今日は、amachi.を紹介させてもらいますね。
今回のコレクションは、Collection 011。
ブランドが始まって11回目のコレクション。
今回のコレクションは、"垂直性"というのが大きなキーワードになってる。
自然物を深く、深く、掘り下げ、追究するamachi.の吉本さんが日々、とても大切にしてるのが、自然と対峙すること、"フィールドワーク"。
その自然界を歩く行為は、これまでは"横方向"への移動ということで、コレクションに反映してきた。
ただ、幼少期、山岳地帯での生活を原体験に持つ吉本さんにとって、山に登ったり、下りたり、他にも、木に登るという "垂直方向の移動" ということは、身に染みついた行為だったそうです。
つまり、"縦の移動"ですね。 その"縦の移動"により、"高度"が変化することによって、気温も湿度も変わり、存在する自然物、現象も変化する。
今回のコレクションは、その"垂直性"による自然物や環境が変化する世界を表現してるの。
当店では、既にこれまでそのコレクションが満載に届いていたけど、今回紹介するのが、本コレクションの最後のもの。
最後にして、超ピース。
その二つを紹介しますね。
amachi
Twmpath Pants
material _ LINEN 60%,WOOL 21%,COTTON 15%,CASHMERE 4%
color _ BARK
size _ 5
まず、これ。
今回のコレクションで、パンツでは、最もウルトラスペシャルエディションだったもの。
その中で、最も"下"である地表。
その最下に存在する地表の"起伏"を表現した"Twmpath (トゥームス)"というシリーズが、コレクションであったの。
ジャケット、ベスト、パンツ。
3種類の中で、"圧倒的に、圧倒的"だったと感じたのが、
これ。 "Twmpath Pants"。
明らかに何か、おかしいじゃないですか。
このパンツ。
全然、フツーの見た目じゃないの。
amachi.の吉本さんが表現しているのは、自然界の地表の起伏。
人間がコントロールしていない、いや、しようとしてもその自然の力を制御することができていないような、"起伏のフォルム"。
それをパンツで表したもの。
まず、表地。
これは、今コレクションでamachi.がオリジナルでつくった生地ですね。
カラーリングは、amachi.特有のカラーである"BARK (樹皮)"。
上記の通り、4種類の素材を使い、4色の"先染め"の糸で織り上げた平織り。
糸の太さや見え方もそれぞれ全然違う。
リネン・コットン・ウール・カシミヤの4つの素材を組み合わせ、自然物のような奥行きのあるカラーと質感を目指してるオリジナル生地。
ただ、この生地は、"自然のテクスチャー"をきちんと表現するために、甘い打ち込みにしてるもの。
だから、最近はより一層、高密度系の生地を紹介し続けてきたんだけど、今回のamachi.のこれは、ガチガチの生地って感じではなくて、どちらかというと"自然のゆらぎ"のような雰囲気を感じてもらえると思う。
そして、それを使って、更なる"自然の起伏"を。
これ、中綿入り。見たら分かるかもしれないけど。
そうして、この見た目を出してる。
中綿ってシート状になって存在してて、吉本さんがいうには、流通してるものって通常のは、一番分厚いものでも、280gまでしかないそうなんですよ。
まあ、僕にはその数値がよく分かんないけど。
その最も重量のある中綿を一枚どころか、二枚使ってる。
すんごい分厚さですよ。
それで、この起伏を生み出してる。
しかし、その方法が、エゲツない。
このパンツは、"6層構造"で凹凸がつくられてる。
6層ですよ。 "6層"。
順番としては、表面から、、、
・表地
・不織布
・中綿
・中綿
・不織布
・裏地
という6枚の重なりで出来上がってるの。
しかも、よくあるダウンパンツとは、全然違う。
この膨らみ方も、大きさも、不均等。
それは、"自然界の起伏"を表現してるから。 更にね、、、 このTwmpath pants。
ランダムじゃないの。
中綿で盛り上がる形状や、大きさが全て狙ってあるの。
内蔵物の中綿までもが、"パターン"として設計されてる。
だから、総パーツ数が"60パーツ"を超えるほどの数。
スタンダードな構造のパンツならね、大体10~15パーツあれば余裕でできあがる。
でも、これはその比じゃないレベルのパーツ数。
こんな形だから、むちゃくちゃつくるの大変ですよ。
ベルトループにも、ウエストコードにも薄い中綿入り。
ウエストのコードについては、洋服用ではなくて、鞄の持ち手に使う用の芯材を入れてるみたい。
フロントは、ファスナーオープンで、6層構造の最下層である黒の裏地が全面に施されてる。
超絶的な起伏。
この起伏と起伏の間には、全てステッチが入ります。
そのステッチワークの入れ方もパターン通りに縫製される。
まあ、写真じゃ見えないけど。
裾は、スタンダードなパンツのように、表地を折り返してという処理ができないから、見返し処理がされてますね。
先述の通り、裏地付き。
全てが異なる形状の起伏をしてる。
シームと起伏はふんだんに存在するけど、通常のパンツに入るサイドシームは入りません。
まあ、入るスペースがありません。
バックももちろん全て違う起伏。
この一つ一つの形状もamachi.の吉本さんがとにかく考え抜いたもので、地表の起伏や自然物の造形、秩序を徹底的に自分自身に落とし込んで生まれたもの。
僕もこのフォルムのインスピレーションとなった一つのものをamachi.の吉本さんに見せてもらったんだけど、自然界ってホント、自分が知らない程の凄まじいものがたくさん存在するんですね。
人間の力でコントロールしても、自然が勝っているものが世の中には存在する。
まあ、このパンツは、やってることもすごいんですけど、これはただ単に自然界の様子を模倣してこうしてるんじゃないんですよ。
amachi.の吉本さんは、とにかく目の前の自然と時間をかけて向き合い、それをいろんな角度から研究し、追究して、洋服のフォルムに"完璧に落とし込んでる"。
これは、デザイナーの吉本さん自身の生まれもそうだし、体験してきたこと、目にしてきたこと、そして今もやってること、そうしたこと全部が集約されて生み出されてるもの。
だから、これはamachi.以外ではできない。
というか、やれないし、やったらダメだと思う。絶対に。
吉本さん以外がやると完全に"小手先の模倣"になっちゃう。
そうなるとそのものが持つ奥行きがペランペランの軽薄なものができちゃうから。
amachi.の吉本さんが自分自身の手を加えるシリーズということもあり、"HAND PROCESSED GARMENT"のタグが付属します。
ナンバーは、記念すべき"1234"という連番。
まあ、このパンツの持つ力は、これでしか体験できないのは100%そうなんだけど、これをとにかくデイリーユースするのがベストですよ。
スタイリングは、心配要らない。
穿くだけ。
超絶暖かい下半身をお約束しますね。
amachi.のコレクションでもリミテッドピースです。
そして、これ。
amachi.
287 meters,Those mountains [× Kurina Ninomiya]
material _ WOOL 81%,COTTON 18%,LINEN 1%
color _ BROWN
size _ 5
これ。 amachi.では、毎回のコレクションで、驚愕のハンドニットが存在するんですよ。 それが、ニットアーティスト"Kurina Ninomiya"さんが手編みで製作をするシリーズ。
僕もこれまでamachi.を取り扱ってきてから、ずっとKurinaさんが手編みをするニットのシリーズを取り扱いたいと思ってた。
ただ、まあ、プライスがプライスで、大体30万円〜みたいなイメージだから、数年間この時を待ってた。 そして、今回初めての取り扱いです。 このシリーズは、生産性の都合上、どうしてももの凄い限定数になっちゃうんですよ。 今回のこのニットも、リミテッドで、なんと"3着"のみという圧倒的な少なさだから、オーダーしても生産を受けてもらえないことだってある。
だから、今回は、とにかく懇願した。頼むから。 オーダーを受けてくれ。って。 オーダー時にも、熱いメッセージを吉本さんにも送った。つもり。 そうして晴れて当店に到着しました。
amachi.とKurina Ninomiyaの手編みのニット。
この手編みのニットは、"縦方向"に287mの移動をしたことを表現してる。 Kurina Ninomiyaさんが吉本さんのアトリエの近くに滞在し、その滞在場所から、近くの山を繰り返し、繰り返し、登り降りして生まれたデザインだそう。 滞在していた場所から、山の頂上までの高度差が287mであったことから、この名を付けたそうです。
このニットもまた、壮絶な度肝を抜く技術でつくられてる。 さっきも言ったけど、生産数が3着のみ。 その理由は、超明確。 ずっとニットを編み続けてる、日本で数少ない"ニットアーティスト"と言われるKurina Ninomiyaさんの手の技を使っても、編むだけで、、、 20日間かかる。 "20日"ですよ。 編むだけですよ。ヤバいくらいの時間かかってる。
ただね、見てるとその時間のかかり方、技術の注がれ方っていうのがすごく感じられる。 さっきのパンツの構造もamachi.の吉本さんにしかできないものだけど、このニットに関しては、吉本さんに加えて、Kurina Ninomiyaさんという人がもの凄く宿ってるっていうのが明らかに分かるの。
編み組織そのものは、ものすごく変形のものってわけじゃないけど、それを駆使した編み構造。 こんなの絶対に見たことない。
先ほどのパンツとは、違う構造での"自然界の起伏"をKurinaさんのテクニックで生み出してる。
ただ、これも、ランダムではない。 もちろん機械生産ではないから、その個体特有のものはあるけど、狙ってつくられてる。 きちんとサンプルが存在し、その上、サイズ展開が設けられたニット。
だから、そのサンプルのように、amachi.の設定する"5"というサイズ寸法になるように、一目一目を数えながら、編み進めていく。
ただ、これだけの糸の太さですからね。 一日編んでるだけでも根気はもちろん、相当な力を使うと思う。
写真のようにこのニットは、グラデーション状に色合いが変化してる。 ただ、色だけじゃない。
写真で分かりますかね? このニットは、下部分には強い縮絨が、真ん中には通常の縮絨。 そして、上には縮絨がかかっていないの。
これは、自然界では"高度"が変化することにより、気温や湿度、存在する自然物の"質感"が変わるというのは、先述の通り。 その"高度の変化"に伴う、"質感の変化"を表現してる。
ニットというのは、下から編み始める構造上、編み進める途中で縮絨をかける。 縮絨をかける工程を段階的に行うことで、一着の中で三段階のグラデーションをつくってる。
色合いとしては、Kurinaさんが何度も何度も目で見た、落ち葉の重なりや、濡れている箇所、乾いている箇所、土が露出している箇所を表現してる、地表のカラーリング。
このようにところどころに入る白い糸。 これは、雨水の水滴によって落ち葉が濡れ、そこに光が差して、反射している様子を表したもの。
ただ、信じられないような起伏。 中に何も入れてないんですよ。これ。 編み地の組織でこの起伏を生み出してる。
編み地が変幻自在に入り組み、そして形を形成する。 手編みで一つずつ目を編みながら、信じられないような編み地の変化を同時に生み出してる。
例えば、ここ。
このように指が通る隙間がある。 ただね、、、
この箇所の裏を見ると、穴が空いてるとかじゃない。
そして、ここにも指が通るスペースがある。
横から見るとこの感じ。 まあ、ワケ分かんないですよ。 この編み地。
ただ、分かるのは、手編みで編み進めながら、起伏を生み出すために、上下それぞれ離れた場所を同時に編んでつくってる。 それでいて、一定感覚浮かび上がらせたら、また元に戻す。 超激ヤバ。 それが夥しい数の箇所存在する。
裏も他のニットでは、絶対に目にしたことのない姿。 プライスは、かなりのもの。 ただ、このニットは、Kurina Ninomiyaさんがこれまでの人生で培ってきたもの、やってきたことの"経験と技術と時間"。
そして、編み始めるまでにかけた時間、実際に一着を編むことに使った20日間という時間と技術。 そういうことが全部含まれてるもの。 それが全てこのニットには宿ってる。 プライスは、まあ、かなり高額ではあるけど、このニットを実際に見て、洋服を一着をつくるまでの過程、そして着るだけではない、洋服から着用者の内面に作用するものを感じてもらいたいと思ってる。
今回のamachi.の洋服は、これを生み出すのに向き合ってきた時間、手の技が途轍もなく入ってるから。 そういうものを人生の時間で着て、過ごすということは、本当に素晴らしいことだと思ってる。
amachi.のコレクションの中でも、特に量産性や効率とはかけ離れた価値観から生まれているものです。 もちろん当店では一着だけの取り扱いだけど、見てみてください。