色の白っぽく見えるウールの糸が捻られながら蛇行してる。

それをポリエステルでギュッと留めつけてる。

でも、織り組織でこんな組織はこれまで見たことがなかったから、解析不可能。


今回もまた知らないことが一つ増え、新たな発見ができました。


こんなクリエイティブな生地、見たことないし、しかもかなり強い質感の生地だからこれ他のブランドだとなかなか洋服にすることが難しいんじゃないかな。

この生地の強さに負けないくらいの仕上がりで洋服を構築できるブランドじゃないと服としてトータルバランスで負けちゃうと思う。


素晴らしい生地です。これ。


クラシックなメルトン生地のように真冬専用のヘビーアウターというくらいの生地の感じではないけど、これから冬場には充分に使ってもらえると思うし、ウールの反発性も高く、シワにもなりにくいし、とても目が詰まり、かなり丈夫な生地であるのは誰もが一瞬でご理解頂けると思います。

そして見た目が何よりかなり良い感じでおじさんしてるし、昔の町医者さんが休日に着てそうな感じ。








これもこの冬から連れ添っていくジャケットとしてご検討頂けたら嬉しいです。








Araki Yuu

pyjama pants

material _ WOOL 90%,POLYESTER 10%

lining material _ COTTON 100%

button _ BLACK BRASS

size _ ONE

※完売致しました


そして、こちらは同じ生地でのピジャマパンツ。


大きなウエスト分量がとても特徴的で思いっ切りドローコードで絞って穿くことで成立するワンサイズフィットオールのパンツです。






大きなウエストを絞るためのコード。

先端には真鍮パーツが備わります。






リネンヘリンボーンの生地が二重でコバステッチが入るコードです。

かなり丈夫だから何も考えずに絞ってくれたらオーケー。







サイドにはスラッシュポケット。







バックポケットはウエストを絞ること前提のスタイルということもあり、かなり変則的な位置に付きます。

これは着用時にはちょうど真横にくるような設定ですね。







ウエストには珍しい3つ穴の黒塗り真鍮ボタンがトップに配置され、2つ穴ボタンでのボタンフライです。












このボタンホールもハンドホール。







裏に配置される前立て見返し布は白いコットンです。

このコットンは着用時に表から覗かないように表地に対して僅かに1mmだけ内側に縫い付けられます。

これを”裏地を控える”と言いますが、前立てまで見事に丁寧な処理をしてる。






写真を見てもらえるとなんとなく察してもらえるかもしれませんが、かなりヒップも大きくブランドの中でも最もワイド。

スーパーワイドシルエットといっても充分なボリュームです。

かなりの迫力ですよ。






そして、そんな迫力あるアウトラインを描くパンツですが、内側も超絶丁寧な仕様に溢れてる。

先日紹介したニッカーボッカーズもそうだけど、裏地付きで膝も抜けにくいしめちゃくちゃ丈夫。






裏の縫製ピッチも半端ない。






厚みのある表地と別生地の裏地をまるで薄手のドレスシャツかのように縫ってのけるこのテクニック。

このレベルを工場生産で全ての洋服に均一に行おうと思うと不可能ですね。

Araki Yuuというブランドだからなし得ること。






身頃裏の裾や脇の処理もパイピング。






しっかりと長さのとられた裏地の裾は直接本体に縫い付けられていない、”振らし”の仕様ですが、必要分固定するために糸ループを編み取り付けられてる。


こんなことされてるワイドパンツ見たことないでしょ。






生地の強さ、裏の細かい箇所までの手の入れ方が一貫してるAraki Yuuのパンツ。

特にパンツというのは洋服の中で最も負荷のかかる種類のものでもあるから安心して下半身を授けられると思いますよ。


これから寒くなってきてもどんなアウターにも負けない力を持ってると思うからこういうの好きな方は見てみてください。




これでこの秋冬シーズンのAraki Yuuのラインナップは全て揃いましたので、完売してるものも多いけど、比較的充実してると思います。


このブランドのクオリティをご体感ください。

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