GraphpaperとBODHIとのLIMITED STOREを開催中ですが、amachi.のニット紹介させてください。
コレクション毎にとてもコンセプトが明確なのがamachi.の特徴ですが、このニットはCollection #007という今回のシーズンを特に表現してますね。
"Notion of Forms"=「形の概念」
っていうのがコレクションでamachi.が表現していることなんですが、そこまでに辿り着くまでのリサーチだったりとか考察が凄まじいんですよ。
amachi.の話を聞いてると。
で、今コレクションテーマ。
これは文脈を変えない方が良いからamachi.からもらったものを載せますね。
"樹木や木材が身の回りに存在しない環境が成立し得る、人類の歴史の中で見ても特殊と言える現代の都市空間が生まれるまでに我々はどのように樹木と関わり合いながら現在の文明を築いてきたのか、というリサーチから生まれたコレクション。
人工物の起源とも言えるストーンヘンジなど、最初期の人工物に多く見られる「円形」という形状の概念は、樹木の断面から見出したという研究があり、また、現代の都市に溢れる直線的な形状を組み合わせた構造物の起源は、樹木を割って角材を作ったことから始まっているという説がある。
樹木の素材としての側面はもちろんのこと、現在の都市の元となる形状の概念 = Notion of Forms そのものを樹木から学んできたのではないかという事が、非常に興味深く感じられ、その過程自体をコンセプトとしたシーズンです。 具体的には、最もプリミティブな樹木の形状、不均一な円形を製作過程や柄に反映したハンドニット Into the tree や Wood cut knit、樹木の断面をパターンワークで表現する Primitive forms shirts 、Cross grain jacket 材木として加工された樹木の質感や構造がインスピレーションとなった、Wax wood series、Wood flame knit など、その他にも様々な視点からコンセプトが服の構造やファブリックに落とし込まれています。"
amachi.
wood cut knit
material _ wool 97%,kidmohair 2%,silk 1%
size _ 5
price _ ¥140,000-(+tax)
名前の通り、木の断面をモチーフにしたニットです。
先ほどのコレクションイントロダクションにも登場していた"wood cut knit"です。
ブランドでもマシンニットはあるのですが、これはその生産効率から15着のみで展開される手編みのニット。
そもそも、ブランドへのオーダー時に希望数量を流すのですが、その全てが納品されるとは限らず、amachi.サイドで取り扱い店舗を決定し、15着を振り分けられるピース。
当店はそれを予め理解し、日頃から控えめな性格をモットーとしているので、最初から1着のみをオーダー。
そしたら、見事に1着のみつくってくれました。
原料で言えば、細く繊細なウール、キッドモヘア、シルクの3種類を混ぜ合わせ、それを非常に太い糸へと変換し、力強い編地をつくりあげています。
機械編みでは絶対に生み出されることのない、太い編み糸の性質上、組織がくっきりと目に見えるのが特徴的ですね。
グラウンドの部分はダークブラウンに対し、年輪の箇所は複数の色糸使いで、有機的なカラーリングを表してるのかな。
木のような、命あるもの、決して均一ではありませんからね。
そして、ご覧の通り、編みの分断された箇所もあり、木の亀裂を再現してる。
前身頃は年輪に沿うように編み組織も歪んだ楕円状に進められてます。
それに対して、後身頃とアームは横方向に編地が走り、背中とアームを包み込んでくれる。
でもね、このニット、というか編地。
想像の3倍くらいは硬い。
硬いというかハンドニットの糸の強さが凄まじいのよ。
強靭に撚りがかけられた毛糸。
通常、ニットセーターは、柔らかで、肌当たりが優しく、そこに豊かな保温性が兼ね備えられていることが望まれるじゃないですか。
このニットは全然その立ち位置じゃないの。
そういう、セーターが保有する柔らかさ、極上の肌触り、保温性を求める方は、現在開催中のBODHIやこれからやってくるMOTHER HAND artisan、The Inoue Bros.を見てくれたらオーケーです。
製作のベクトルはそこには微塵も向けられてないの。amachi.のは。
ただ、素材が素材だけにチクチクするとか、そういった低レベルな刺激の話じゃなくて、もっとハイレベルでハイセンスで身体全体に向けられた着用感。
これまで誰もが未到達の領域へ足を踏み入れることになると思いますよ。
この編地が身体に馴染んだように感じてくるのは暫くはかかるかな。
残念なのか嬉しいのか。
当分は所有したばかりの浮足立った気持ちで着てもらえるんじゃないかと思いますね。
それくらい、自立した編地です。
年月を経た上で、身体の熱、蒸気、動作、ニットの自重によって、貴方の上半身に靡いてくれるかな。
このwood cut knitのみが持ちえるハンドニットの境地を楽しんで。
裾もハンドリブ。
この手の重厚セーターは、よくアウターになるくらいの〜、、、みたいな表現とかされるけど、いくら硬く厚い編地と言えども、そういう着用に於ける機能ということとは違うかな。
これまでは当店では生地や縫製のクオリティがどうかという話でこのブログでは紹介をしてきましたし、どれだけ激しく途轍もなく、果てしないモノづくりがソレに込められたものでも、それは製品であって、作品という紹介はしてこなかったんですよ。
でも、これは限りなく作品という位置に近いと思いますね。
着ることも可能なアートピースっていうか。
amachi.が込めてるものもそこだと解釈してるし。
ただ、やはり着ることを大前提に考える性分だから、この見た目なら、「木」というモチーフに成り立つものだし、どことなくその素朴でカントリーな表情を楽しみながら、ただただ発せられる、洋服としては異常な雰囲気とのトゥーマッチをも感じ、ここにしかないニットそのものを所有する価値を存分に味わって。
まあ、こんなニット小手先じゃつくれないし、amachi.じゃないときっと生み出すことは不可能だし、所有していてとても満足感はあると思いますよ。
こういうものの性質上、とてもポジティブな意味合いで、すごく思考的に大きな偏りがある方に見てもらえることになるんじゃないかと思いますが、お好きな方は脳から離れられないようなものだと思う。
プライスがプライスだけど、着ると全てを察知してもらえる。筈。