先日から開催しているGraphpaperのイベント。
今週末の土日までの開催ですので、是非見てみてください。
そして、別注の平織りウールシャツジャケットもより一層ストックがなくなり、遂に店頭に出しているものだけの在庫全出しになりましたので、そちらも見てみて。
今日は、この秋冬シーズンのものをブログで何度か紹介してきたAraki Yuuですが、こちらも今回で今年は最終章になりました。
この秋冬時期はこれで完納。
今回もバチバチのAraki Yuuクオリティでつくってくれてます。
4B Jerkin JacketとNEW TYPEのジャケット、そして、pyjama pantsの3つ。
全部書くといつも以上に長くなって誰も見てくれなくなる可能性が高いので、今日は4B jerkin jacketを。
Araki Yuu
4B jerkin jacket
color _ DARK CURLY HAIR
face material _ WOOL 87%,NYLON 13%
lining material _ COTTON 100%
sleeve lining material _ CUPRO 100%
button _ BLACK BRASS
size _ 0,1,2
※サイズ1,2は完売致しました
4B jerkin jacket。
このジャケットは当店には欠かせません。
決して大きなサイジングではないけど、非常に立体的で、サイズさえ合えばそのフィッティングは抜群。
洋服を構成するパーツがとにかくたくさんの曲線でつくられてる。
スタンドカラーで僅かに外側に振られた緩やかなカットアウェイフロント、ギュッと湾曲した胸の箱ポケットにウエストのパッチポケット。
年代を経たような見た目にも見えるし、きちんとジャケットしてるんだけど、そこに硬いムードはなく、アダルトな漢にはピッタリ。
柔らかく開くスタンドカラー。
身頃の切り替えによりシェイプの利いたウエストと、二枚袖によりカーブしたアーム。
僅かに前身頃の方が着丈が長め。
サイドネックからバックに流れる前身頃と後身頃の接ぎ線。
袖付けは、割り縫いによりフラットな肩。
肩と袖は、カバーオールのように身頃高でカジュアルな印象ではないし、かといって肩高でのドレス仕様にも振ってない。
この手のものは肩と袖がフラットなのがベストバランスだと思いますね。
あんまり意識しない部分だと思いますが、ここがどうなのかによって全然印象が違いますからね。
大事な箇所です。
身頃や腕の縫い代箇所など、洋服を構築するパーツの接ぎ目には表にステッチは露出しませんが、身頃端や裾、パッチポケットなど随所に生地端の押さえステッチは表に出てる。
ステッチを出すとこ出さないとこ、きちんと狙って設計されてるジャケットです。
全部の箇所に縫い糸が出るとカバーオールに寄ってしまうし、反対に全てステッチが表に出ないようにつくられると綺麗になり過ぎちゃいますからね。
こういうことは洋服にとっては非常に大切な部分だと思ってる。
4B jerkin jacketは、ブランドの顔の一つのジャケットだと思うんですけど、製品が完成するまでの道筋や完成したときの姿などとても考えられてる。
Araki Yuuがブランド初期からつくってるもので、当店でもお客様にこのジャケットを見てもらいたいと思う気持ちから継続的に取り扱いをしているけど、その精度は以前よりも格段に上がってると思います。
それは見た目だけじゃなくて、着心地という側面や、洋服をつくり、縫い上げる”洋装のテクニック”という面でもすごくブラッシュアップされてる。
これ凄い。
それはAraki Yuuが洋服づくりに向き合う姿勢が真正面から製品に反映されているから、完成品を見れば、何を考えてどのレベルで服づくりに向き合ってるのかが明確です。
隅々まで見て、これがAraki Yuuの洋服のクオリティだというのがビンビンに感じてもらえる。
だから、僕はそれを紹介したくていつもここに書いてるんですけどね。
まあ、デザイン的な見た目の部分は多少写真でもご判断いただけると思うし、フィッティングに関しては着てみてもらえれば、着心地に驚愕してもらえるので、それで充分なのですが、この4B jerkin jacket、僕が見てもらいたいのは裏。
身頃裏にはコットンの生地染めの裏地。
袖裏には袖通りの良いキュプラの裏地が配置されてます。
そこにAraki Yuuのテクニックが詰まってる。
まずこれ。
身頃裏。
裏地は、表地よりも体に直接的に当たる性質があるので、表地よりも動きに合わせたゆとり分量を持たせるのがセオリー。
だから皆様がお手持ちの裏付きのアウターなどを見ると裏地に余白があると思います。
でも、それは単なるごわつきになってしまってるものも見ることがある。
しかしながら、Araki Yuuのこの身頃裏。
センターには一直線に線のようなものが走ります。
これ、こうなってる。
裏地が折り込まれ、それを手まつり。
静止時には裏地はきちんとストレスなく収まり、動作に合わせて裏地のタック分量が開いて上半身の動きに追従する仕組み。
それが等間隔に入ります。
これはブランドでも最近のディテールなのですが、こうあることで静止してる時には収まり良く、動いた時の背中周りの見事な快適さが生まれます。
これが上からセンターベントまで入る。
更に驚きは、僕もよく4B jerkin jacketを着てるのですが、新品の時よりも着れば着るほど、着ていて快適になってくる。
よく洋服が”体に馴染む”というような表現をされることがあるのですが、そういう洋服はもはや現代では一部のみが持つものだと思う。
でも、これは古き良き、”洋服が体に一体化してくる”ことを誰もが体験してもらえる力を持ってるのよ。
特にこの4B jerkin jacketは体にフィットする洋服だから尚更かもしれないですけどね。
そういう付き合い方ができる洋服は選ぶべき価値があると思いますね。
全てのAraki Yuuの洋服はデザイナーがブランドでつくった何着目の洋服かという通し番号が入ります。
が、
それは見たら分かるとして、伝えたいのはシリアルナンバーじゃない。
これ。
南京玉縁(なんきんたまぶち)。
両玉縁仕様のポケットなのですが、注目はその玉縁の両端。
もはや今では消失してしまった職人技の洋装テクニックの一つなのですが、玉縁のパイピング状の生地端を内側に折り込んで処理してる。
こんな見えない箇所をデザイナー自らの手で一着ずつ施してるブランドは世界的に見てもほとんどない。
この箇所はコーディネートには一切関係ないし、着心地の良さにも直接的には関わらない仕様ですが、どれだけ丁寧につくってるのかが瞬時に認識できる。
今では玉縁のディテールもオートメーション化され、ボタン一つで玉縁がつくれるような文字通り機械的なミシンがあるそうで、結構そういう玉縁がつく洋服は多いそうですね。
そんな時代にあって2年前まではここまでではない玉縁ポケットをつくっていたAraki Yuuですが、より技術の向上を目指し取り組む中で実現した仕様です。
そんな南京玉縁が左右の胸に一つずつ配置されてる。
いつも袖裏の生地はお任せしているのですが、今回はこのキュプラ100%の裏地を配置してくれました。
きちんと角の立った額縁仕立てと、ボタンホールミシンを使わない、ハンドのボタンホール。
あとほとんど見えてないけど、袖先の裏地を押さえるための手まつりも健在。
バックもセンターフックベント。
額縁仕立てと手まつり。
フロントもハンドホール。
とても安心できる。
そして、裏地は身頃の裏だけではなくポケット裏にも備わります。
ポケットの脇から僅かに覗く裏地。
これが中の様子。
表地と裏地をきちんと中縫いすることで生地端がポケットの内部からも見えないようになってる。
よくあるじゃないですか。
ポケットの中に生地端が露出して、着てポケット使ってる内に生地端が解れ、糸がポケット内部にぶちまけられること。
これはそんな心配が一切ない、とても思いやりのある仕様ですね。
ちなみに負荷のかかりやすいポケット口の両端も手カンドメで丈夫に補強されてる。
でね、
今回のこの生地。
ヤバいのよ。
この4B jerkin jacketは僕の中で明確なテーマがあったんですよ。
それを実現するためにこの生地での生産をお願いした。
<テーマ>
“毛布に包まれているように、とても軽く・とても暖かい”
明確でしょ。
これはウールのループ状のブークレの糸を使った非常に柔らかく膨らみのある生地なんですよ。
昨年の同時期に、茶色いアルパカヘリンボーンのジャーキンジャケットをつくってもらって、店頭展開し、僕もそれを着てるんですが、あまりにも着ていて快適なの。
それがとても軽いし、暖かい。
ダウンだったらその恩恵は手に入るけど、そうじゃないのが良かった。
だから以前につくってもらったんですが、それを今年3名の方にもご体感頂きたいなと思った。
そう。
サイズ0,1,2の驚愕の各一のみの取り扱いなんですが、この生地ヤバい。
着て驚いて。
ハードル上げててもモーマンタイ。
生地の混率でいうとウール87%、ナイロン13%なんですが、このブークレウールを繋ぐためのナイロンかな。
保温するための空気をエゲツない程含むブークレの膨らみ。
でもね、それだけじゃないの。
この4B jerkin jacketはサンプルも存在しない当店のみの展開なのですが、実は自分の中でとても楽しみにしていたことが一つあった。
それが、
“どんな見た目になって出来上がってくるのか”。
理由は、ブランドで本来使ってる面はこっちじゃないから。
そう。
生地裏使いオーダーです。
もともと表面はグレーベースで全体的にウールのループが表に現れた暖かみのある見た目の生地なんですよ。
それもそれで良いな〜と思ったんだけど、もう一発グッと欲しかった。
で、生地を裏返してみたんですよ。不意に。展示会の時に。
そしたらね、、舞い降りてきた。
脳内に一気にホルモンがドバドバ噴射され、体中にバチバチに電気が走り、ビカンビカンに目の前が輝いた。
来た。
“閃いた”
“これだ”と。
表には均整の取れたループ状の生地。
でも、裏はとてもランダムに不均一でムラのあるブラックベースの色合いと謎の艶。
そして、奥行き。
その場でオーダーし、決定。
だから、一着の洋服として完成したときにどうなるのかがとても楽しみだったんですよ。
もう完成品は、激ヤバ。
100点満点の5億点を叩き出した。
ブラックの色合いの締まりもあり、でも古ぼけたシャネルツイードのようなエッセンスも孕んでいるような見た目。
それに本来は、表にくるはずのたくさんのウールのループたちは裏地にサンドされ内部に凄まじい量の空気を溜め込む。
いや〜我ながらniceな閃きしたと思いますよ。
こういったループ生地にネガティブに起こりがちなファンシーなムードもAraki Yuuが調理してくれることで一切なく、これにしかないバランスでできてると思いますよ。
何よりあったかいし。
見る箇所で全然違う生地の見た目してるから深い表情してますよ。
こういうのお好きな3名の方にたくさん着てもらえたら嬉しいです。
あとのジャケットとpyjama pantsは追って紹介しますね。