僕の人生の中で洋服に対する高揚感の感じ方が大きく変わったブランドが山内だった。
きっかけとなったのはCASANOVA&COに入社して初めて購入した山内のカーゴパンツ。
僕の中ではとてもとても特別な洋服となっているし、入社してから様々な洋服を着ていますが、ダントツの着用回数を誇っているのがそれ。
特別になる洋服。
山内の洋服の真価はそこにあると僕は思っています。
山内さんは”洋服を生み出す者(デザイナー)”の責任として、考え得ることを尽くし、使って下さる方々に素敵な洋服体験ができる様にしています。
大前提、すべてのデザイナーさんがそうであると思う。
ただ、山内さんの縫製のステッチや仕様・技法を見ると、あまりの真剣さを感じずにはいられないと思う。
また、着飾る意味もある洋服の世界では、かなり異質だと感じている。
「着飾る」が先行するのではなく、
「所有者に添い遂げる」が先で、後に「着飾る」がある様な服。
そう思うから、堅牢で使い勝手を考えたデザインがベースにあり、
そこから着飾るものへとさらに昇華させようとしているのがここ数シーズンの山内からより強く感じる。
とんでもなく堅牢で便利なものに、かっこよさと豊かさが加わる事になってきてる感じです。
これはかなりアツい。
縫製や設計、素材や使い心地など、色んな視点から一着を見た時にそのどれもが高いクオリティ。
濃密、濃厚なわけです。
そうやって、洋服に残されたデザイナーの意図や性格の痕跡をたどり洋服を着ることは楽しいと思えるし、
ひとつのものに向き合い自分の中で価値を決めることは自身の価値観を磨く事になると思ってます。
今回の洋服は、まさに山内の洋服の象徴と言えるもの。
申し遅れました、CASANOVA&COの中山です。
タイトルにも冒頭にもある通りですが、今回は山内です。
そして既にですが、今回のブログは長いです。
3ヶ月半ほど前に、Instagramの方で掲載した凄みが漂うあのジャケット。
あのジャケットにつきましてはとにかくお話ししたい事が山ほどあるのできっと長文になってしまいます。
ですので、ざっくりとお話ししたいことを目次のような感じで記載しておきますね。笑
・3wayと名の付く洋服の縫製について
・純日本製としてつくる日本の技術の粋のオンパレード
・日本人デザイナーとしての日本の洋服
ざっくりとこのような流れで行きます。
宜しくお願い致します。


山内
3wayシールドコットン・ジップジャケット
color _ brown×arimatsu brown
size _ 3
・3wayと名の付く洋服の縫製について
山内がつくる洋服は共通してそのつくり込みが故の凄みを宿していると思っております。
が、
が、ですよ。
この「3way」と名の付く洋服たちに関しては常軌を逸していると言っても過言じゃないと思う。
名前の通り、この洋服には3つの顔があります。

1.

2.

3.
1枚目がアウターとなるジャケット。
2枚目がインナーとなるジャケット。
3枚目がアウターとインナーをドッキングした状態のジャケット。
アウターとインナーがそれぞれ独立した洋服であり。
それぞれをドッキングすることも想定された洋服でもある。
お伝えしやすいように「アウター」と「インナー」と呼称していますが、それぞれがきちんと一枚で成立するクオリティであるということがミソ。
独立した2着を作り上げること。
かつ、
それぞれが狂いなくドッキングできること。
事細かに考え抜かれた山内さん洋服は、機屋さんの職人さん・縫製士さん・染色工場の職人さんの惜しみなく注がれた技術の粋の集合と言えるのですが、、、
そこに加えてドッキングができるという機能性が加わったものが3wayと名の付く洋服たち。
山内の洋服つくりの精神性を感じて頂くには十二分過ぎるほどに詰まっています。
ドッキング方法としては全てがボタンによるもの。
山内は量産とされる生産背景ではありますが、1着1着をお一人の縫製士さんが縫い上げる”丸縫い”というスタイルです。
所謂なスピード感のある作り方では山内さんが思う洋服は作ることができないため。
デザインの段階で、山内の山内さんは数ミリ単位、時にはコンマミリ単位で洋服のデザイン・仕様を考えられています。
その数ミリ/コンマミリを適えることができ無いとそもそも縫えず、
縫う人が箇所によって変わってしまうと手癖などの影響もありズレてしまう。
完成した洋服からはその数ミリ/コンマミリ単位の違いを認識することは難しいかもしれません。
ですが、そのような数値までも考え・作り込まれている事こそが山内の姿勢。
この点を踏まえた上で驚いたことが、、、


アウターとインナーの縫製士さんが別であったこと。
狂いなく縫製ができる方々だからこそできることです。
別の方が縫製した上でのドッキングの精度を考えると、いかに縫製士さんの技術力が高いのかが窺えてしまった。。

各シームに現れる縫製による”線”がくっきりと立つほどに美しい仕上がり。

縫製の精度は洋服の輪郭を狂いなく整えてくれます。
洋服の端部も際立ってます。

美しい。
目に写る全ての部分が見惚れてしまうほど。
山内の洋服の縫製を目で辿っていけばいくほどに、洋服においていかに縫製が重要な仕事なのかわかります。
・純日本製としてつくる日本の技術の粋のオンパレード
縫製について、その道の超プロフェッショナルな方と共に洋服つくりを行うことで形にする事ができている3wayの洋服。
さらに今回は、
アウターの表地、インナーに関しては表地も裏地も職人さんによる染色が施される。
つまり、
使用されるメインファブリックたち”全て”にさらなる職人技が宿っているということ。
しかも、全て国内での歴史ある染色によるもの。
さらにさらに、その染色が施されたベースの生地たちも極まっている。
もうこれは、情報パンク状態。
ですが、ある種の日本のものつくりの美しさを極めたものであると僕は思っています。
これぞ日本服です。
まずはアウターから。

商品の名前にも加わっているシールドコットンクロス。
ブランドの正式な名前は「超高密度シールドコットンクロス」。
自衛隊にも提供されていた平織りコットンの超高密度な耐水生地。
だから”シールド”コットン。
水に濡れるとコットンが膨張し水を通しにくくするという原理。
超高密度に織り上げられているからこその現象ですね。
ただでさえ、隙間という隙間が存在しないのに、濡れるとギチギチな糸同士が膨張し、もはや圧迫状態の様なイメージです。
だから、3wayにおいてのアウターの生地としては非常に優秀。
水に強いということは、雨はもちろん汚れにも強い。
汁物系が飛んできちゃってもサラッとふけば問題なし。
密度も高いからこそ防風性もありますからね。
そしてそして、ムラっぽい表情に仕上がっているのは染色によるもの。
ブランドではエンシェントダイと名付けられた新たな染色。
第二次世界大戦以前では主流とされていた古い染料を使用し行う染色らしく、現代の染料に比べて粒子が荒い事が特徴なのだそう。
染料の特性を生かすように、あえて荒々しく大胆な表情に仕上げてくれています。
しかも、我々CASANOVA&COが位置する岡山県の1社だけがつくられているそう。
時代を超えてなお受け継がれている魅力ある染色です。
その表情は、時間を重ねて生まれた岩石かのよう。

超高密度シールドコットン・クロス×超有機的エンシェントダイ
この組み合わせは凄まじい。
動くとパリっと音が出るほどの強いハリを持った生地の表情が染め上がりの表情とハマりすぎてる。
まるで、もともとそうであったかのように。
ハマりすぎてて、人工物とは思えない自然な表情とムードを漂わせます。
そのセンスにも脱帽ものなのですが、、、
超高密度シールドコットン・クロス×超有機的エンシェントダイ
先ほどのこの組み合わせ。
実現をするには、合理的とは程遠い工夫と忍耐と技術の結晶によってこの世に爆誕しています。
ネックとなるのがシールドコットンの生地特性。
“水に濡れるとコットンが膨張して水を弾く”
そして、染色は。
必ず水を使用する。
もはやホコタテ選手権。
通常の倍以上の時間をかけてゆっくりじっくりと染色工程を行うことでシールドコットンクロスに色を浸透させる。
もともとそうであったかのように感じる程、美しく丁寧なエンシェントダイは職人さんの熱意と根気と向き合い続けた姿勢による賜物。
まさしく、魂が込められたもの。
続いて、インナーの表地と裏地。

まずは表地の生地について。
表地は山内でも何度か登場しているヘンプネル(遠州産)。
当店では、昨年にシャツ型で取り扱いをしましたね。
夏の素材のイメージがありますが、山内は堅牢度が損なわれないギリギリまで起毛をかけたフランネル素材にさせ、冬のテキスタイルへしたもの。
ヘンプは強度の高い素材ということもあってか、フランネル特有のゆるさみたいなものを微塵も感じさせない表情。
堅牢度ギリギリといっても、生地も組織的にタフに織られているため慎重な気遣いは不要かと思います。
アップで見ても、起毛の奥にぎっちり並んだ組織が見えるんですよ。
表面は起毛していて、奥からヘンプの輝きが除く。
文字通りに奥行きのある生地。
究極的なファブリックを好む山内だからこそのパワーフランネルですね。
とても魅力的な表情と性能を持った生地です。
が、
その生地にさらに、
これまた美しさを感じてしまう染色を施してます。

太さや、濃度にムラがあり、ブラシでなぞられたかの様な格子を描くネイビーとカーキを合わせた様な色合いのチェック柄。
この柄を染色で出しています。
こちらは有松絞り。
山内のアトリエも位置する愛知県にて江戸時代から続く伝統染色の一つ、有松絞り。
工程の特性上、その瞬間でしか生まれることのない唯一の柄は、生きているような生命力のある表情。
ただ伝統的な染色を施した洋服、という事ではなく、
着用して馴染むための有松絞りを職人さんとともに考案し施されたものです。
洋服においてど定番とも言えるチェック柄では感じたことのない美しさがあります。
一枚着として申し分なさすぎるインナーのクオリティ。
普通にアウターのパワーピース面してますもんね。
アウターの表情がエンシェントダイで、脱いだらこれ。
何度も言う様で申し訳ないのですが、わかりやすいように「インナー」「アウター」と呼称しているだけでして、インナーだけでも着用も余裕で問題ないです。
と言いますか、真冬の手前まではインナーのみの着用が多そうですね。
さらに続きますよ。
お次は裏地。
裏地にもまた別の柄で染色が施されている。
驚異的。
目で見える部分には染色が施されているということになります。
1着の洋服ができるまでに、3種の染色を必要としていることが信じられないですが、
3wayだからこそ、ここまですることで1着の完成度は大いに、大いに変わる。
そこを惜しむことなく形とすること、形にできること。
やり抜かれています。山内してます。

使用されるは2plyキュプラ×コットンの生地(富士吉田産)。

経糸に双糸使いしたキュプラ、緯糸にコットンを打ち込んだテキスタイルです。
裏地としての滑りの良さはもちろん、山内の洋服のムードにあった堅牢さを感じさせるハリ感があります。
洋服の内側だけでも見応えがしっかりありますね。
そこに施されるは、先ほども登場した有松絞り。
2plyキュプラ×コットンの表情と非常にマッチした水面のような染色柄が施されています。
生地の光沢感も相まって、立体感を感じさせ目を奪われてしまう。
それでいて、どことなく落ち着く。
抜群のセンスをやはり感じてしまいます。
染色ならではの、作為的な部分と無作為な部分が入り混じったテキスタイル。
魅了されてやまないものだと思います。
・日本人デザイナーとして日本の洋服
ここまでで、縫製のプロフェッショナル、究極的なテキスタイルをつくる機屋さん、伝統技法を洋服仕様へと進化させる染め屋さん。
それぞれのプロたちの手にわたり、プロからプロへとバトンが渡され1着となる山内の洋服つくり。
そして、その全てが日本人の手によって行われていること。
今もなお技術を極めんとする日本の職人さんたちによるバトンによってできています。
そして、
そのような方達と何シーズンも共にコミュニケーションを取り、
時間をかけながらレベルアップを目指す山内さんのデザイナー像がそれぞれのプロの方達を繋ぐ鍵になっています。
日本人が作る洋服として、日本の洗練されたものつくりを生かした美しい洋服を作ること。
と、山内の山内さんは仰っています。
それが、日本の洋服つくりの現場を活性化させ、正しく発展していく未来になると考えられています。
その想いが一層に強く表れていると感じた3way シールドコットン・ジップジャケット。
日本人の洗練された技術・感性が目に見える全てに注ぎ込まれたもの。
日本の美しさをまとった洋服だからこそ、僕は日本産のラグジュアリーはこれだと思った。
日本だからこそできる、日本でしかできないラグジュアリー。
ただ、あまりのラグジュアリーさに着ることが憚られるなんてことは山内の洋服においてはありません。
超高頻度で山内の洋服を着ている僕が保証します。
これほどまでに洋服つくりにおいて信念を持って、手を動かし、形となる山内の洋服は意外にも大らかなキャパシティを持っています。
ここまでの話になると、山内の洋服はつくられる熱量に対してどこか緊張感がある様に思えるかもしれませんが、
着用してみると、とても親しみやすさを感じることが特徴です。
素直にさまざまな洋服に対して聞く耳を持ってくれている様な感覚です。
なので、最後に着用写真をいくつか。



インナーバージョン。

アウターバージョン。
アウターとインナーそれぞれに応じて着方を変えてみることも魅力です。



ドッキングバージョン。
ドッキングになるとしっかりヘビーアウターとしての佇まいに。
この大らかに合ってくれる感じも日本人らしいなと僕は思います。
洋服の話でも、和服という日本特有の服装があったところに洋服の文化を取り入れたり。
音楽でも、K-Popや洋楽、世界中のカルチャーを受け入れ浸透しています。
そういった日本としての気質の様なものでもあるのかなと。
何かの番組でマツコデラックスさんも仰っていた気がします。
日本人の美しさが形になり、日本の気質を感じさせる山内の洋服。
3way シールドコットン・ジップジャケットの他にもたくさんの山内をご覧頂ける店内となっております。
気にして頂ける方は是非。