取り扱いをしているほとんどのブランドから秋冬の新シーズンが始まっていますが、Araki Yuuも紹介できるときが来ました。
まだ全部ではないんだけど、今日はトラウザーとスカーフを紹介させてください。
まず、これ。
紙の印字には、”special”と記載された文字。
そして、ワールドで1/6ピースという表記。
そう。
つまりは、当店CASANOVA&COのエクスクルーシブ。
総生産数、6着というトラウザー。
しかも、これまででAraki Yuuでは存在しなかった全く新しいスタイルなの。
サンプルの製作もコレクションの生産も全て自身の手で行うデザイナーだから、通常の他のブランドで毎シーズン当たり前のように存在する、いわゆる”新作のモデル”というものはほとんどないAraki Yuu。
まあ、僕もAraki Yuuには日頃から他のコレクションブランドのように”新作・新型”というものは全く求めてなくて、そのめちゃくちゃに洋服づくりに向き合う仕事から生まれる超絶クオリティで圧巻の洋服を求めてるワケ。
でも、今回のこのトラウザーは、なんと”新作の新型”。
更には、その構築が凄まじい。
かなり手を入れ、とても時間をかけないとつくることが不可能なレベル。
これは誰もができるレベルの洋服じゃないですよ。はっきり言って。
超複雑。
だから、当店で皆様にここまでやり切ってるAraki Yuuを見てもらいたいと思ってオーダーを瞬間決定。
その上、僕が見た途端に、目が釘付けになって、触ってると指先を離すことが困難で、心が一発で持っていかれ、鷲掴みされた「ある生地」が選択可能だった。
自分の心そのままに、ストレートに、それでつくってもらった。
実際には、サンプルさえも存在しない完全に当店の今ここにあるだけの素晴らしい6着のトラウザーができました。
まあ、実際には僕が1着穿いてるから、販売できるのは5着だけなんだけど。
それを半年以上前から楽しみにしていたから遂にその時がやってきましたね。
世の中のトレンド的なファッションにはこれっぽっちも迎合していないトラウザーです。
Araki Yuu
“NEW TROUSER”
CUSTOMIZED KNICKERBOCKERS
face material _ WOOL 100%
lining material _ COTTON 100%
button _ BRASS
color _ PURPLE GREY
size _ 0,1,2
※完売致しました
これ。
現代では、通称「ニッカポッカ」と呼ばれ、土木の仕事をされる方のユニフォームであるパンツあるじゃないですか。
あれの原型。
昔、洋服の歴史的変遷について研究されてる書籍を見たことがあるんですけど、その男性のトラウザーでとてもクラシックなスタイルに分類されるのが、”オールド・ブリーチズ”。
その中の歴史ある一種が、男性の短丈ズボンである”ニッカボッカーズ”。
テーラードカラーのクラシカルなジャケットの組下で、アクティブに高い動作性を持つ、紳士的な洋装スタイルの象徴として、一つの代表的な存在のトラウザーなんですよね。
超絶トラディショナル。
だから、今の洋服の風潮とは全然違うけど、いつかこういうスタイルを紹介したいなって何年も何年も頭の中にあって、それが時を経て、Araki Yuuで形にできた。
このトラウザー、特徴的なディテールは山ほどあるんだけど、その一つがこれ。
裾の仕様ですね。
伝統を重んじてる性質を持っているパンツな分、レングスは思いっきり短いけど、裾にいろんなことが集約されてる。
フロントに5つ入るインタック。
それもどれもが見事に均等に折りたたまれた見事な配置と処理。
それを抑えるための裾口の帯。
更には、Araki Yuu特有の真鍮パーツと共地のタブでアジャスタブル。
オリジナル真鍮パーツも全て一つずつ加工入ってる。
全部違うのよ見た目。
あと、あまりに書きすぎるとこれまで以上に文章が長くなり過ぎてしまうから、割愛するけど、この裾のそれぞれのパーツが適材適所でのステッチワークが繰り広げられてるんですよ。
ステッチが露出し、しっかりと生地端を抑える箇所と、中縫いで仕上げる箇所。
きちんと使い分けられてる。
これは実物見たらご理解いただけると思いますよ。
これが裾の後ろ側ですね。
バックスタイルもフツーのパンツよりもパーツが明らかに多い。
そして、”オールド・ニッカボッカーズ”特有の運動性能と丸みを生み出すためのボックスプリーツが一本入れられてる。
ウエスト周りも見事。
トップボタンは、三つ穴真鍮ボタン。
ボタンフライ部分は、二つ穴真鍮。
全てがAraki Yuu自身のハンドシェイプ。
驚愕のボタンホールも健在。
ボタンホールを瞬く間に開けてしまう、ホールミシンは使わずに、全てが”ハンドボタンホール”。
とても非効率ですが、丈夫さが格段に違うのよ。
ホールのかがりめが機械的ではないから、きちんとステッチの目を詰めて、生地をがっちりと掴めるから。
ホール裏を見たら手での縫製なのが一目で分かる。
生産にスピードが求められる現代で、頑なに100年以上前の洋服づくりを続けるブランドの一つの象徴だと思ってる。
ベルトループもAraki Yuu。
ベルトループをスピーディーに縫い上げるベルトループミシンはもちろん、専用のラッパという金型も使いません。
丁寧に生地を折りたたみ、本縫いで一本ずつステッチを叩く。
ベルトループ上部の処理もカンドメミシンは使わず、本縫いで何度も返す。
下部は、ウエスト帯に流し込み。
このカンドメを使わないというのもAraki Yuuの洋服の大きな特徴でもありますね。
カンドメミシンは、特殊ミシンというものに分類され、それ専用のものなんですが、もちろん補強の役割としてはとても機能する部分なんですよ、でも、Araki Yuuのアイデンティティーとは違うみたい。
一般的にカンドメは、48針くらい縫われるからどうしてもその箇所だけ強すぎるステッチが入ってしまうし、合理的量産のためのミシンであるのは確か。
であれば、Araki Yuuはそこを自らの手で小さく目立ちにくいながらも、しっかりと補強ができる手縫いのカンドメを入れる。
圧倒的に時間はかかるけど、それくらいの向き合い方をすることによって、Araki Yuuが世の中に生み出す洋服は完成されるワケ。
そんなこと誰もができないし、日本では大体無理。
でもやり続ける。
これがAraki Yuuの洋服だし、それだからこそ当店としてもAraki Yuuの洋服はとても愛を感じるし、皆様に紹介したいと思うんですよ。
これが裏。
このトラウザーは、総裏地です。
まあ、ヤバいレベルの総裏地仕様だけど。
裏地は全て通常はシャツで使われる品質のコットン100。
このトラウザーのコンセプトは、秋冬のシーンにこれ以上ないくらいヘビーユースできることが重要だったからフルでの裏地仕様です。
まあ、丈短いから足首寒いけど。
マーベルト処理もきっちりしてるし、動きに合わせて突っ張らないようにちゃんと裏地がゆとり分量を持たせて配置されてる。
サンプルも含めたAraki Yuuがブランドとしてつくった洋服の全ての通し番号も記載。
これ僕が穿いてるやつ。2577。
裏地も裾に5つのタックが入ります。驚愕。
表地がかなり丈夫なのは丈夫なんですが、それを更に格上げするために総裏地。
このトラウザー、孫に受け継げるよ。マジで。それくらいの丈夫さ。
まあ、総裏地ということでいくら穿き続けてもへこたれないし、膝も抜けぬくいから秋冬シーンにはとても恩恵があると思いますよ。
でも、今日とかも穿いてたし、外で作業もしてたんですが、これ穿いてても過剰に暑くなることはないんですよ。
それは表ウールで、裏がコットンだから呼吸してくれてるからですね。
ただ、真冬にはちゃんと保温してくれると思いますよ。
まあ、足首以外は。
このトラウザーの構築も衝撃的な構造なんだけど、僕がもう一つ絶対になくてはならなかったのが、この生地。
ウール100%。しかも平織り。
日頃から店頭にお越しいただける方には言ってるんですが、僕は平織りのウールがすごく好きなんですよ。
かなり良いこといっぱいあるから。
でも、これはちょっとレベル違うわ。
目付け500オーバー。
この数値見て、驚いてくれる方は結構服詳しいと思うけど、生地の一つの指標として、「目付け(めつけ)」という基準が存在するんですよ。
大まかにいうと1メートルあたり何グラムなのかという重さを表す数値です。
この数値=重さ が大きくなればなるほど、秋冬シーズンに適した生地になります。
数値が小さければ小さいほど、薄い生地になる。つまりは、春夏向きになる。
一般的に通年素材の目付けは、240とか250前後だったかな?忘れたけど。
秋冬シーズン向きの生地は、300近くくらいでしたかね。
コートは450以上と言われてる。
その上で、この生地は、500。
そう。コート穿いてる。
コートを穿く時代がやってきたということですね。
世界でたった5人の方にご体験頂きましょう。
「穿くコート。」
まあ、冗談は置いておいて、
この生地、単純に分厚いってことじゃないんですよ。
糸使いがぱねぇ。
製織してる機屋さんは、幸いにも僕は展示会で生地触って分かったからアレだけど、僕もとても好きな機屋さんの生地。
かなりのウールの使用量ですね。
それで目付け500を超えてる。
多量のウールをかなり強く撚ってる。
しかも、この独特の見た目。
“撚り杢”です。
先染めのそれぞれ色合いの異なる2本の糸を、撚り合わせ双糸に。
その双糸は既にコントラストの利いた特有の色になる。
その撚り杢双糸を、引き揃え。
ギッチギチに。
・撚り杢強撚双糸
・引き揃え
・平織り
・超高密度
これでこの生地が生み出されてる。
この機屋さん独特の生地の奥行きと、自然光を鈍く反射する糸使い。
でも、特有の枯れ始めた見た目。
Araki Yuuのオールドスタイルのトラウザーとの組み合わせ、かなり良いものできたと思ってる。
これサイズ0を穿いてる。
さすがにまだ暑かったからめちゃくちゃは穿いてないけど、ここから緩やかな体馴染みが始まると思うし、期待値がとても高い。
こういう生地使いで、このレベルの構築がされてるからエゲツない潜在能力を秘めに秘めてると思ってる。
本物に近づけてるからレングスは足首より大幅に上だけど、こういうオールドなムードを良しと捉えて頂ける方には良いと思いますよ。
Araki Yuu
Petit rhombus scarf
material _ SILK 100%
color _ BROWN HOUNDTOOTH CHECK
size _ ONE
※完売致しました
そして、これ。
春夏シーズンに初めて展開をしたシルクのスカーフ。
以前はどちらかというと春夏向けで薄手のシルクのものでしたが、今回は大きさも一回り大きくなり、生地タッチもシルクフランネルっぽい感じ。
左右で形状の異なるスカーフですね。
アンティークレースが配置。
このスカーフは、大きさと形状の違う2枚の生地で構成されていますね。
その接ぎ目にアンティークレース。
こういうこと。
生地は、絹紡糸かな?
毛羽立ちの少ない、肌あたりの優れたタッチです。
最初は、シルク100とは思えないかもしれないけど、徐々にそのポテンシャルを覗かせてくれると思いますよ。
まあ、初めて付けた瞬間から肌が嫌な感じしないと思うから、それがこの素材の証です。
カラートーンもクラシカルなものだし、つけるだけでそういうムードに連れてってくれるスーパーアイテム。
まあ、春夏はタオル代わりのイメージだったけど、これは喉を温めて風邪予防っていう感じで良いですよ。
で、結果的に紳士的な見た目に持っていけるっていうシロモノ。
洋服というよりもプラスアルファのものではあるけど、縫製も丁寧だし、両端の処理とかもかなり良くできてるから、ブランドのつくるものの良さを充分に感じてもらえると思います。
Araki Yuuのスカーフ。
そして、先日も少しお知らせしていたように明日、10月2日と3日は、瀬戸内市牛窓で、BPM83というイベントが開催されます。
CASANOVA&COは通常通り営業していますが、当店の大野が2日間そちらにいますので、みなさん行ってみて。
ロケーションも良いし、秋晴れの時にはすごく気持ちよく過ごせると思いますよ。
土日は、牛窓に行って、その後にCASANOVA&COがベストかも。