こんにちは。
CASANOVA&COの野口です。
本日も昨日に続いて、今週末のこちらのイベントに関して。
FUKUBORI
ORDER EXHIBITION
2025.06.21 (SAT) >>> 2025.06.29 (SUN)
期間中はFUKUBORIの洋服のオーダーをお承りすると同時に、河原さんの”服ヲ掘ル”の活動によって蓄積されていった標本たちをズラッと展示いたします。
通常営業時のCASANOVA&COとは全く異なる空間になる予定なので、ぜひ楽しみにしていてください。
そして、今日はその”服ヲ掘ル”の活動について少し詳しくご紹介させてください。
河原さんによると、きっかけとなったのはLevi’s製の1960年代の3rdタイプのデニムジャケットだったそう。
おそらく世の中に流通しているデニムジャケットの中で最も参考にされている型であり、当時のヴィンテージのものでも同じLevi'sの1stや2ndタイプに比べれば手に届かない額ではない。
要は、目にする機会の多い、お馴染みの形である。
ただ、そんなお馴染みの1着も、観察する角度を変えた時には全く異なる側面が見えてきたそう。
1針1針を解いていくことによって初めて見ることができる、時間と想い。
技術的な側面以上に、当時の生産背景や経済状況、さらにはその個人の心情や精神状態に至るまで、全てがそこに残っているわけではないが、推察するに余りあるほどの魅力たちがそこにはあった。
そうして河原さんは”服ヲ掘ル”活動にのめり込んで行ったそうです。
ただ、当初は分解したものの写真すら撮らずに、自分自身の頭の中だけで得た気づきを管理していたとのこと。
ただ、それでは価値のあるヴィンテージの洋服を分解する行為がただの破壊活動になってしまう。
そこで、分解したものを展示し、そこから生まれる対話を元に、その洋服に込められた時間や想いを繋げていく活動として、”服ヲ掘ル”の展示を行うようになった。
現在、単独展としては4回の展示を行っておりますが、その来場者のほとんどがパタンナーをはじめとした洋服業界の方々。
かなり専門的な内容に踏み込んでいる活動なので、見る人にも知識が求められるのではないかと思われるかもしれませんが、全くもって大丈夫です。
理解してもらうことを求めているわけではなく、そこに集まった人々に対話が生まれて、かつての時代につくられた洋服をこれからの時間へと繋げていくことが目的。
洋服の形のままだったら確かに着ることができるかもしれないけど、分解しているからこそ見える部分を同じ体験として共有し、次に繋げていく。
そんな時間になってくれたらというのが、河原さんの願いであり、CASANOVA&COがその場所となってくれたらというのが、僕の願いです。
なので、イベント当日は、河原さんや僕たちスタッフはもちろんですが、お客様同士にコミュニケーションが生まれて、
「なんかここの形面白いよね」
「なんでこうなってるんだろう」
といった気づきや疑問に出会えることを楽しみにしています。
ここからは、河原さんのアトリエに伺った時に僕が体験した対話の話。
河原さんが徐に取り出した、某ブランドのヴィンテージのGジャン。
河原さんによると、とある箇所のステッチが本来縫うべき場所から落ちているとのこと。
実物を見ると、確かに落ちている。
ただ、その1着を見るだけでは、それが意図した仕様なのか、はたまた偶然下手くそな人が縫ってしまったエラー品なのかは分からない。
現代の洋服であればそのようなクオリティは一定水準で保たれていることが多いと思いますが、その当時はそこまでのクオリティコントロールがされていたとは思えない。
となれば、もしそれが意図的であったとしたらどんな意図があったのだろうか、という内容についてディスカッションが始まる。
型紙のからの知見、縫製のからの知見、さらには時代背景などなど。
最も納得のいく仮説に辿り着いた時には、その落ちているステッチの見え方が大きく変わっている。
僕自身もそのディスカッションに混ぜてもらって、洋服についてまた一つ学びを得られた満足感と以上に、この活動を世の中にきちんと提示しなければいけないと感じた。
とても大きく言えば、河原さんの活動は近代服飾産業を考古学的な目線で紐解く学問としてすでに成立していて、それが広まることによって現代の洋服の消費に伴う社会の意識に少なからず影響を与えることができると思った。
僕自身普段からそんな高尚な意識は1mmも持ち合わせていませんが、洋服を伝える店という立場として、全く新しいのにも関わらずすでに体系化された洋服の見方と伝え方に感動しないわけがない。
河原さんが分解するのは、特定の個人による作為的なデザインが込められていないものがベース。
つまり、デザイナーによってデザインされた洋服を分解することは、今のところない。
反対に、僕たちのようなセレクトショップが販売させていただいているものは、特定の個人=デザイナーによって、そのパーソナリティを存分に反映させた洋服がほとんど。
でもだからこそ自分たちのようなセレクトショップが、社会や時代がそのようにさせた”デザイン”に対して意識を向けるということはとても重要だと思う。
そのような洋服の見方を経験した上で、セレクトされた洋服たちを見ると、見えてくるものが大きく変わる。と思う。
まぁ、でも何より、本当に面白い。
皆さんにもそのような対話が生まれることをサポートすべく、のど飴でも買い込んでひたすら喋り続けれる準備をしておきますね。笑
ここではどのように展示するかなどはお伝えしませんが、期待してもらっていていいと思いますよ。
分解して河原さんが撮影した写真を頂いたので、少しだけ掲載しますね。
デニムジャケットのポケットのフラップ。
1針ずつ丁寧に解いて取り除かれた縫製糸。
中綿にだけ切れ込みの入るアーム。
メッシュ状の芯材。
これだけでは何を記録する写真かわからないかと思いますが、全て当時の創意工夫や生産背景などを読み解く上で重要な鍵となる部分。
分解することでしか得ることのできない情報だと思います。
僕の言語能力でここでテキスト化するには情報量が膨大すぎるので、ぜひ店頭でディスカッションしましょう。
販売員やお客様という垣根を超えて、皆様と様々な対話ができることを楽しみにしています。
そして、忘れてはいけないのが、FUKUBORI。
実物は明日ご紹介しますが、素晴らしいクオリティです。
原理主義的なパターンと縫製仕様に対して、生成りの生地で力強い縫製。
ただ美しい洋服というだけではない何かを感じていただけると思います。
こちらもぜひ楽しみにしていてください。
明日は、FUKUBORIの洋服に関してご紹介させていただきます。